DAY75 静かな共有、騒がしい夜
夜の闇が深くなっていく。
それぞれ仮眠をとる為に一時解散する。
ガレッジは強固な檻の様な状態で、
最低限の安全は確保されている。
一馬は隼人と黒羽に合流する。
隼人「おっ来た来た。どう、大丈夫?」
一馬「あ、はい。問題ありません。」
一馬は黒羽に、目を合わせ頷く。
黒羽も視線を合わせ軽く頷く。
隼人「それで一馬君…話があるんでしょ?あっそうそう僕、隼人って言います。宜しくね。」
一馬「あ、はい。宜しくお願いします。一馬っス。」
一馬と隼人は握手を交わす。
一馬は当然、
事情を理解している黒羽の存在もあって、
隼人とのやり取りに複雑な気分になる。
黒羽「一馬、始めよう。」
一馬「お、おう。」
一馬はスマホを取り出しクラフトアプリを立ち上げる。
そして画面を隼人に見せながら説明を始める。
一馬「まず、クラフトアプリはご存じだと思います。隼人さんも黒羽もよく使う便利?系アプリ…」
クラフトアプリは素材をカメラに写す事により、
素材に沿った道具や武器が、
単純な物から複雑な物まで作れる。
しかし個人の現実世界で培った、
経験と特性によって、作れる物に違いが出る。
バリエーションは、
本のQRを読みこませると増えるが、
それでも経験と特性の域は出ない。
一馬「たぶん、ここまでは隼人さんも認識してると思います。」
隼人「うん、理解しているよ。続けて…」
一馬「はい」
【出来る事】
・道具や武器の生成
・素材から素材や材料の生成
・音声認識の簡易生成
【出来ない事】
・道具や武器の修理
・素材よりも大きすぎる物
・食料品に関わる物
・液体やオイルなど
・複雑な構造の物は音声生成不可
隼人「そうだね、チートな機能だとは思うけど極端な法則無視が出来ない使用だよね。それでも現実的にあり得ない機能ではあるけど…。」
一馬「はい、ここで本題です。僕の想定…予想ですが、隼人さんと黒羽のクラフトアプリは2人でひとつでは?…と考えてます。」
隼人「どういう事?」
一馬は隼人と黒羽にクラフトアプリを開かせる。
理解しやすいように
弾丸の制作するリストを2人に確認してもらう。
黒羽のクラフト出来る”9mm”は50個に対し、
隼人は100個クラフト可能。
次に確認させたのは、
”センサー起爆式爆弾”どちらも5個までが上限。
隼人「うん、この辺りは個人の誤差の範囲じゃないのかな?」
一馬「はい、次に見て欲しいのは、そこに必要な素材を確認して黒羽と見比べて下さい。」
必要素材は同じだが必要コストに違いがあった。
隼人「なるほど…素材クラフトの必要量に大きな違いがあるね。」
一馬「はい、隼人さんは素材コストが安く一回で作れる量が多い…それに対して黒羽の方は完成品のクラフト時間が隼人さんより約半分の時間で完成します。」
一馬はスマホの
クラフト量と時間の部分を指で示す。
一馬「ここも重要です。電子…ここに関しては隼人さんしか作れない。正確には最小限の素材から量産できるのは隼人さんだけです。」
黒羽「確かに、俺の場合は根本的電子の素材は作れないからな…。」
一馬は自身のスマホ画面を隼人に確認させる。
一馬のクラフトコストは2人以上に高い。
作れる武器の種類も少なく、
電子素材に関しては皆無である。
隼人は頷きながら納得する態度を示す。
隼人「要するに、これからより凄惨な状況になる事が想定され、且つより戦略が必要だと言う事だよね?」
一馬「はい、僕はコイツ(黒羽)の持っている”焼夷弾”のクラフトに助けられました。そして…」
3つのスマホを近づけて
置いておくと不思議な現象が起こる。
一馬のアプリに”焼夷弾”が追加された。
一馬の”焼夷弾”はクラフトコストが高い。
しかし本人の能力に関係なくクラフト可能になる。
隼人「へー知らなかったなー。ハード系は得意な方だったんだけど…。」
一馬「僕も気づいたのは、黒羽達と離れてしばらくしてからです。リストから消えていたんで焦りました。」
黒羽は一馬に視線を向け、
不敵に笑みを浮かべ頷く。
一馬はそれに対し、黒羽を睨みつける。
隼人「仲が良いね」
一馬・黒羽「良くない!!」
隼人はクスクス笑いながら鞄からウィスキー瓶を取り出す。
一馬・黒羽「ゴク!!」
隼人「ははははは、とりあえず呑まない?」
隼人は瓶のまま、ひと口含み瓶を回す。
黒羽もひと口含み一馬に渡す。
一馬はお酒を口に含みながら、
隼人と黒羽のやり取りを静観する。
隼人「ところで、錬次君とはいつから友達なの?」
一馬「ん~小さい時の幼馴染です。途中でアイツ転校したんでココの世界で久しぶりに会った感じですね。」
隼人「えっ?軽く10年以上会ってないのに良く分かったね?」
一馬「(ドキ)えっあ~何となく。」
黒羽「(馬鹿野郎…)さすが記憶力だ!け!は!良いな…はは」
一馬「んだとコラッ!またボコるぞ」
黒羽「あームカついた!今のはムカついた返り討ちにしてやるよ!」
2人が立ち上がり、
同時に足元がふらつき、二人そろって崩れた。
隼人「あはははは、確かに。一馬君の記憶力なら気づくかもね。」
隼人は都合よく解釈してくれたので、
一馬は内心ホッとした。
「テンちゃん…」
一馬の背後から大きな気配が漂う。
錬次が一馬の後ろに仁王立ちしている。
一馬「あっ、お、おう。」
錬次「なんでだよ!なんで俺を誘わないんだよ。しかも酒とかズルだろぉ」
子供のように叫ぶ錬次に、
ウィスキー瓶をそっと渡す。
錬次「うほぉー酒なんて久しぶり…ゴクゴクゴク」
一馬「お、おい」
錬次「ゴクゴク…ぷはー」
一馬「あー全部飲みやがった。」
黒羽「おい、てめぇー」
錬次がゆらゆら首を振り始める。
バタンッ
一馬「は?」
黒羽「あ?」
隼人「あちゃー錬次君お酒は好きなんだけど、弱いんだよね」
黒羽「デカい図体の割に…」
あと数時間で夜が明ける。
狂乱の血死潮の気配はまだ無い。




