3章44節
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爆音が、空気を裂いた。
ヤチヨの大曲剣が振り下ろされるたび、
地面が悲鳴を上げる。
ジップは、それを――正面から受けていた。
「――ッ!!」
金属と金属が噛み合う衝撃。
本来なら、
受け止められるはずのない一撃。
だが、ジップのセスタスが、それを弾く。
否――
叩き潰す。
「……まだだ」
ヤチヨの目が、光を失わない。
むしろ、
燃え上がっていた。
(足りない……?)
(違う)
(――“上”を見ろ)
その瞬間。
ヤチヨの背後に、
何かが“立ち上がった”。
それは幻覚ではない。
彼女自身の存在感が、
一段、上の位相へ跳ね上がる。
「……は」
ジップが、短く息を吐く。
「来たか」
ヤチヨの剣が、
さらに“重く”なる。
振るうたび、
世界が従う。
自分が、正しい。
自分が、上だ。
自分が、勝つに決まっている。
――傲慢の臨界。
「押し潰してあげるわ」
低く、女の声。
次の瞬間。
剣が、嵐のように叩き込まれた。
斬撃、斬撃、斬撃。
間合いを殺し、
防御を許さず、
退路を断つ。
ジップの足が、
一歩、後ろへ下がる。
「……ッ」
拳で受ける。
肘で逸らす。
肩で弾く。
だが、
押されている。
(なるほど)
(これが――)
ジップの奥歯が、軋む。
「……いい」
「実に、いい」
次の瞬間。
彼の足が、
地面を踏み抜いた。
爆発。
怒りが、内側から噴き上がる。
憤怒の臨界。
それは、
理性を焼き尽くすものではない。
ジップの場合――
制御された怒りだった。
「――だが」
「それでも、足りない」
拳が、空を殴る。
衝撃が、遅れて到達する。
ヤチヨの身体が、
見えない何かに殴り飛ばされた。
「――ッ!?」
空中で体勢を立て直そうとする。
だが、次の一撃が来る。
今度は、
確実に。
腹部。
息が、抜ける。
膝が、落ちる。
「……くっ……!」
それでも、
剣は離さない。
傲慢が、
彼女を立たせ続ける。
「……まだ……!」
振り上げた剣を――
ジップは、
真正面から叩き落とした。
セスタスが、
剣の腹を打つ。
金属音。
コンクリートの地面にひびが入るほどの衝撃。
大曲剣が、地面に転がる。
一瞬の静寂。
ヤチヨの視界に、
影が落ちる。
「終わりだ」
低い声。
拳が、
彼女の喉元で止まる。
殺せる距離。
だが、
殺さない。
拳を引き、
代わりに、肩を掴む。
「お前は強い」
「だが――」
「戦場を選べていない」
ヤチヨは、
歯を食いしばり、笑った。
「……あんたも、同じでしょ」
「殺せない癖に」
ジップは、答えない。
ただ、
彼女を地面に叩き伏せ、拘束する。
戦いの勝敗は、明確だった。
勝者、ジップ。
だが、
どちらも無傷ではない。
憤怒と傲慢がぶつかり、
世界は、確かに揺れていた
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