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DAY94 交わる意思と照らされる石

無機質な巨大な空間が、

夜の静けさに不気味な影を落とす。


一馬達が拠点に選んだ先は、

工場ではなく、敷地内にある共用棟。

工場内は設備で複雑だが、

実の所、大きな吹き抜けの建物が多い。


今回の狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)は、

建物内で出来る限り防衛出来る方法を模索した。


疲労も抜けない状況で、

動き回るのは得策ではない。


共用棟はコンクリート5階建ての建物。

侵入経路は非常口を除いて一つ。

非常階段も細く、屋上らしい屋上は無い。


決して小さい建物では無いが、

限定的な侵入経路で作戦も練りやすい。


一馬達は集合して今後の方針の会議をする。


黒羽(クロウ)「オッサンが帰ってきたぜ」


黒羽(クロウ)が部屋に入ってくる。

後ろから武臣が姿を現す。


朱華は武臣に視線を向け、

武臣は朱華に向かい頷く。


葵「おかえりなさい、武臣さん」


武臣は拠点を決めてすぐ、別行動に入っていた。

負傷した左手は、まだ生々しく

疲労も痛みも抜けてはいない。


拠点の補強作業も足手まといになる為、

武臣自ら、周辺の調査を申し出ていた。


武臣はボディーガードという職業柄、

状況把握のスペシャリストでもある。 


錬次「おい、オッサン大丈夫か?」


錬次は武臣が怪我して以来、

敵意を向けることは無い。

それどころか信頼し、尊敬すらしている様子だ。


葵「包帯を変えます。」


一馬「お疲れっス!そのまま話を聞いて下さい」


一馬は今後の行動指針を話し始める。

工場エリアを抜ければ、

すぐに住宅エリアに入る。


土地の利を活用し、籠城作戦を決める。


朱華「籠城?」

一馬「ああ、今回は動かないで乗り越えようと思う」

六花「方法は?」

黒羽(クロウ)「俺達にはお馴染みのコレを設置する」


黒羽(クロウ)は足元から、

紫外線ライトを取り出す。


朱華たちは、簡単に状況を受け入れる。


瑠奈「ちょ、ちょっといいですか?そのライトがなんですか?」


誠「ぼ、僕も理解が追い付きません」


一馬「ああ、そうか・・説明するよ」


一馬はUVライトについて説明する。

ゾンビにとって紫外線は有害そのもの。


紫外線の波長よって効果に違いはあるが、

強力な紫外線は動きを止め、

ゾンビ共を脆くする。


誠「へーそんな事が!」

一馬「ああ、かなり便利だけど素材が必要だし、コイツが居ないと簡単には作れない」


黒羽(クロウ)は鼻を鳴らし笑みを浮かべる。


瑠奈「迎撃はすべて建物内で行うのね?」

一馬「正解・・・朱華は遠距離は?」


六花「だまれクソが!朱華様に死角など無いわ!」


一馬「えー?」


朱華「六花!・・・・愚問だ一馬、私に出来ない事は無い」


一馬「あ、ああ・・・」

葵「六花ちゃん!怒ってると可愛くない!」

六花「あっは、はい」


隼人「あははは、OK。それより武臣さんどうでした?」


武臣は調べた周辺の状況を説明する。

地形の変化が激しい為、

素直に進むことが難しい。


工場内を抜けない限り、先へは進めない。


武臣「回り道は現実的ではないな・・・」


黒羽(クロウ)「確かに、先へ進める保証もないしな」


一馬「持っていく物の選別をするから隼人さん黒羽(クロウ)に六花さんに誠は残って・・・あとは解散」


部屋を出た朱華に瑠奈が声をかける。


瑠奈「しゅ、朱華さん・・・」

朱華「ん?」


朱華は一歩瑠奈に詰め寄り、

瑠奈を抱き寄せる。


瑠奈「な、え?」

葵「朱華姉ー冗談通じてないよ」

朱華「あはは、悪いね。で、なんだい?」


瑠奈は虚を突かれ呆然とするが、

我に帰り口を開く。


瑠奈「私に戦い方を教えて下さい」


葵「え?えー」


朱華「・・・・理由は?」


瑠奈「・・・・み、みんなを・・・いえ、か、一馬を守りたい」


葵「え?え?えーきゃあああああああ」


葵の反応とは裏腹に、

朱華の表情は険しくなる。


朱華「・・・・・」


朱華は何も言わず振り返り歩いていく。


瑠奈は俯き、

葵は瑠奈を気にしつつ、朱華の後を追う。


葵「朱華姉ー?ねぇ?怒ってるの・・・」


朱華は何も言わず、葵の頭を優しく撫でる。


朱華はそのまま部屋に入り、

黙ったまま身体を横にする。


錬次「おっさん・・・」


武臣「・・なんだ?」


武臣は負傷した手を物ともせず、

器用に銃の手入れをする。

錬次も横に座り、

銃を取り出し、見よう見まねで手入れを始める。


武臣「・・・・・・違う」

錬次「えっ?」

武臣「貸せ」


武臣は銃を器用に動かしパーツを外す。

外したパーツを再び組み直し、錬次に差し出す。


武臣「やってみろ」

錬次「お、おう」


誠「トーマスさん・・何か飲みますか?」

トーマス「ああ悪い。いただくよ」


誠はトーマスにハーブのお茶を用意する。


誠「これくらいしか、僕にはできませんから」


トーマス「・・・はは、おれも同じだよ!妻のアリーの方が凶暴で尻に敷かれたよ」


誠「あははは、そうなんですね」


トーマス「得意不得意は誰にでもある。あんたの出来ることを、全力でするしかない・・・だろ?」


誠「・・・・」


トーマス「俯くなよ。腐っても解決しない。一馬ならそう言うと思うぞ」


誠「・・・一馬くんなら」


トーマス「そうだ!やらずに後悔するより、やって後悔しようぜ!お互いにな」


誠「は、はい」


それぞれの思いが交差し、

それぞれの決意に火が灯る。


月明かりの下で、意思が照らされる。

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