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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
3章:沖縄ダンジョン編

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107/129

3章35節

毎日17:30投稿

沖縄ダンジョン・中層。

朽ちたコンクリートの壁を絡め取るツタ。

舗装路を押し割って伸びる巨木の根。

上空では、見えない何かの羽音が、湿った空気を震わせていた。


「……ここ、前より“濃い”わね」


ヤチヨが周囲を睨みながら言う。

感覚の話だが、間違っていない。


魔物の密度。

殺意の濃さ。

そして――人の気配。


「ギルド部隊じゃない」


ツダが即座に判断する。


「足取りが雑だ。でも、弱くもない」


ユイが弓を構え、低く息を吸う。


「……第三者?」


「ほぼ確実にな」


そしてヤヒロは、盾を構えたまま、一歩前に出た。


その瞬間だった。


地面が、沈んだ。


爆発ではない。

崩落でもない。

踏み抜かれたのだ。


次の瞬間、地中から飛び出したのは、

装甲のような外殻を持つ、巨大なムカデ型モンスターだった。


体長は十メートル近い。

節足の一本一本が刃物のように尖り、

顎門からは腐食性の液体が滴り落ちている。


「――来る!」


ヤヒロが盾を前に出す。


だが今回は、“全部”は受けない。


「右から三本、逸らす!」


盾をわずかに傾ける。

衝撃反転――だが、最大出力ではない。


力を殺し、流す。


外殻が盾に触れた瞬間、衝撃が滑り、

ムカデの巨体が僅かにバランスを崩す。


「今!」


「っはああ!」


ヤチヨが踏み込み、関節部へと一撃を叩き込む。

完璧な急所ではない。

だが、動きを止めるには十分だった。


ユイの矢が、間髪入れずに続く。

装甲の隙間を縫う、正確無比な一射。


――その瞬間。


横合いから、別の攻撃が飛び込んできた。


斧。

いや、正確には“斧槍”に近い武器。


投擲されたそれが、ムカデの胴体を叩き割る。


「……横取り?」


ヤチヨが舌打ちする。


姿を現したのは、三人組の冒険者だった。


「悪ぃな」


先頭の男が、笑う。


「こいつ、俺たちが追ってた」


ユイの視線が鋭くなる。


「……違う。今の一撃、殺しきるつもりだった」


つまり、連携ではない。


単なる成果の強奪。


ヤヒロは、盾を構え直した。


ここで前に出れば、戦闘になる。

だが、今は――


「……通すか、止めるか」


守る対象を、選べ。


盾が、微かに熱を持つ。


ヤヒロは、深く息を吸った。


「――止める」


選んだ。


次の瞬間、盾が応えた。


今までとは違う感覚。

注意を引き寄せるのではなく――力の向きをずらす。


冒険者の一人が、ムカデに向けて放った追撃。

その攻撃対象が、強制的に書き換えられる。


斬撃は、空を切った。


「……なに?」


男が目を見開く。


「挑発……いや、違う」


ツダが息を呑む。


「攻撃対象そのものを――選別してる」


ムカデは、まだ生きている。

冒険者たちは、殺す気だ。


だが、ヤヒロは――


『今は、こいつを守る』と選んだ。


結果、戦場の主導権が一瞬、空白になる。


その隙を、ヤチヨが逃さない。


「――下がれ!」


威圧。

一歩前に出ただけで、空気が変わる。


冒険者たちは、本能的に距離を取った。


「ちっ……」


舌打ちと共に、三人組は撤退する。


残されたのは、

瀕死のムカデと、四人だけの戦場。


「……守った、の?」


ユイが小さく呟く。


「うん」


ヤヒロは、はっきり頷いた。


「今は」


その言葉に、全員が黙った。


選別。

守らない選択。

守るために、排除する判断。


それは、

これまでのヤヒロが、無意識に避けてきた領域だった。


盾は、静かだった。


満足も、不満も示さない。

ただ――受け入れた。


「……代償、だな」


ツダが低く言う。


「守りが戦術になった瞬間、守られなかったものが、必ず生まれる」


ヤヒロは盾を見る。


「……それでも」


拳を握る。


「俺は、選ぶ」


全部は無理だ。

それでも、誰かを守るために。


その覚悟が、

次の戦場を、呼び寄せていた。



いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

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