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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
3章:沖縄ダンジョン編

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3章29節

毎日17:30投稿

所有者は、もうまともに立っていなかった。


片膝をつき、呼吸も荒い。

刺剣を支えにしなければ、倒れ伏していただろう。


それでも――

笑っていた。


「……は、はは……」


血を吐きながら、

それでも、目だけは輝いている。


「すげぇ……な……。これが……本物かよ……」


その姿を見た瞬間、

ヤヒロの背中に、冷たいものが走った。


(――まずい)


このまま終わる。

力で、叩き潰されて。


それは“止めた”ことにはならない。


「――やめろッ!!」


考える前に、身体が動いていた。


盾を構え、

ヤヒロは、戦闘の中央へと飛び込む。


「これ以上は――!」


ジップと所有者の間に、強引に割って入る。


守る。

たとえ、敵であっても。


「下がれ!」


盾を突き出し、

衝撃を受け止める構え。


その瞬間――


空気が、変わった。


ジップが、ゆっくりとこちらを見る。


「……邪魔をするな」


低い声。


怒りが、静かに、しかし確実に増幅していくのが分かった。


「お前が守ろうとしているのは、『止めるべき災厄』だ」


「それでもだ!」


ヤヒロは、歯を食いしばる。


「ここで殺すのは――それは、守ったことにならない!」


一瞬の沈黙。


そして――


「――黙れ」


衝撃。


盾ごと、吹き飛ばされた。


受け止める暇もない。

防御も、姿勢も、意味を成さない。


ヤヒロの身体は、

地面を転がり、壁に叩きつけられた。


「――っ!!」


息が詰まる。


視界が揺れる中で、

はっきりと理解する。


自分は、怒りを止めたのではない。

ただ、煽っただけだ。


「……ヤヒロ!」


仲間の声が、遠い。


ジップは、もう迷わない。


一歩。

また一歩。


重いブーツが瓦礫を踏み砕くたび、地面が低く鳴った。

それだけで、所有者の足元の感覚が狂っていく。


次の瞬間、間合いに入った。


ジップの拳が、ためもなく突き出される。

防御に上げた腕ごと、骨を叩き割る衝撃だった。


鈍い音。

空気が潰れ、肺から息が強制的に吐き出される。


体が宙に浮き、背中から地面に叩きつけられる前に――

追撃が来る。


腹部。

正確に、急所だけを選んだ蹴り。


内臓が裏返るような感覚に、視界が白く弾けた。

叫ぶ暇すら与えない。


一歩。

また一歩。


倒れた所有者の胸元を踏みつけ、逃げ場を完全に奪う。

体重ではない。

意志そのものを叩きつける踏み込みだった。


骨が軋み、呼吸が止まる。


ジップは視線を落とすだけで、照準を定めた。

怒りはある。

だが、それは爆発していない。


――制御されたまま、最大出力で。


「終わりだ」


その腕が、所有者を捕らえる。


完全な制圧。


刺剣に手が伸びる。


――破壊される。


誰もが、そう思った。


その瞬間。


「……は、はは……」


所有者が、笑った。


「……ダメだよ……。それは、渡せない」


一瞬。


自分の喉元へ、刺剣を引き寄せる。


「――待て!」


ツダの声が、間に合わない。


「ここで終わると思うなよ……」


刃が、躊躇なく突き立てられた。


自害。


血が噴き出し、

所有者の身体から力が抜ける。


同時に――

刺剣が、光と共に消えた。


ジップの拳は、空を打つ。


勝利。


だが、

最悪の形での決着。


床に崩れ落ちながら、

所有者は、最後に、歪んだ笑みを浮かべた。


「……次は……外だ……」


血に濡れた唇が、動く。


「ダンジョンの外で……」

「もっと、派手に……

「みんなに……見せてやる……」


そして、その言葉を残したまま、身体は光となって消えていった。


死に戻り。


静まり返る戦場。


ヤヒロは、立ち上がれなかった。


盾を握る手が、震えている。


守れなかった。

止められなかった。


そして――

終わってしまった。


この戦いが、

本当に“勝った”のかどうか。


誰一人、

そう思える者はいなかった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。

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