DAY92 受け入れる強さと命の重み
繋がる道を照らすように、
光が差し込み彼らを導く。
一馬の36回目の護衛ミッションの挑戦。
12階屋上に出る。
ドンッドンドン・・・・ドンドン
一馬達は襲い掛かるゾンビに弾丸を撃ち込む。
一馬は軽く顔を左右に振り、
視線を端から端まで走らせる。
一馬「右・・」
ドンドンッ
一馬「左・・・」
ドンッ
一馬「次も左・・・」
左手で太腿からナイフを取り投げる。
サク・・・ドンドン
36回目にもなると流石に、
ゾンビの動きも覚える一馬。
リポイスは必ずしも同じ条件になる事は無いが、
キークエスト以外は大きくそれる事も無い。
一馬(ここ!)
ドンドンドン
3体の内の1体、
ゾンビ犬が走る勢いのまま滑り崩れ落ちる。
ドンドンッ
一馬は襲われる前に、
ゾンビ犬を正確に撃ち抜く。
振り向き葵の方へ銃口を向ける。
ドンドン・・・・
葵に襲い掛かろうとする、
昆虫型の奇形生物を撃ち抜く。
一馬は深くゆっくり息を吸い、
細くゆっくりと息を吐きだす。
一馬は30回目に護衛ミッションで、
隼人にリポイスを打ち明ける事を決意した。
しかし隼人は意外な反応をする。
一馬「隼人・・・さん」
隼人「ん?何、どうしたの?」
編成の組み立てと、
明日の準備をしている隼人へ声をかける。
一馬「隼人さんに知っててもらいたい事があります」
隼人「なんだい?真剣な顔で」
一馬は苦虫を噛んだような
顔をしながら下を俯く。
意を決して話し始める。
一馬「オレ、何度も死んでこの世界をやり直してます」
隼人は少し困惑する表情をする。
そして、すぐにいつもの表情に戻り笑みを浮かべる。
隼人「そんな気はしてた・・嘘?ではないんだね」
一馬は驚いた表情を隼人に見せる。
隼人「あははは、なんで君が驚いてるの?」
一馬「あ、いや・・・」
隼人「ドッキリじゃないんでしょ?君を観察していれば何となくだけど・・・そうなのかな?ってね」
一馬は隼人の聡明な見識に喜びを感じる。
一馬「そ、そう・・・」
隼人「だけど、聞きたくなかったよ」
一馬「えっ?」
隼人の声のトーンが下がり、
殺気に近い雰囲気を放つ。
一馬「今回は護衛ミッションみたいで、仲間を守れば・・」
隼人から威圧感を感じる。
一馬「な、なんで?なんか怒ってます?あははは、やだなーチームにとっては強味だとおも・・・」
バチンッ
隼人は一馬の頬に平手打ちを叩きつける。
一馬は何が起こったか理解が追い付かない。
隼人の目を恐る恐る見上げる。
隼人の目は少し充血し、
悲し気な表情で一馬を睨みつける。
一馬は隼人の表情をみた瞬間、
目から自然と涙が溢れていく。
一馬は膝から崩れ落ち、
隼人のズボンの裾を両手で力強く握りしめる。
一馬「あ、あ、あ、あ、ああ・・・」
気が付くと一馬は隼人の前で泣き崩れていた。
隼人は泣き崩れた一馬を見つめながら、
天井を見つめ涙を堪える。
しばらく泣き続けたが、
一馬の感情が落ち着き隼人も気持ちの整理を終えた。
隼人「叩いて悪かった。でも、聞きたくなかったのも事実だよ」
一馬「・・・・・」
隼人「君が悪いわけじゃない。君が死を軽んじてるわけでもない。ただ・・僕はこの話を聞いた以上、君を殺させるわけにはいかない」
一馬の心臓が締め付けられる。
一馬は、隼人が人一倍やさしく、
責任感があることを理解いている。
そして変電所で自害・・・自殺をした時に、
一馬に呼びかける隼人の顔と同じ顔をしている。
死に戻る事が当たり前になり、
感覚が麻痺していた事を痛感する。
隼人「死に慣れないでくれ、一馬!生きたいなら、死ぬ事を恐れろ!」
死に戻れるから、痛みが無いわけではない。
死に戻れるから、恐怖が無いわけではない。
死に戻れるから、救われるとは限らない。
隼人「いいかい一馬くん。今回は理解したが次は聞かせるな。」
隼人「僕にとってみんなの命の重さは平等で、護衛?・・・みんなも”君も”死なせる気はない!」
30回目の挑戦で、
リポイスを武器に策を講じた。
隼人はその心を
見透かすように、一馬に喝を飛ばす。
一馬は死ねばなんとかなると、
心のどこかで感じていた。
自分の死を軽んじている人間に、
他人の命が守れるとは思えない。
一馬の拳に力が入る。
一馬は隼人の目を真直ぐ見つめる。
隼人「でも、君が告白した理由も理解できる。」
一馬「いえ、いいんです。忘れて下さい。張り手、気合入ったっス!今日イチ?いや過去イチ」
隼人が妙にスッキリした、
一馬の顔を見て笑い出す。
一馬も釣られて、笑い出す。
黒羽が物陰から顔を出す。
隼人「黒羽・・・君も知ってるんだね?」
黒羽「はい」
隼人「僕は今回限りだから、君は全力で協力して・・・いや、一馬に協力しろ!命令だ」
黒羽は背筋を伸ばし、
踵を叩きつけるように足を揃える。
左胸に右拳を叩きつけ、隼人に敬礼をする。
黒羽「アイ!サー!」
一馬「あい、さーあいさーあはは、ガラじゃねーよ」
黒羽「チッ、てめ俺も横っ面叩いてやる!こい」
一馬「あー隼人さーん守って下さい。ポンコツの後輩なんとかして下さい」
黒羽「ポンコツはお前だ!お・ま・え!」
隼人「あはははは」
緊張の糸が切れそうだった一馬。
隼人の喝によって強力な糸へと変わる。
雨音が少しづつ弱くなる。
雨足と共に夜明けを迎える。
そして、新たな覚悟と共に、
36回目の護衛ミッションを駆け抜けていく。




