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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
2章:富士山ダンジョン編

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2章34節

毎日17:30投稿

ヴォルカニクスが、再び咆哮した。怒っていた。


それは単純な激情ではない。

自分が――押されていることへの、理解に近い感情だった。


逆鱗が、鈍く鳴る。

共鳴が、不完全な波として周囲へ漏れ出す。


「……来るぞ」


ツダが言った。


「全体攻撃じゃねえ。たぶん――切り替えてくる」


その瞬間だった。


竜の胸部、赤黒い鱗の隙間が、強く光る。


逆鱗ではない。

もっと内側――炉心。


「……溶岩、直噴射」


ヤチヨが舌打ちする。


「盾役殺しだな」


地面が、割れた。


噴き上がる、熱流。


火炎ではない。

粘度を持った、流体の熱。


防げば、残る。

避ければ、包囲される。


「ヤヒロ!」


ユイが叫ぶ。


ヤヒロは、盾を前に出した。


だが――

正面に構えなかった。


斜め。


わずかに、角度をつけて。


「……全部、受けない」


低い声。


盾が、熱流を弾く。


反転しない。

跳ね返さない。


逸らす。


溶岩が、盾の縁を滑り、左右へ分断される。


「……っ!」


熱が、脚を焼く。


だが、止まらない。


「今だ!」


その“隙間”に、

ユイの矢が、滑り込む。


狙いは、逆鱗そのものではない。


逆鱗へと、力を送る根元。


一本。

二本。

三本。


矢は、刺さる。


反応が、遅れる。


――必中の特性が、ここで意味を持つ。


「……効いてる」


ツダが、確信を持って言った。


「共鳴が、遅れてる」


「つまり――」


ヤチヨが、剣を振りかぶる。


「壊せるってことだろ?」


踏み込み。


虎嘯。


剣が、逆鱗の縁を叩く。


だが――


「ッ!?」


反撃。

反響。


衝撃が、剣を伝って返る。

ヤチヨが、吹き飛ばされる。


「チッ……!」


着地はした。

だが、無傷ではない。


「まだ、だ」


ツダが言う。


「逆鱗は――」


その瞬間。


ヴォルカニクスが、翼を大きく広げた。


空気が、震える。


逆鱗が、完全共鳴を始める。


「――来る!」


ツダが叫ぶ。


「最大の――」


全体攻撃。


衝撃。

音。

熱。


すべてが、重なる。


「ヤヒロ!」


ヤヒロは、盾を前に出した。


今度は――真正面から、逆鱗に押し当てる。


逃がさない。

逸らさない。


受ける。


衝撃が、直撃する。


骨が、軋む。


視界が、白くなる。


「……ッ!!」

「……まだ……だ……!」


膝が、折れかける。


だが、盾は、落ちない。


逆鱗が、鳴き声を上げる。


共鳴が、乱れた。


「……今度こそ、見えたぞ」


ツダが、静かに言った。


「逆鱗は――」


「――壊すんじゃねえ」


ヤヒロが、息を吐きながら、続ける。


「使わせない」


盾を、構え直す。


「次で……終わらせる」


ヴォルカニクスが、再び身構えた。


だが。

その動きには、焦りが混じっていた。


ヴォルカニクスは、もはや吼えてはいなかった。


鳴き声は、共鳴に変わる。

怒りは、機構へと変わる。


逆鱗が、鈍色に輝く。


だがその輝きは――

先ほどまでのような、圧倒的な光ではない。


「……共鳴が、安定してねえ」


ツダが低く言った。


「ヤヒロの盾で、逆鱗の“使いどころ”がズレてる」


「つまり?」


ヤチヨが、口元を歪める。


「向こうはもう、全体攻撃を撃てねえはずだ」


ドラゴンが、前脚を踏み出す。


近接。


爪と牙による、純粋な物理攻撃。


「――来る!」


ヤヒロは、盾を横に構えた。


受けない。

止めない。


流す。


爪が、盾の縁を削る。


衝撃は残る。

だが、深くはない。


「いいぞ……!」


ツダが叫ぶ。


「そのまま、逆鱗の“前”に立て!」


ヤヒロは、一歩踏み込んだ。


盾を、逆鱗と自分の間に滑り込ませる。


――反響鱗の遮断。


逆鱗が、鳴らない。


共鳴しない。


ドラゴンが、一瞬だけ動きを止めた。


「……今」


ユイが、静かに言った。


弓を引く。


矢は、放たれない。


――その場に、留まる。


空中に浮かぶ、不可視の矢。


「……三秒」


ユイの声に、迷いはない。


ヤチヨが、前に出た。


「調子乗ってんじゃねえぞ、トカゲ!」


虎嘯大曲剣が、唸る。


逆鱗ではない。

逆鱗の“根元”。

剣が、深く食い込む。


ドラゴンが、悲鳴を上げた。


その瞬間――


「……必中」


ユイが、囁く。

止まっていた矢が、一斉に動く。


逆鱗へ。

根元へ。

内部へ。

共鳴の核を、正確に射抜く。


「――ッ!!」


ヴォルカニクスの身体が、のけぞる。


逆鱗の光が、乱れる。


「今だ!」


ツダが、槌を構えた。


後衛だった男が、初めて全力で踏み込む。


「ここが……終点だ!」


槌が、逆鱗を横から叩いた。


破壊ではない。


位置を、ずらす。


共鳴構造が、完全に崩壊する。


ドラゴンの身体から、音が消えた。


熱が、落ちる。


衝撃が、消える。


「……終わったな」


ヤチヨが、剣を構え直す。


ヤヒロは、盾を前に出したまま、動かなかった。


「ヤヒロ?」


ユイが見る。


「……最後まで」


そう言って、ヤヒロは前に出た。


盾を、逆鱗に叩きつける。


衝撃波反転。


今度は、逃がさない。


溜め込まれていた反響が、

すべて、内側へ返る。


ヴォルカニクスの身体が、崩れ落ちた。


巨大な影が、地に伏す。


――そして。


光の粒子となって、消えていく。


静寂。


火山灰が、静かに降り続けていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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