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DAY78 赤く照らされた黒い影

続く爆発の衝撃に瑠奈と武臣の警戒心が上がる。


誠は相変わらずそわそわしている。

その一方で、葵は落ち着いた様子で周囲に注意を払っていた。


瑠奈「来た!お願いします。」


瑠奈は武臣と目を合わせ、

武臣は頷き、2人は動き出す。


瑠奈は襲い掛かるゾンビ群れを、軽快に躱す。

背後に回り、頭をナイフで一突き。

1体を倒した矢先、

瑠奈の背後を襲うゾンビ。


瑠奈は咄嗟に身を低くし膝を着く。

器用に足を動かし、

塩化ビニル樹脂の床を滑るように移動する。


ゾンビの脚を取り、転倒させる。

持ち上げる動作をしながら立ち上がり、

3体目のゾンビにナイフを叩きつける。


胸を刺し、返す刀で頭を一撃。

武臣はゾンビとの乱戦の中、

視界の端に映る瑠奈を追いかける。


武臣はゾンビと対峙する瑠奈を、

なぜか懐かしむように見つめる。

武臣に映る瑠奈の動きは、

朱華に格闘技術を教えてた頃と重なる。


武臣は感心しながら、瑠奈の援護を始める。

武臣は瑠奈がこぼしたゾンビを掃除していく。


瑠奈は武臣の動きを感じ取り、ギアを一段上げる。

壁を使い通路を立体的に広く動く。

柔らかい股関節に軽快な動き。


武臣はますます関心と高揚感を感じる。

朱華が成長していく姿は、

武臣にとっては、唯一の楽しみであった。


瑠奈自身も

朱華の戦い方を見て、感じ取っていた。

朱華は瑠奈にとっては、

完成された戦闘モデルであった。


武臣の援護のおかげで、

瑠奈の意識から雑音が消える……。


瑠奈は今、

音の聞こえない世界を歩く。

ゾンビの姿よりも、

ガレッジ(軍用大学拠点)廊下の空間だけ大きく見える。


空間の裂け目を縫うように動くと、

不思議とゾンビが無防備な姿をさらす。


ザッ

ザクッザクッ

バッどん!

ザクッ………


葵「ふわぁー瑠奈ちゃん、すごい。」

誠「う、うん。僕が生きているのも瑠奈ちゃんのおかげだからね。」


瑠奈は空間を、

踊る様に流れるように動き回る。

瑠奈の視界の端に大きな影が映る。


影に反応しナイフで影を刺す。

寸での所で腕を掴まれ、ナイフを止められる。


瑠奈「あっ」

武臣「……OKだ。」

瑠奈「…あっすい、ハアハアハアハア」


瑠奈の心臓がいきなり激しく暴れ出す。

瑠奈は膝から崩れ、

咳き込みながら息を整える。


葵「る、瑠奈ちゃん!」


葵が瑠奈に駆け寄り背中を摩る。


瑠奈「あ、ありがとうござ…ゴホゴホ」

葵「強いね瑠奈ちゃん。あたし瑠奈ちゃんのファンになっちゃった。」

瑠奈「えっ」


瑠奈は葵の突拍子もないひと言に困惑する。

緊迫する状況で葵の天然も爆発していた。


葵「立てる?」

瑠奈「あっ、は、はい。ありがとうございます。」

葵「ふふふふ」

黒羽(クロウ)「葵!武臣!」


黒羽(クロウ)が瑠奈たちに合流する。

黒羽(クロウ)に抱えられる六花が葵の目に映った。


葵「六花ちゃん!」


葵は六花に駆け寄り六花の体を支える。

武臣も六花に近づき、

六花を抱え、体を持ち上げる。


瑠奈たちはルーム内に入り、

六花の手当てをする。


爆発に巻き込まれはしたが、

六花は打撲と脳震盪ぐらいだった。


爆発の最も怖い物は、

爆発時に飛散する金属破片である。

簡単に皮膚と筋肉を裂き、

内臓深くまで突き刺さる。


手足が無事でも、

内臓に刺さった複数の破片は、

確実に死への航海を始める。


葵は六花に鼻に

アンモニアの瓶を数回くぐらせる。


六花「んっ!」


六花の意識が戻る。

六花は体を起こしながら周囲を確認する。


武臣はルームの外で警戒をしている。


六花「葵…」

葵「よかった。」

黒羽(クロウ)「おい、話は後だ。ここを出て一馬たちと合流する。瑠奈は武臣と3人の警護だ。俺が先導していく。瑠奈は左右、いいなっ!」


六花「私も戦える。」

黒羽(クロウ)「ああ」


黒羽(クロウ)が武臣に近づき、

現状と作戦を説明する。


黒羽(クロウ)「いくぞ」


瑠奈は水筒の水をひと口飲み、銃を構える。

六花も手首のバンテージを強めに巻き、

銃のグリップを握り直す。


黒羽(クロウ)が先導し進んだ先に、

ゾンビの姿が見える。

脆くなった隙間から、

詰まる様にゾンビが押し寄せている。


ダンダンダンダン


隙間でゾンビの栓をして、

黒羽(クロウ)は先へ進む。


黒羽(クロウ)「外のゾンビは無視しろっ!弾を極力温存しろ!」


全員が頷く。

1階から2階に上がると、

大きな塊が突然、飛び込んでくる。


黒羽(クロウ)(ゾンビ鷲…)


ダンダン


黒羽(クロウ)はゾンビ鷲の頭を正確に打ち抜き、

ゾンビ鷲は重力に引き付けられるように重く落下する。


瑠奈「えっ?何この大きさ?」

黒羽(クロウ)「(嫌な予感がする)…イイから行くぞ!」


黒羽(クロウ)の嫌な予感が的中する。

外から鳥の群れが、

ガレッジ(軍用大学拠点)に向かい一直線に飛んでくる。


黒羽(クロウ)「伏せろおおお!」


全員が身を伏せる、その瞬間。


ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド


スコールのように、

ゾンビ鳥の大群が窓から窓へと通り過ぎる。

広い範囲に広がる、統制の取れたゾンビ鳥の特攻。


割れるガラス窓に、

飛び散る破片で皮膚が切りつけられる。

音が途切れ、豪雨が過ぎ去る。


黒羽(クロウ)「走れえええ」


全員立ち上がり、通路を駆け抜ける。


ぎゃあああああああ


悲鳴のように叫ぶゾンビ鷲が、追いかけてくる。


ダンダン


黒羽(クロウ)は、

後方に銃口を向けゾンビ鷲を落とす。

黒羽(クロウ)は何事も無かったように走り出す。


空からまた大きな黒い影が接近してきている。


黒羽(クロウ)「来るぞ!伏せろ」


全員が伏せると同時に第2派が降り注ぐ。


ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド

ドドドドドドドドド


圧倒的な数で激しく建物内を打ち付けてくる。


誠「うわあ」


割れた窓からスキャヴァーが入り込んでくる。

瑠奈と六花は、

スキャヴァーに弾丸を叩きこむ。


武臣も怪力に物を言わせて、

スキャヴァーを叩きつける。


黒羽(クロウ)「走れえええええ」


赤い月に照らされた黒い影が、空を泳ぐ。

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