2章33節
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ヴォルカニクスが、翼を広げた。
火山灰が、空を覆う。
音が、消える。
――無音。
その次の瞬間。
世界が、壊れた。
衝撃が、後ろ以外の全方向から叩きつけられる。
盾が、弾かれた。
ヤヒロの体が、宙を舞う。
「――っ!!」
地面に叩きつけられる。
肺から、空気が抜ける。
痛覚が、遅れて追いつく。
(……やば……)
意識が、遠のく。
これは――
致命傷。
だが。
――ぐっ、と。
体が、止まった。
意識が、繋ぎ止められる。
《特性:食いしばり 発動》
ヤヒロは、血を吐きながら、立ち上がった。
「……まだだ」
盾を、拾う。
震える腕で、構える。
「……俺は、ここに立つ」
逆鱗が、なおも光る。
熱と灰の中で、ヤヒロは、ただ立っていた。
盾を前に。足を、踏みしめて。
呼吸は荒い。
視界の端が、滲む。
それでも――
誰一人、倒れていなかった。
「……生きてる」
ユイが、小さく呟いた。
肩口に裂傷。
脚に軽い火傷。
だが、致命傷ではない。
ツダも、ヤチヨも同じだった。
それが、何を意味するか。
「……全部、受けやがったな」
ツダが、低く言う。
「ったく。無茶しやがって」
ヤチヨは笑ったが、その目は真剣だった。
剣を構え直し、舌打ちする。
「でも――おかげで、立て直せる」
ヴォルカニクス=エコー・ドラゴンは、
ゆっくりと首を持ち上げていた。
逆鱗は、まだ鈍色に輝いている。
だが、さきほどまでの過剰な光ではない。
溜めた。
吐いた。
反動が、ある。
「……今だ」
ヤヒロは、声を絞り出した。
「いけ……!」
その一言で、
空気が、変わった。
「――おう」
ツダが、前に出る。
これまで、控えていた男が。
観測者であり続けた男が。
今度は、殴りに行く。
槌が、振り下ろされる。
狙いは逆鱗――ではない。
関節。
筋肉の付け根。
衝撃を逃がす“逃げ道”。
「反響するなら、逃がす場所を潰すだけだろ」
重い一撃。
ヴォルカニクスの前脚が、わずかに沈む。
「――ギャッ!」
鳴き声が、乱れた。
「効いてる!」
ユイが、息を吸う。
弓を引く。
狙いは、逆鱗の“周囲”。
共鳴する鱗ではなく、
その振動を支える、肉。
矢が、三本。
連続で、突き立つ。
「……っ!」
竜が、身をよじる。
反撃が来る――
そう思った瞬間。
「させるかよ!」
ヤチヨが、割り込んだ。
虎嘯大曲剣が、吼える。
斬撃。
斬撃。
斬撃。
一撃一撃が、乱暴で、強引だ。
だが――
今は、それが正解だった。
逆鱗が、共鳴しきれない。
「……チッ、溜めが足りねえなぁ!?」
ヤチヨが、笑う。
「もっと吠えろよ、デカブツ!」
反撃が来る。
爪。尾。振動。
だが。
「――こっちだ!」
ヤヒロが、踏み込む。
盾を、叩きつける。
攻撃ではない。
防御でもない。
“存在をぶつける”。
衝撃が、逆流する。
反響鱗が、震える。
だが、今度は――
増幅しない。
「……?」
ヴォルカニクスが、一瞬、動きを止めた。
「来てるぞ」
ツダが、低く言った。
「反撃のターンが、完全に回ったわけじゃねえ」
「でも――」
ユイが、矢を番えながら言う。
「主導権は、こっち」
ヤヒロは、盾を構え直す。
震える腕で。痛む体で。
それでも、前に。
「……まだ、倒さない」
「倒すのは――」
視線が、仲間と交わる。
「――次だ」
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