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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
3章:沖縄ダンジョン編

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3章41節

毎日17:30投稿

その裏で。


ヤヒロは、ようやく視線を戻した。


――違和感。


守ったはずの、所有者が。


地面に落ちていた刺剣を、

拾い上げている。


ふらつきながら、

それでも、確実に。


刃先が、ヤヒロを向いた。


「……はは……」


血の混じった笑い声。


「……やっぱり……」


「君だ……」


視線が、絡みつく。


「守るって……」


「そういう顔をするやつが……」


「一番、刺しやすい」


一歩。


ヤヒロは、動けない。


盾は遠い。

身体は、まだ言うことを聞かない。


(――違う)


(守ったはずだ)


(止めたはずだ)


刃が、持ち上がる。


震えている。

だが、それは恐怖じゃない。


興奮だ。


「見せてよ……」


「最後まで……」


所有者が、踏み込む。


その瞬間――

ヤヒロの視界に、ヤチヨとジップの激突が映る。


止めたい。

叫びたい。


だが、声が出ない。


守ったはずの相手が、

守った人間に、剣を向ける。


それが、この戦場の答えだった。


刃が、ヤヒロの喉元へ――

一直線に、迷いなく。


その軌道に、

一本の矢が割り込んだ。


金属音。


剣先が、僅かに弾かれる。


致命の角度が、数センチずれる。


「――っ!」


所有者が、息を詰める。


魔素をまとっていない、ただの矢。


それでも、

十分だった。


「……ヤヒロ!」


ユイの声。


震えている。

だが、照準は狂っていない。


弓を引く腕が、明らかに重そうだった。


魔素が、薄いダンジョンの外。

この場所では、彼女の“いつもの矢”は使えない。


連射もできない。

矢一本ごとに、呼吸を整えなければならない。


それでも、彼女は放った。

“止めるためだけ”の一射を。


「……ちっ」


所有者が、舌打ちする。


剣を引き戻し、

再び構え直そうとする。


だが、次の一矢は来ない。


ユイ自身が、それを理解していた。


(――もう、すぐには撃てない)


(次は、外さない)


それでも、

今の一矢で、時間は稼いだ。


ヤヒロが、息を取り戻す。


視線の端で、

なお続く激突――ヤチヨとジップ。


そのさらに外側。


暴動の中心部で。


ツダは、動いていた。


盾を構えた市民団体を押し返し、

警棒で武装解除し、

怒号と悲鳴を整理しながら。


――仕事は、完璧だった。


だが。


その合間に、

彼は、こちらを見ていた。


まるで、

芝居でも眺めるように。


「……いいね」


小さく、誰にも聞こえない声で。


「やっぱり……」


催涙ガスの煙越しに、

ヤヒロと所有者、

ユイの弓、

ヤチヨとジップの衝突を、

全部まとめて視界に収める。


「……人が追い詰められる瞬間って」


「最高に、分かりやすい」


口元が、僅かに歪む。


次の瞬間、

ツダはまた“公安の顔”に戻る。


「下がれ! そこは封鎖だ!」


怒鳴り、

走り、

暴動を制圧しながら。


その心は、

明らかに――


この戦場を、楽しんでいた。


一方で。


剣を構え直した所有者が、

ユイを睨む。


「……次は、そっちか」


ユイは、歯を食いしばる。


矢をつがえる。

遅い。

重い。


それでも、

退かない。


ヤヒロは、ようやく立ち上がり、

盾へと手を伸ばす。


守る対象は、もう明確だった。


「ユイ!!!」



いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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