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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
3章:沖縄ダンジョン編

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3章7節

毎日17:30投稿

沖縄の朝は早い。


夜が完全に明けきる前から、湿り気を帯びた空気がセーフハウスの中にまで入り込んでくる。

ヤヒロは簡易ベッドの端に腰掛け、盾を膝の上に置いたまま、何もせずに時間を過ごしていた。


――眠れなかったわけじゃない。

ただ、目を閉じると、考えが止まらなかった。


遠くで、車の音。

それから、玄関の電子ロックが解除される音。


「……来たな」


ヤチヨが呟いた、その直後だった。


「おはよう。戻ったぞ」


ツダの声は、いつも通り落ち着いている。

だが、その声音の奥に、わずかな昂りが混じっているのを、ヤヒロは聞き逃さなかった。


ツダは一晩中、現場を回っていたはずだ。

それでも、疲労を前に出すことはない。


「……無事で何より」


ユイが言う。


「怪我は?」


「ない」

「現場は……まあ、想像通りだった」


ツダは椅子に腰を下ろし、モノクルを外して布で拭きながら話し始める。


「浦添の事件現場。奪われた装備はレア相当。エピックも混じってる」

「殺し方は、効率的で、衝動的だ」


ヤヒロは、自然と背筋を伸ばしていた。


「争った痕跡は少ない。抵抗した形跡もない」

「……つまり、相手は『魅せられていた』」


ユイが、指先を強く握る。


「もう……影響が?」


「断定はできない」


ツダは即座に否定した。


「だが、武器を手にした瞬間に判断力を失った可能性は高い」

「奪うこと自体が目的になっている」


モノクル越しに、ツダの目が細くなる。


「非常に興味深い」


その言葉に、ヤチヨが鋭く視線を投げた。


「……楽しそうに言うじゃない」


「誤解するな」


ツダは肩をすくめる。


「これは学術的な――」


「そういうとこよ」


ヤチヨは鼻で笑った。


ツダは一瞬だけ口を閉じ、それから話題を切り替える。


「ともかく、状況は悪い」

「所有者は短期間で変わり続けている」

「このまま放置すれば、被害は指数関数的に増えるだろう」


ヤヒロは、静かに頷いた。


「……俺たちが、確保するしかない」


「ああ」


ツダは肯定する。


「そのためにも、戦力の底上げは必要だ」


そこで、ようやく――

ツダは、足元に置いていた細長いケースに手を伸ばした。


「報告は以上だが」


ケースを軽く叩く。


「ついでの話がある」


ヤチヨが眉を上げる。


「その言い方、信用ならないんだけど」


「安心しろ。合法だ」


ツダは淡々と言いながら、ケースを開けた。


中に収まっていたのは、見覚えのある――いや、ありふれた装備パーツだった。


「ギルドの資材部から頂戴した。正規品だ」


「……地味ですね」


ユイが正直に言う。


「地味でいい」


ツダは即答した。


「地味だからこそ、組み込める」


ヤヒロは、盾を見下ろした。


「特性は?」


「二つ」


ツダは、指を折る。


「《クールダウン短縮》と《ノックバック耐性上昇》」


一瞬、沈黙。


そして、ヤヒロが、ゆっくりと息を吐いた。


「……衝撃反転を、続けて使えるようになる」


「そうだ」


ツダは頷く。


「一発の威力を伸ばす強化じゃない。回数を増やす」


ヤチヨが、ニヤリと笑ってヤヒロを見る。


「盾さんが……ずっと前に出られる」


「正確には」


ツダは言い直す。


「前に居続けられる」


ユイも、クスリと笑った。


「……いい。ヤヒロ向き」


ヤヒロは、静かにケースの中身を手に取った。


「……食わせます」


「ああ」


ツダは、それを見届ける。


使い捨てる盾が、キンという静かな音とともに特性を飲み込む。

盾の表面に、微細な揺らぎが走り、すぐに落ち着いた。


ヤヒロは、盾を構えた。


確かに感じる。

重心が、以前よりも安定している。


「……たくさん、打てますね」


呟くような声。


「その通りだ」


ツダは満足そうに頷いた。


「上層で、生き残る盾になった」


「そしてこれからは人を守る盾になる必要がある」


誰も、それ以上は言わなかった。


だが、全員が理解していた。


――この強化は、ただの準備ではない。

――これから来る“対人”を、見据えたものだ。


朝の光が、セーフハウスの窓から差し込む。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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