DAY63 収束する意思と牙
夜と朝の境界線が無くなり、
強く暖かな陽射しが辺り照らす。
(退屈だ…)
気怠い体を起こし差し込む光に視線を向ける。
光に照らされる
空中の埃を眺めながら空虚な気分になる。
六花「朱華様…」
朱華は振り向かず
光と埃の粒を眺めながら手を伸ばす。
六花は近づき慣れた手つきで、
絹のローブの袖を朱華の腕へ通す。
前に回り、腰紐を丁寧に結び
立ち上がろうとした瞬間…
六花「あっ」
朱華が六花の腕を引っ張り、
ベットへ押し倒す。
朱華は六花の上に覆いかぶさり、
六花の眼を鋭く見つめる。
朱華は長く艶やかな髪を垂らし
片手で六花の体をなぞる様に弄る。
朱華は六花の唇に顔を近づけ
それを六花は受け入れるが…
朱華は興味を失ったかのように、
六花から離れ立ち上がる。
テーブルのワインボトルを手に取り、
喉の渇きを潤す。
六花はベットで座りながら
余韻に浸り朱華を目で追っている。
六花「……」
朱華「六花ッ報告を!」
六花のスイッチが切り替わる。
ベットから立ち上がり
身なりを整え狂乱の血死潮の報告をする。
六花が報告を始めようとした瞬間
スマホの災害用アラートが一斉に鳴り響く。
六花は慌ててスマホの画面を確認する。
朱華はテーブルの
スマホを見下ろすように眺めている。
朱華「王…ヨルガンド……」
六花「朱華様…」
朱華「あーはははははははははははは…」
六花が何かを言おうとしたが、
朱華が突然大声で笑い始める。
歓喜に満ちた表情を浮かべる朱華は、
ワインボトルの中身を飲み干す。
朱華「六花…全員集めろッ」
六花「はい」
**********
朱華の拠点は
かつて裕福であったであろう住民の豪邸だった廃屋。
豪邸の周囲には堀が設けられ、
堀には木製スパイクをいくつも並べられている。
堀を飛び超えても侵入出来ないよう、
薄い鉄板で補強した背の高い柵で拠点を囲む。
柵には有刺鉄線で作ったネズミ返しに、
複数地雷を配置している。
野外用紫外線ライトで出入口を照らし、
侵入導線は跳ね橋のように昇降開閉式。
ガソリン式発電機を使い、
生活と防衛を一気に引き上げている。
朱華の邸宅の一階に
大き目の食卓があり現在は会議室として使われる。
大きな卓は除かれており、
ラグジュアリーで古風な椅子が置いてある。
椅子に深く腰掛ける朱華の右には六花、
そして左後ろに”武臣”が立っている。
食堂に黒羽と葵が現れる。
六花「二人ともお帰り。葵…大丈夫だった?」
葵「うん。朱華姉…BOSS戻りました。」
朱華は葵に視線を向け軽く微笑む。
黒羽に鋭い視線を向け直す。
朱華「……報告を。」
黒羽と葵は
主に物資補充と調査を担っている。
黒羽は今回の周囲の変化と
近況を淡々と説明していく。
・狂乱の血死潮のゾンビの変化
・周辺物資の枯渇
・北から大群のゾンビ
・他諸々…
朱華が手を上げ黒羽の話を制止する。
朱華「大群の群れだと…北から…」
黒羽「ああ、そうだ北だ。
統率感が見て取れた。」
葵「う、うん。
あんなまとまったゾンビ見た事ないかも」
六花「北…朱華様。」
朱華は頬杖をつきながら考えこむ。
朱華「死の大地…か…
黒羽お前の考えは…。」
黒羽「…ヨルガンドの出現ポイント
…そしてさっきの災害アラート…ほぼ間違いない。」
朱華「武臣ッ!部下たちに撤去準備をさせろ!
六花と葵は物資の調整を…黒羽はルートを確認…これから王討伐に向けて北へ移動を開始する。目的地は死の大地の手前にある元軍が拠点にしていたガレッジ!いいなっ」
六花「朱華様…」
朱華「なんだ不安か?」
六花「いえ…葵っ行こう!」
武臣は早々に踵を返し外へ向かい、
黒羽は葵と六花を見送り部屋を出ていく。
人の気配が無くなり静まり返る。
朱華「王…ヨルガンド…
どちらがこの世界の王かわからせてやる。」
退屈な毎日が変わる喜びを
嚙みしめながら朱華は歓喜していた。
**********
隼人「準備できたかな?」
瑠奈、誠、錬次そして隼人…
4人は災害アラート後、
北のギバーへ向かっていた。
ギバーは大小合わせて複数あり、
今回は小さいギバーで物資の補充をしていた。
瑠奈「ちょっと早くしなさいよっ!」
錬次「んッ?ふぇ?」
錬次は焼いた串焼き肉を頬張っている。
誠「はい、清算ね。錬次君行こうよ!」
錬次「マコちんは食べないのかよ…うまいぞ。」
誠「後で食べるよ。包んでもらったから。」
隼人はその光景を横目に地図を確認する。
隼人「ガレッジ…」
隼人はこの世界に来て、
ひとり情報収取をしながら旅を続けていた。
隼人「死の大地…瑠奈ちゃんは聞いたことある?」
瑠奈は質問に考え首を横に振る。
”死の大地”は別名、
”始まりの大地”とも呼ばれている。
大都市化された街に陸空海と
インフラが整ったいわゆる近代都市。
静かに生活をしていく為の土地では無い。
世界各国から人を集め、
お金を集める為の経済都市。
かつては24時間明りが付いている
眠らない街…高層ビルに商業施設にカジノ。
そして経済都市を囲むように、人が生活をする。
人々は居住を構え
生活のため経済都市に足を運ぶ。
需要と供給が集まった
都市と周辺の人口密度は計り知れない。
感染者とゾンビの被害が
初めて出た土地が”死の大地”と言われる。
死の大地の玄関口に
大型のガレッジが存在している。
実際に軍が介入しガレッジに
軍施設を設置して対応していた
唯一の場所でもある。
今は死の大地に入る事は
出来ないようになっている。
パンデミックが起こり
軍が総力を掛け都市を封鎖する事になる。
分厚い鉄板で作られたコンテナを高く積み上げ
何百キロもの距離を埋め尽くし壁を作った。
今では軍も崩壊しており、
ガレッジを抜けた先に
”グレゴール”のギバーがある。
”グレゴール”は作戦に参加した
元軍人で死の大地の監視をしている。
隼人「抜けるしかないよね…」
瑠奈「隼人さん…どうかしました?」
隼人「うん。やっぱり予想通り
ガレッジを抜けるしかないね…」
瑠奈「決断は任せます。」
隼人「…いこう。
日が暮れる前には到着しておきたい。」
瑠奈「誠!錬次!錬次?いくよ」
隼人はニヤリと笑みを浮かべ歩きはじめる。
その後を瑠奈と誠そして錬次が続いて歩く。
空気は湿気を纏い
雨雲が空を覆いつくし
雷鳴が産声を上げる。




