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DAY80 記憶に映る赤い影

赤い月に照らされてた影がうごめく。

唸り声と、ありとあらゆる障害物にぶつかる音。


一馬は迷路の様なガレッジ(軍用大学拠点)を移動する。

予め決めておいた合流ポイントに行くには、

状況的に屋上を目指すしかなかった。


上に行くほど、ゾンビは手薄くなるが、

遠目に確認できる鳥の異常行動に、足が止まる。


一馬「窓に向かって特攻?」


統制の取れた群れの行動に違和感を覚える。

しかし自然界の鳥でも、

綺麗に並び飛ぶ群れを見た事がある。


一馬は雑念を払うように小さく首を振る。

長い通路を、足早に、それでいて慎重に進んだ。

屋上への階段を上がり鉄の扉のノブを回す。


カチッ


一馬「!」


一馬は反射的に身構える。


隼人「おっ、一馬君か。」

一馬「は、隼人さん!」


一馬も隼人も警戒態勢を解き、歩み寄る。


一馬「隼人さん、みんなは?」

隼人「うん、とりあえず黒羽(クロウ)を瑠奈ちゃん達の元へ行かせた。僕は…君たちと合流しようと思ったけど…あは、一馬君もはぐれたみたいだね。」


隼人は子供のように無邪気に振る舞う。

一馬はその表情に何度も救われていた。


一馬「当たりです。僕も…」


ドン!ドン!…ドン!


一馬が話しかけたその時、

屋上の反対の出入口の鉄の扉から、

激しい衝突音が聞こえる。


一馬と隼人は自然に背中合わせになり、

その場でゆっくり回りながら周囲の警戒を始める。


隼人が一馬にマシンガンMP5のマガジンと、

G17(グロック)のマガジンの予備を渡す。

背中合わせで受け取り、

一馬は予備のマガジンをマガジンホルダーにセットする。


ドォーーーーン


鈍く大きな音と共に、

鉄の塊がはじけ飛ぶ。


扉の出入り口よりも大きな体が、

窮屈そうに屋上へ出てくる。


隼人「なに?あれ」

一馬「で…スね、はは」


一馬が出会った中でも、一段と育ちのいい、

個体名「ブルート」が顔を覗かせ現れた。


ブルートの後を着いてきたゾンビが走り出す。

しかしブルートが、

ゾンビの頭を鷲掴みにし、頭蓋を握り潰す。


そして、一馬達に向かい振りかぶり、

ゾンビが勢いよく投げ飛ばされる。


一馬も隼人も既に臨戦態勢に入っている。


隼人「こんな時になんだけど…」

一馬「なんですか?」

隼人「いや、なんとなく…安心して背中を任せられるなぁーって…。」

一馬「どうしてっスか?」

隼人「こうして窮地で戦うの…初めてじゃない気が、ね。」


一馬の胸が熱くなる。

目頭が熱くなり力が入る。


一馬「なに言ってるんですか。」

隼人「だね…行こうか。」


2人の思考は、静かに沈み、

周囲の音は少しずつ絞られていく。

一馬と隼人は背中を合わせ、弾ませる。


投げられたゾンビは地面に無残に転がる。

ブルートを挟むように左右に広がる一馬と隼人。


ダダダダダダダダダダダ

ダダダダダダダダダダ


打ち合わせたかのように、

ブルートの影に隠れる

ゾンビの群れに2人は弾丸を打ち込む。


一馬はG17(グロック)に持ち替え、

隼人はブルートの後方に回る様に動く。


一馬はブルートに攻撃を仕掛ける。

ブルートは一馬に向かい、

目の前のゾンビを叩きつける。


一馬は頭一つ分の位置で動きを止め、

”ゾンビソード”を躱す。


ドンッドンッドンッドンッ


地面に叩きつけると同時に、

ブルートの上半身に弾丸を打ち込む。

ブルートは左手で頭部を庇い、

致命傷を避けようとする。


大きくなった個体の強度は高い。

弾丸は筋肉の表面を傷つけただけに見える。

隼人は向きを変え、

ブルートの方に銃口を向ける。


ダダダダダダダダダダダ


ブルートの右膝を、

後ろから集中的に銃弾の雨を浴びせる。

ブルートの右膝は破壊され、体勢を崩す。


一馬は既に左側に回り込み、

ブルートの近くまで接近している。


ブルートは左手で抵抗しようとした瞬間…

ブルートの左腕が天高く跳ね上がり、重く落ちる。

一馬はボウイナイフに持ち替え、

ブルートの左腕を切り落とした。


流れるように出入口のゾンビの方へ走り出す。

ボウイナイフを収め、

マシンガンMP5に持ち替える。


ダダダダダダダダダダダ

ダダダダダダダダダ


隼人は一馬と入れ替わる様に、

ブルートに接近する。


ダダダダダダダダダ

ダダダダダ


近づきながらブルートの背面から、

右肩に集中砲火する。

ブルートは変異体とはいえ、

身体の構造は人間と何も変わらない。


拮抗する筋肉がズタズタに切り裂かれれば、

強靭な筋肉は、大きな肉の塊になる。

隼人は肉の塊と化した右手を確認し、

G17(グロック)とサバイバルナイフに持ち替える。


ブルートは肉の塊を引きずりながら

隼人の方へ振り向き大きく口を開ける。

隼人は銃口を口にねじ込む。


ドンッドンドンッ

ザクッ


首元の脊柱側から

骨ごとナイフを突き刺し、電気信号を遮断する。

口に押し込んだ銃を抜き取り、

一馬の方に銃口を向ける。


ドンッドン


一馬「おわっ」


一馬の目の前でゾンビが倒れ込む。


隼人「ごめん」

一馬「はは、びっくりしました。」


2人は警戒態勢を解かず、

周囲を観察する。


ドンドン…


ゾンビ鷲の頭を隼人が打ち抜く。


バサバサバサバサバサバサ

バサバサバサバサバサバサ

バサバサバサバサバサバサバサバサ


一馬「やばい!」


一馬が道中で見た、

ゾンビ鳥の群れが臨戦態勢に入っている。


2人は出入口に向かい走りだす。


ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド


隼人「うわあーやばいね」

一馬「確かに…」


出入口に避難したが、

目的のポイントは階段を降りた位置には無い。


隼人「覚悟を決めるかな…」

一馬「ですね…」


2人は一斉に外へ飛び出す。

上から見下ろす

ガレッジ(軍用大学拠点)は、色々な凹凸が道になる。


激しくうごめく鳥の群れが、

赤く黒い影を落とす。

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