DAY87 流される道と戦闘の筋
不気味な雲が痺れを切らしたように、
大粒の雨を地上へ叩きつける。
MTBを使い工場エリアを目指していたが、
激しい雨が襲い掛かり、近くの廃倉庫に避難する。
一馬と黒羽ペアと、
そして隼人と六花ペアが、
雨具を身につけて廃倉庫周囲を確認する。
一馬「なんだよこの状況…」
荒廃した土地は陥没し、
目の前の道を分断している。
真っ直ぐ進めれば1分もかからない道が、
大きな亀裂と共に高低差を生み出す。
地上に叩きつけられた雨粒は、
纏まり濁流となって強い流れの川になる。
沈んだコンクリートの上を流れ滝を作り出す。
一馬「ほんと、まるで漫画だな・・・」
黒羽「そうだな、現実のようで非現実」
一馬と黒羽は、
ライフル用のスコープを覗きながら会話をする。
雨で視界が悪く、
あまり遠くは確認できない。
黒羽「道が無いな・・・」
一馬「こっちもだ。どうする?」
黒羽は押し黙り周囲を再確認する。
黒羽「雨が上がったら徒歩で降りて行くしかないな・・」
黒羽が指さす先に陥没しているが、
元々コンクリートの建物が見える。
避難した廃倉庫からは距離があるが、
この状況でもルートが想像できる。
一馬と黒羽は踵を返し、
避難している廃倉庫へ向かう。
一馬「それよりよく痒い所に手が届くクラフトが出来たよな?」
黒羽「なんの事だ?」
一馬「MTBだよM・T・B、小ぶりだが折りたためる」
黒羽「ああ、確かに。あまり深くは考えてなかったがたぶん・・・六花が一役買っているな」
一馬「六花‥さん(殺すぞ下郎が・・・殺すぞ下郎が・・・殺すぞ・・・)あっ、嫌な記憶がこだまする。で、どういう事?」
黒羽「・・・あいつは元BMXのチャンピョンだ」
一馬「・・・・・・・BMX?えっ、自転車で飛んだり周ったりするあの?」
BMXレースは、スタートゲートが落ちた瞬間に
一気にトップスピードへ加速する“爆発”がある。
ジャンプに入ると、
ほんの一瞬だけ 体がふわっと浮きあがる。
恐怖心と判断力が必要なアクロバティックな競技。
黒羽「ああ、そうだ。朱華の影に隠れてはいるが、あいつも運動神経はとてもいい」
一馬(確かに、狂乱の血死潮でも誠や葵を守りながら殆ど怪我をしていない。)
黒羽「六花と瑠奈は、おそらく同じタイプだ。そして俺と隼人さんも」
一馬「と、言うと?」
黒羽「要するに、空間把握が速い」
一馬「状況把握では無くて?」
黒羽「空間の認識だ。距離感を把握して動く能力」
歩きながら黒羽は説明を続ける。
一馬と朱華は状況把握の処理が速く、
瞬間瞬間で、反応し環境に合わせ戦闘を組み立てる。
一方、空間把握の戦闘スタイルは、
戦う距離間を優先し戦闘を組み立てていく。
即興の戦闘スタイルと戦術あり気の戦闘スタイル。
一馬「んーでも戦いの最中そんなに考えてる?」
黒羽「なんだ、納得できないか?」
黒羽は説明を続ける。
黒羽「空間把握を得意とする戦闘において重要なのは、練習量や経験値」
一馬「練習量・・経験値・・」
黒羽「そうだ、だからこそ隼人さんは朱華に敵わなかったし、俺はお前に・・・」
一馬「えっ、俺はお前に・・・・?」
一馬が会話の続きが何か理解する。
満面の笑みを浮かべ、一馬は黒羽の肩を叩く。
黒羽「くっ、ムカつく面しやがって」
一馬「いいのいいの気にしないで、続きをどうぞ」
黒羽「チッ、要するに戦闘中の閃きには対応が追い付かない」
戦闘において瞬間で生まれる発想が、
的確であればあるほど強力である。
黒羽曰く、
六花より瑠奈の方が思考の柔軟性がある。
だから、瑠奈は六花よりも頭一つ能力が高い。
黒羽「六花は良くも悪くも頭が回る。しかし、考え過ぎる節がある・・・」
一馬は何となく理解してきた。
戦闘中において思考しながら戦うと、
判断を鈍らせる事がある。
一馬は戦闘中
あまり考えて動かないから、何となく理解する。
話しているうちに廃倉庫に到着する。
周囲を確認し、大きなシャッター横の
鉄の扉から倉庫内へ入る。
廃倉庫に入り奥へ進む。
「・・・・・・い」
一馬と黒羽は顔を見合わせる。
「・・イタ・・・」
一馬と黒羽は
G17を構え走り出す。
倉庫内にある詰所と呼ばれる、
従業員の休憩室に向かう
外からは見えないよう窓は段ボールで塞いである。
詰所の扉を挟み、一馬と黒羽は、
視線でタイミングを合わせる。
黒羽が
ドアノブに手をかけゆっくり開ける。
一馬が飛び出しG17を構える。
朱華「ほらほら、何者だあ?おい、この豚野郎が・・・」
「や、やめ、やめて・・・」
朱華「あ?なに人間の言葉喋ってるんだオラッ!」
四つん這いになった男の背中に腰掛け、
朱華が男のお尻に平手を叩き込む。
一馬「・・・・・・・おい」
「!!!・・・・一馬、助け・・・いだッ!痛いっ」
一馬「ト、トーマス?」
人間椅子になっている男は、
ジョーカーの弟で生物学者のトーマス。
一馬「お、おい!おい!朱華、やめろ、知り合いだ!知り合い!」
朱華「一馬!退屈してたんだぞ!」
バチンッ
一馬「いいからやめろ!叩くな!」
バチンッ
朱華はもう一発叩いてから、
ゆっくり立ち上がる。
トーマス「一馬あああああ」
恥辱に耐えた男が一馬に抱きつき、
大粒の涙を流し始める。
周囲の音をかき消すように、
廃倉庫を雨が叩きつける。




