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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
4章:北海道ダンジョン編

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4章8節

毎日17:30投稿

ツダは、

ギルドの窓口が一段落したのを見計らって、

カウンター越しに声をかけた。


「すみません。

 少し、業務確認でお話いいですか?」


本郷三咲は、

ぱっと顔を上げた。


「は、はい」


「ギルドの内部調査でね。

 最近、クエストの達成率に偏りが出てて」


「軽いヒアリングです。

 心配しなくて大丈夫」


ツダは、

あくまで“ギルド関係者”としての顔を崩さない。


本郷は、

少し緊張しながらも頷いた。


「じゃあ、

 中だと邪魔になりますし……外で」


建屋を出ると、

札幌の空気は鋭く冷たい。


吐く息が白く、

街の音がどこか遠い。


「最近、

 何か変わったことはありませんか?」


ツダは、

事務的な口調で切り出した。


「体調とか。

 人間関係とか」


本郷は、

しばらく考えてから、

首をかしげる。


「……変わったこと、ですか?」


「うーん……」


そして、

困ったように笑った。


「むしろ、

 調子はいいです」


「仕事も、

 前よりスムーズで」


「クエストも……

 担当すると、なぜか達成されることが多くて」


自慢ではない。

誇張でもない。


ただ、

淡々とした事実の報告。


「不思議なんですけど、

 嫌な感じはしないんです」


ツダは、

一歩だけ距離を詰めた。


「それを、

 不安には思わない?」


本郷は、

一瞬だけ目を瞬かせてから、

左手を見た。


指にはまった、

二連のリング。


「……これ、ですかね」


照れたように、

小さく笑う。


「初任給で買ったんです。

 使えない装備って言われてましたけど」


「なんとなく、

 気に入って」


「つけてると……

 大丈夫な気がするんです」


「お守り、みたいな」


ツダは、

それ以上深く踏み込まなかった。


「なるほど」


「参考になりました。

 ありがとう」


「いえ……

 お役に立てたなら」


本郷は、

ぺこりと頭を下げ、

ギルド建屋へ戻っていく。


その背中を、

ツダは一瞬だけ見送り、

踵を返した。


――その間。


誰にも気づかれない場所で。


街路樹の影。


電柱の裏。


そこに、

男がいた。


フードを深く被り、

顔は見えない。


だが、

視線だけが、

本郷の背中に縫い付けられている。


(……誰だ)


(あの男)


(知らない)


(なんで、あんなふうに……)


男の脳裏に、

ふと、

テレビの映像がよぎる。


――沖縄。

――暴動。

――刺剣。

――羨望と嫉妬に狂った人間。


胸の奥が、

じくじくと疼く。


(……奪われる)


(また、奪われる)


(ああいう奴が……

 先に、触れる)


指が、

無意識に握り締められる。


自分でも理由は、

はっきりしない。


ただ、

胸に溜まる感情だけが、

確かだった。


――妬ましい。


その視線に、

ツダも、

本郷も、

まだ気づいていない。


だが、

物語はすでに、

静かに軋み始めていた。

いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。

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