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DAY85 糸と意図

狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)を乗り越え、

36日目の正午を迎える。


一馬達はガレッジ(軍用大学拠点)で、

先へ進む支度を始めていた。


狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)で誠と葵は無傷で、

誠は持っていける物資の整理をする。


葵は朱華と六花、そして武臣の治療に専念する。


武臣は錬次を守るため、

手の一部を噛みちぎられ、

軽傷とは言い難い状況。


六花はデトネーター爆風に巻き込まれ、

全身むち打ち状態で、

骨も数本ヒビが入っている。


朱華に至っては、

一馬との戦闘で受けたダメージと、

狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)での連戦で満身創痍。


朱華「おい、葵・・酒は?」

葵「朱華姉っ!ダメだからね。たまには言う事聞いて下さい。」

朱華「ふふふ、わかったわかった。」

六花「後でお持ちします」

葵「六花ちゃん!」

朱華「ふふふ」

武臣「・・・・」


満身創痍のはずが、

朱華はいつもと変わらぬ通常運転だった。


黒羽(クロウ)化け物(バケモン)か‥あんたは。」


黒羽(クロウ)は呆れるも笑みを浮かべ、

葵と視線を交わし、頷きながら部屋を出ていく。


錬次は別の空間で、

大きなイビキを掻きながら爆睡している。


錬次の全身に内出血の痕がある。

しかし目立った傷などは無く、

連戦での疲労で、夢の中にいる。


今回の戦闘で、傭兵の生き残りはいない。

それほど劣勢な状況の狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)だった。


一馬と隼人は武器の手入れをしている。


一馬は隼人の手ほどきを受けながら、

銃をバラシ、手入れをしていく。


黒羽(クロウ)が部屋に入ってくる。


視線だけ交わし、黒羽(クロウ)も武器の手入れに加わる。

3人は言葉を交わさず、黙々と手入れを進める。


黒羽(クロウ)「一馬・・」


沈黙の中黒羽(クロウ)が口を開く。


一馬「ん?」

隼人「|Transient Hypofrontalityトランジェント・ハイポフロンタリティ・・」


黒羽(クロウ)が隼人のひと言に、驚きの表情を見せる。

黒羽(クロウ)がまさに一馬に聞きたい話の内容だった。


一馬「え?え?え?ト‥トランポ、リンテテ」

黒羽(クロウ)「|Transient Hypofrontalityトランジェント・ハイポフロンタリティだ、馬鹿」


一馬「あっ!馬鹿?馬鹿って言いました?あはははは、馬鹿?温厚で優しい一馬さんが大人しくしていれば・・あっあっ沸点MAX頭に来ました。」


黒羽(クロウ)「事実だろ?馬鹿に馬鹿って言ってるだけだ。馬鹿」


一馬が武器を置き立ち上がる。


一馬「あ!あ!あー!さ、三回も?三回も?ありえない、追加の馬鹿ありがとうございます。美味しく俺の拳をお召し上がり下さいませ。ぶっ殺す!」


黒羽(クロウ)「おう!やってみろよ!返り討ちにしてやるよ」


黒羽(クロウ)も立ち上がり、お互い胸ぐらを掴みかかる。


隼人「相変わらず仲がいいね」

一馬・黒羽(クロウ)「よくない!!」

隼人「息もぴったり」

一馬・黒羽(クロウ)「合ってない!!」


隼人は2人のやり取りを、

悪戯な笑顔で見つめながら、

武器の手入れを続ける。


隼人のひと言に怒りを削がれ、

一馬と黒羽(クロウ)は手を離し腰を下ろす。


一馬「で、そのトランジェンなんとかって何ですか?」


隼人「|Transient Hypofrontalityトランジェント・ハイポフロンタリティ‥簡単に言うなら超集中状態の事だね。」


一馬「超集中・・状態」


黒羽(クロウ)「お前、今回の戦い最後まで覚えているのか?」


一馬は黒羽(クロウ)の質問の意図がわからず考える。

一馬はこれまでの戦いで、

何度か記憶していない戦いがある。


一馬「んー?ああ、もちろん。」


隼人と黒羽(クロウ)は顔を見合わせ、

頷きながら一馬の方へ向き直す。


隼人「君が黒羽(クロウ)達に合流した後、何か変わった感覚に襲われなかった?」


一馬「変わった感覚・・」


一馬は戦いの記憶を呼び覚まそうとする。

一馬は戦いの中で、視界が鮮明になり、

周囲の動きが遅く見える感覚を思い出す。


隼人「アスリート、スポーツ選手が試合で入る状態いわゆるゾーン・・・」


一馬「ゾーン・・聞いた事あります」


黒羽(クロウ)「|Transient Hypofrontalityトランジェント・ハイポフロンタリティは簡単に表現するならゾーンに入った状態だ。」


一馬は納得するように頷く。


一馬「そ、それがどうしたんですか?」

隼人「今回は、意図的に?それとも偶然?」


一馬は隼人の

質問の意図がわからず、困った顔をする。


隼人「ごめんごめん。要するに今回の超集中状態を意図的にできれば生存率が上がると思って。」


一馬「意図的に・・・超集中状態を?」

隼人「うん、その直前の事思い出せる?」


一馬は俯き考え込む。


一馬「怒り・・・疲労感・・・焦り・・・高い心拍数・・限界寸前?よく、わかりません。わかりませんが、疲れすぎて考えるのを止めた気がします。」


隼人「OK、これから暇がある時ある事を習慣化しようか」


一馬「習慣化?」


隼人「僕たちがやっても効果はあるんだけど、一馬君がやると超集中状態を意図的に作れる可能性がある」


黒羽(クロウ)「意図的に?隼人さんそんな・・・いや、アスリートもそれに近い個々のルーティンがあったな」


隼人「そういう事!手入れが終わったら少し時間を頂戴」


一馬「あ、は、はい」


隼人「損はさせないから・・ね」


笑顔で片目を閉じる。

隼人の真剣みを感じさせない軽い口調に。

一馬は困惑するも、承諾した。


今夜は、このまま

ガレッジ(軍用大学拠点)で一夜を過ごす予定だ。

少しづつ太陽は水平線へと近づいていく。

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