DAY86 死への招待状
空は雲に覆われ、空気に周囲の匂いが溶け込む。
ガレッジでの狂乱の血死潮を終え、
初めてガレッジの先に進む。
目指す先は、死の大地との境界にあるギバー。
***(前夜)*******
隼人「みんなお疲れさま。明日からの行動の作戦とルートを共有する。一馬君・・・」
一馬「ん?はい?え?え?えーと説明お願いします。」
隼人「はは、OK。」
黒羽が地図を広げ、
誠がペンを持ち地図に書き込む準備をする。
隼人は地図を見つめながら、
現在地と目的地を指さす。
隼人「まずはガレッジから死の大地まで休まず歩いても1ヶ月程かかる計算かな。」
一馬「えー?1ケ月?ほんとっスか?って言うか、ガレッジの先が死の大地じゃないの?」
黒羽「いいや違う。エリアとして大きく分けると3つある。」
一馬「3つ・・・」
隼人「うん。まずは工業エリア、その先にギバーのある住宅エリア、そして企業や歓楽街立ち並ぶ都心エリア‥・つまり死の大地。」
誠「隼人さんや黒羽さんは死の大地を見た事は?」
隼人「僕は残念ながら・・・黒羽はあるんだよね?」
黒羽「はい、俺だけじゃ無い葵や六花や武臣・・・そして朱華に至っては始まりのエリアが住居エリアと死の大地の境界線だ。」
一馬達は驚き、朱華を見つめる。
朱華は一馬の視線に気が付き、
微笑み片目を瞑り愛想を振る。
六花はそれに気が付き一馬を睨みつける。
瑠奈は不満げな表情で一馬を見つめる。
隼人「朱華さんの印象は?」
朱華「あ?印象だと・・・」
朱華は面倒くさそうに振る舞い
あしらおうとしたが、
一馬が怪訝な表情で朱華を睨みつけている。
朱華は一馬に見られていることが
嬉しいのか、笑みを浮かべて話し始める。
朱華「厳重な境界線…破綻した世界なのに、珍しく近代的な場所だ。人も多い。」
一馬「おい、死の大地に入った事は?」
朱華「・・・あるよ当然!惚れるだろ?」
一馬「惚れるかアホ!」
六花「殺すぞ!どくされ下郎が!!」
一馬「えーーーーーーーーーーーーー」
黒羽「実際、境界線があるが入れないわけではない。」
地図に指を置き、境界線をなぞる様に動かす。
ギバーが厳重に侵入を管理していて、
物資の探索や回収で死の大地は出入りできる。
場所によっては、
忍んで出入りできる所も存在する。
一馬はトーマスとの事を思い出す。
王ヨルガンドを確認し、
瀕死の状態で戻って来た男の存在。
一馬「朱華、なんで死の大地から離れたんだ?」
朱華は考えるように首をひねる。
朱華「おもしろくないからだ!」
一馬「どういう事?」
朱華「興味がるのか?どうだ?今夜は一緒に寝ながら聴かせようか?」
一馬「寝るか!どアホ」
六花「キサマ!一馬!どくされ下賊が!殺すゾ!」
一馬「えーーーーーーーーーーー」
瑠奈が一馬の脇腹に拳を叩きつける。
一馬「うぐっ、えーーーーーーーーー」
隼人「あはははははははは、はーおもしろい。まっコントはそこまでで・・」
隼人は真剣な表情に戻る。
隼人「歩いて行くにも距離があるし、狂乱の血死潮も計算しながら動かないといけない。そこで・・・」
一馬「そこで・・・」
隼人「マウンテンバイクで移動する…」
半分寝ていた錬次が目を覚ます。
錬次が反応し、一馬と錬次は顔を見渡す。
一馬・錬次「まじっ!」
バチンッ
一馬と錬次はハイタッチをして喜ぶ。
今回の狂乱の血死潮で、
車は破壊され、多くの傭兵も死んだ。
アナログな移動手段として、
MTBを用意していた。
皮肉にも人数が減ったことで、
必要な台数は確保できた。
黒羽「MTBを使えば約半日で工業地区に入る事ができる。」
一馬の脳裏に不安がよぎる。
一馬が怪訝な表情で隼人と黒羽を見る。
隼人「そうだね。工業地区・・・地獄の1丁目だね。」
瑠奈「な、なんでなんですか?」
一馬「工業地区は大きな工場が並ぶ・・想像はできるよな?」
瑠奈「う、うん」
一馬「シンプルに・・・雇用人数、人が多い場所という事。それに比例してゾンビが多く発生している地区・・・ですよね?隼人さん」
隼人「ご明察、そのとおり。」
誠「さ、避けて通る事は・・・」
葵「出来ません。」
黒羽「ああ、この先からは妙に閉鎖的で、しかしエリアの規模は大きい。そんな場所だ。」
死の大地へ向かうには、
迂回ルートは存在しない。
黒羽「そして・・・最短ルートも存在しない。」
隼人「明日の朝、もう一度確認して出発しよう。いいかな?一馬君」
一馬「・・・・わかりました。お願いします。」
パン!
隼人が手を叩き解散の合図をする。
**********
一馬「うひゃーいいねいいね、俺のMTB最高じゃん。」
錬次「ハンマーヘッド・・・そうだ、お前はハンマーヘッドだ!」
一馬「だっっっさ!ださ!なんだよハンマーヘッド」
錬次「理解できないんだ?ふっセンス無いよね、テンちゃん」
一馬「・・・・てめっセンス無いのはお前だろ?お・ま・え」
黒羽「あの馬鹿2人テンション高いなーアホだな」
葵「ふふふふ、うらやましいんでしょ?」
黒羽「は?はあ?チッ、いいから準備するぞ」
葵「はーい」
隼人は周囲を警戒しながら、朱華に近づく。
朱華「なんだい?色男・・」
隼人「実際の所なんで離れたの?武器に関しては困らない感じの場所でしょ?」
朱華「・・・・殺されかけた」
隼人「君が・・ゾンビに?」
朱華「いや、人間だよ!」
隼人「・・・・・・」
朱華「あんたらが思ってる程、いい場所じゃ無い」
隼人「・・・肝に銘じておくよ」
朱華「一馬が危ない目にあったら私は誰であれ殺すからね」
隼人「OK、覚えておくよ」
朱華の目に灯る復讐心を、隼人は感じ取る。
湿った空気が重くなり、
少しずつ大地に濃い影を作り出す。




