DAY91 狂わせるノイズ
激しい雨が、コンクリートを強く叩く。
「か…」
「かず…」
「おい、一馬っ!」
一馬「・・・・(戻ってきた)」
トーマスが不安気な表情で
一馬を見つめる。
一馬「ああ、少し考え事してた‥悪い、続けて」
一馬は何事も無かったように、
話を続けるようトーマスに促す。
トーマスは死の大地の境界線にいる
細菌学者に会いに行く。
目的は、対ゾンビワクチンを作り出す為である。
前回同様、六花だけ一言異論を唱え解散する。
一馬「黒羽か・・・」
一馬は近づく足音が誰のものか分かっていた。
黒羽「・・・一馬」
一馬「ああ、説明するよ」
黒羽は一馬の死に戻りを理解している。
しかし今回に関しては、状況が違った。
一馬も初めての状況で最初は混乱していた。
今回のこの状況で、もう8回目の挑戦になる。
黒羽「なるほど・・・8回ともお前が死ぬわけでは無いと・・?」
一馬「間違いない。だから正確には死に戻り?じゃない。なんて言うか・・・即ゲームオーバーのイベント・・」
黒羽「確信は?」
一馬「ある」
一馬がこれまでに起こった事を、
要約して黒羽に説明する。
地上まで地盤沈下で下がった12階で、
一馬に多くのゾンビが待ち構えていた。
前衛と中衛に一馬も含め隼人や瑠奈や朱華など、
視野が広く戦闘技術が広い編成で臨んでいた。
その為、疲労や怪我などはあるが、
ゾンビの群れに対して即座に対応する。
一馬は率先してゾンビと対峙する。
そこでゾンビ犬が3匹同時に、
一馬に襲い掛かる。
ここで一馬の記憶が寸断される。
黒羽「おい、殺されたんじゃないのか?」
一馬「いや、殺されると死に方の記憶は残るし・・・1日目に戻る」
黒羽「しかし、狙撃されるとか・・・死角から・・即死とか?」
一馬「ああ、俺も考えたよ・・・1回目は」
黒羽「1回目は・・・明確な原因の確信があるんだな?」
一馬はゆっくり頷く。
一馬「まず、12階で葵ちゃんが死ぬ」
黒羽の目に力が入り、
一馬の胸ぐらを両手で掴む。
黒羽「どういう事だ・・・あ?」
一馬「落ち着けよ」
黒羽「落ち着けだ!」
一馬「ああ!まだ・・・死んでいない」
一馬は黒羽の腕を掴み、
強く締め上げるように握りこむ。
黒羽は一馬の言葉を理解する。
黒羽「(まだ・・・)チッ」
一馬「・・・まず、葵ちゃんが死んでここの時間に戻される」
一馬は3回葵の死が原因でリポイスしている。
葵の死の原因は「昆虫型の異業種」
黒羽「昆虫型?」
一馬「ああ、羽根が生えた・・・蜘蛛?まぁよくわからないけど」
羽の生えた蜘蛛の大きさは、
バスケットボールぐらいの大きさ。
死角から葵を襲い、鋭い針を刺される。
数秒後、葵の全身に毒が周り絶命する。
黒羽「チッ、六花…何やってやがる」
朱華のチームで集団行動の時は、
六花が葵を護衛する形で動く。
基本黒羽は、先導する形で行動する。
一馬「そこでなぜか六花さんが俺を守る為の行動をした」
黒羽「行動をした?・・・もしかしてそれが」
一馬「ああ、一瞬だが葵ちゃんから意識を外した隙に襲われている。」
黒羽「なぜ、断言できる?」
一馬「・・・・」
一馬は「なぜ?」の理由を考える。
一馬「六花さん・・俺を守る理由無くね?」
黒羽は一馬の答えに、怪訝な表情を浮かべる。
しかし単純な回答であるが、
六花の本質を考えると納得する答えだった。
黒羽「・・・お前を優先して助ける?六花が・・・確かに、無いな」
一馬「はは、それはそれで悲しいけど・・・でも、まあ無い」
戦闘状況において、
臨機応変な対応は簡単ではない。
役割分担で対応範囲を限定する事により、
最大限のパフォーマンスを発揮する。
一馬と朱華は、直感で最適解を出すタイプ。
隼人と黒羽は膨大な知識と経験で、
視野の広い最適解を導きだす。
しかし六花はそれのどちらでもない。
器用で頭は良いが思考の柔軟性は無い。
一馬「朱華や葵を守る行動により、俺を選ばないだろ?」
黒羽「ああ、そうだな。ん?」
黒羽は話の違和感を感じとる。
一馬「違和感・・だろ?」
黒羽「・・・どういうことだ?」
一馬は違和感の説明を始める。
今回のリポイス条件は護衛ミッション。
条件は
「非戦闘員を生きてポイントまでたどり着く」
一馬「そこでキーポイントが”六花”さんだ。」
4回目で葵を救い出し、
12階屋上エリアを抜けた。
抜けた先で、誠がゾンビに襲われ殺された。
黒羽「まて、今回もお前守ってのか?」
一馬「んー正確には違う。5回・・6回観察しているうちに六花さんの意識が全て”俺”に集中していた」
黒羽「結果として一馬、お前の護衛をしていた?」
一馬「正解!」
黒羽「・・・・」
一馬「さっきも言ったけど、俺のフォローをする行動は不自然だろ?」
黒羽「ああ」
一馬「葵ちゃんの時も誠の時もトーマスの時も、意識や行動は前衛の最前線で戦っている俺の遠距離フォローだぞ?」
黒羽「確かに。六花の感情としても一馬を守る事は考えにくいし、何より最前線を遠距離フォローは意識しないとアイツには出来ない」
2人は納得するように沈黙する。
一馬も黒羽も、
六花が朱華の命令で動いていると考える。
朱華以外が六花に指示しても、
朱華の命令は六花には優先で絶対。
護衛ミッションと、
そこにノイズとして「六花」が作用する。
黒羽「どうする?」
六花は隼人の決定には案外素直に従う。
しかし、それは朱華の意向に反しない場合。
一馬「そこは単純!俺達で全力で守るしかないだろ?」
黒羽「チッ」
強く叩きつける雨音をかき消すように、
大きな稲光が走り、怒号が鳴り響く。




