DAY93 アルゴリズム
世界が足早に動き始める。
一馬は12階屋上を抜ける。
葵の死を回避し、
誠の死も回避する。
トーマスも当然命の危機にさらされるが、
無事、危険を乗り越える事が出来た。
どこまで続いているのか、
何もわからない護衛ミッション。
隼人の言葉で一馬の意識は変わる。
本当の意味で、
仲間を信頼しながら、動ける安心感。
”死なせない・・・”
そんな意識だけが独り歩きし、
一馬の視野を狭くしていた。
”また、戻れる・・・”
甘えでは無いが、
自分の命を軽んじ、行動していた。
一馬はゾンビ達の群れを抜けながら、
ゆっくりと呼吸を整える。
一馬(腕が重い・・息が上がっている・・風が冷たい・・指は?まだ動く・・足は?大丈夫・・視界は?問題ない・・安心している・・落ち着いてる・・思考は・・・・・)
一馬の空気が一変する。
隼人(・・・・いけ、一馬)
|Transient Hypofrontality・・・
一馬は混戦中で、超集中状態に入る。
今、一馬の視界に映る者すべてが、
ゆっくりと動いている。
一馬の神経回路が全開になり、
脳が視界に入る情報を高速処理で始める。
記憶に伴う演算処理が行われる。
ゾンビの攻撃にセオリーは無い。
しかしゾンビの立ち位置や動きで次の攻撃がわかる。
地面の砂利を踏み潰す音まで
聞こえるような感覚がある。
仲間の動きの1歩先・・2歩先を進む。
一馬の集中力が切れた頃には、
工場エリアまでたどり着いていた。
一馬「ハァハァハァ・・・ハー」
瑠奈「一馬、大丈夫?」
一馬「ハァハァあーきつ」
一馬は笑顔で答える。
工場エリアは思ったよりも、
大きいエリアなのが一目でわかる。
隼人「一馬くん・・狂乱の血死潮まで時間が無いよ」
一馬「はい、わかってます。とりあえず拠点になる場所を探しましょう。」
大雨の足止めにより、
今日で40日目に入っている。
後2日で狂乱の血死潮の夜がやってくる。
先に進みたい気持ちはあるが、
進んで拠点がある保証も無い。
何も無い場所で、狂気の夜は超えられない。
朱華・六花・葵・誠・トーマスは、
拠点の補強に回る。
一馬・瑠奈・隼人・錬次・黒羽で、
狂気の夜に備え、素材集めに動く。
工場エリアの最大のメリットは、
電子部品などが大量に手に入る。
一馬「ハァハァ」
一馬は膝から崩れ落ちる。
錬次「テ、テンちゃん・・」
錬次が腕を掛け、一馬を支える。
瑠奈「きゃっ・・か、一馬・・」
隼人「ゾーンに入ったから限界がきたんだね。お疲れ」
黒羽「とりあえずそこで座ってろ」
一馬「だ、だいじょう・・」
立ち上がろうとするも、
膝が笑って思うように力が入らない。
黒羽「いいから・・・・なんですか?」
隼人はニヤニヤしながら黒羽を見つめる。
隼人「いいや、なんでもない」
黒羽「ムカつく顔してますよ」
隼人「はいはい、瑠奈ちゃん錬次くんココ宜しくね!一馬くん少し落ち着いて待ってて」
隼人と黒羽は素材集めに向かう。
瑠奈「ねぇ一馬・・」
一馬「んっ?」
瑠奈「・・・なんでも」
一馬「おい、言いかけて止めるとか気になるだろ?」
瑠奈は上目遣いで一馬を見つめる。
瑠奈「私の事覚えている?」
一馬「えっ?どういう事?」
瑠奈は意を決し話始める。
瑠奈は、
現実世界で同じゾンビゲームをしていた。
瑠奈は高校を卒業し、
目的も無く引きこもりをしていた。
「LunaPatch」の名前で、
一馬のサーバーによく遊びにいっていた。
錬次「え?知ってるぞ」
瑠奈「え?」
意外な錬次の反応に変な空気が流れる。
錬次「オレ!オレ!Razor_77だよ!レイザーナナナナ」
一馬「えっ?Razor_77?って事は、LunaPatchってプー太郎のLunaPatch?」
錬次「えっ?テンちゃんもしかして・・・・テ、テ、テ?」
瑠奈「TENMA100」
錬次「それ!テンドレット」
一馬「TENMA100な!」
3人は顔を見合わせ笑い出す。
一馬「あははは、マジか!」
瑠奈「覚えててくれたんだ・・・」
一馬「ああ、でもまさか錬次とも遊んでたなんて」
錬次「おう、さすが親友だな」
一馬「おう」
一馬と錬次が拳を合わせる。
そこに瑠奈が拳を一馬と錬次に向ける。
一馬・錬次「・・・おう!!」
瑠奈と拳を合わせる。
一馬は何となくこの超現実を理解し始める。
”現実で繋がった事のある人間”
トーマス以外の仲間全員が、
現実世界から超現実へと飛ばされた人間。
そして仲間としての存在は、
現実世界で繋がった事のある人間。
アルゴリズムが働いき、運命に結ばれた人間。
肌寒い空間で心が温まる感覚がある。
冷えたアスファルトの上で、縁が炎を描く。




