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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
3章:沖縄ダンジョン編

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3章8節

毎日17:30投稿

普天間基地周辺は、異様な熱気に包まれていた。


平日の昼過ぎだというのに、道路脇には人が溢れている。

手書きのプラカード。

拡声器。

怒声と、訴えと、不安が混ざり合った声。


「ダンジョンを沖縄から出ていけ!」


「また犠牲者を増やす気か!」


「米軍は責任を取れ!」


基地正門から少し離れた場所で、ヤヒロたちは足を止めた。


「……やっぱり、すごいな」


ヤチヨが小さく呟く。


ダンジョン外――少なくとも見た目は、いつもの沖縄の街だ。

アスファルト。

商店。

信号機。

潮の匂い。


だが、人の感情だけが、異常に膨れ上がっている。


「ダンジョンができる前から、ずっとだ」


ツダが言った。


「基地があり、そこにダンジョンが発生した」

「それだけで、感情の矛先は一方向に先鋭化する」


「……正しいかどうかは、別としてね」


ヤチヨは腕を組んだ。


ユイは、視線を市民団体に向けたまま、何も言わない。


「入るぞ」


ツダが促した。


基地内部、管理区域の一角。

そこに設置された転移ゲートは、仮設の囲いで覆われ、周囲には米軍とギルドの職員が配置されている。


市民団体の視線が、痛いほど突き刺さる。


「……見られてるな」


「見られるさ」


ツダは、いつも通りの調子だった。


「だが、ここから先は――」


ゲートの揺らめきを見つめる。


「沖縄じゃない」


転移。


一瞬の浮遊感。


そして――


視界が切り替わった。




軽く低層を抜け、四人は中層へとたどり着いた。


湿気を含んだ、重い空気。

鼻を突く、土と腐葉土の匂い。


ヤヒロは、思わず息を止める。


「……別世界だな」


そこは、沖縄の市街地を模したダンジョン内部だった。


建物の形は、確かに街だ。

だが、壁という壁を蔦が覆い、道路は割れ、巨大な熱帯植物が無秩序に伸びている。


天井はない。

空の代わりに、分厚い樹冠が視界を塞いでいる。


「中層特有の再構成環境だ」


ツダが説明する。


「外の沖縄とは無関係」


「ここは“沖縄という情報”を元に作られたダンジョンの内部だ」


「紛らわしいわね」


ヤチヨが苦笑する。


「外が無事なのが、せめてもの救いか」


ユイは、すでに弓を構えている。


ヤヒロも、盾を前に出した。


(……視界が悪い)


富士の中層とは、また違う。

こちらは、濃い緑に隠される。


そのとき。


――ズズズ……。


足元から、嫌な振動。


「来る」


ヤヒロの声は低かった。


地面が盛り上がり、アスファルト片と土を撒き散らして、巨大な何かが姿を現す。


全長十数メートルの、巨大ワーム。


「想定通りだな」


ツダが冷静に言う。


「沖縄中層の主力。地中型。奇襲前提だ」


「上等!」


ヤチヨが踏み出す。


だが――その前に。


ヤヒロが、前に出た。


盾を構え、重心を落とす。


ワームが体を振り上げ、地面に叩きつける。


――ドンッ!!


衝撃。


「……っ!」


ヤヒロは、真正面で受けた。


衝撃反転。


盾が衝撃を吸い、逃がし、地面へと返す。


ノックバック耐性が上がったおかげで、以前のような硬直はない。


(……まだ、いける)


クールタイムも、短い。


すぐに次に備えられる。


「ユイ!」


「……了解」


矢が放たれる。

狙いは、外皮の継ぎ目。


「ヤチヨ、横!」


「言われなくても!」


曲剣が、ワームの側面を削る。


ワームが怒り、地面へ潜る。


「来るぞ!」


ツダの警告。


ヤヒロは、盾の角度を変えた。


(全部、受けない)


地面からの突き上げ。


真正面ではなく、流す。


衝撃を逸らし、体勢を崩させる。


「今!」


ユイの連射。


同一点。


そして――


ツダの槌が、打ち込まれた。


鈍く、確実な一撃。


巨大ワームは痙攣し、光の粒子となって消えていく。


残されたドロップ。


「……悪くない」


ヤチヨが言った。


「初戦にしては、かなり上出来」


「盾の挙動も問題ない」


ツダが評価する。


「沖縄中層向けだな」


ヤヒロは、盾を見下ろした。


外は、普通の沖縄。

だが、ここは違う。


――ここは、戦場だ。


四人は、表情は明るく、しかし無言のまま、次のエリアへと歩き出した。



いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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