DAY56 悪縁と赤き夜
少し日が傾き始める。
影が色づき始める準備を始めている。
黒羽「葵、ガソリンを入れろ。」
トプン…トプ、トプトプトプ
ギギギ…
シュルルン…
ギギギ…
シュルルン…
黒羽「おいっしっかりしろ!」
一馬「うるせーよ!働いているのは俺だろ?お前は口しか開いてないんじゃないですかねぇー…だまってろよ」
葵「一馬、ごめんね。無視していいよ」
黒羽「あおっ…チッ!」
一馬「さすが葵ッ!一馬!力が湧いてきました」
一馬はリコイルスターター(手動スターター)の
ハンドルを勢いよく引っ張る。
それにより、
吸気された空気が圧縮し点火する。
ドゥル…ドゥルドゥル…ド
ドドドドドドドド
ドドドドドドド…
”ガソリン式発電機”が
活動を始める。
一馬「よし、それより黒羽
アレ間に合いそうか?」
黒羽「ああ、あと10分もすれば完成する。」
葵「これで発電機も使えるし…次は…」
**********
時間は数時間前に遡る。
空気が一段と冷え込んでくる。
一馬と黒羽と葵は、
移動の準備を行う。
まだ、辺りは夜と朝の境目も、見えてこない。
移動先は繁華街の中にモーテル。
2階建て全20部屋、
中央にバーベキュー空間、コの字型のモーテル。
黒羽「とりあえず、
移動しながら廃材を回収する。」
一馬「ああ、大きくなくてもいいんだよな?」
黒羽「そうだ。大きさは大して意味は無い。」
葵「クラフトアプリでスキャンすれば簡単だよ」
一馬「うんうんオーケー」
黒羽「チッ、何がOKだ…」
狂乱の血死潮の日は、
基本的にゾンビ共が少なく、
あまり活動的ではない。
しかしいないわけでは無い。
だから、警戒は緩める事は出来ない。
一馬達が集めているのは、
廃材に含まれる金属。
繁華街の周りはスクラップの残骸だらけ。
今回の唯一の幸運は、
機械部品の残骸が多くある事。
機械部品には重金属…
いわば有害な金属が多く使われている。
実際は安全基準で
使われなくなった金属もあるが、
ここでは簡単に入手できる。
一馬「水銀…水銀…
白くて軽い…白くて…金属片…
あっこれマグネシウム多いなイイね」
一馬達が今回の作戦には、
大きなデメリットを抱えている。
”黒羽”の戦力が、
怪我の為半減している事と、
”葵”は非戦闘員だという事。
今回の狂乱の血死潮は、一馬が戦闘中心の作戦。
ただし黒羽の提案で、
土地の利を活かして戦う作戦を立てた。
黒羽「出来ればアルミニウムも回収してくれ。」
一馬「ああ、わかった。」
拾ったキャリーバックに廃材を詰めて、
モーテルへ戻るを繰り返す。
一馬「重っ……」
黒羽「とりあえず、
モーテルのゾンビをやるゾ」
一馬「オーライ…よし!
ここは大丈夫…葵はココから出ないで。」
葵「…うん」
一馬「いくぞっ」
**********
黒羽「配線を繋いでくれ…」
一馬は黒羽の指示に従い、
ライトに配線を繋げる。
一馬「スイッチをれて見てくれ…」
黒羽は
ガソリン式発電機に
繋いであるスイッチをONにする。
ジジジ…
設置した野外用ライトが発光し始める。
黒羽「これを付けろ」
一馬「これは…」
一馬は黒羽から
UV(紫外線)ゴーグルを渡される。
今回の作戦ひとつ
水銀を集めて作った
強力な紫外線を放つ
”UV(紫外線)ライト”である。
黒羽は変色ウォーカーを
”汚染ゾンビ”と呼んでいる。
汚染ゾンビが苦手なものに
太陽光に含まれる
”UV(紫外線)”があると説明する。
沢山の”UVライト”は用意できないが、
コの字型のモーテルを利用して、
侵入誘導線に配置する。
屋外設置用の”UV(紫外線)”は、
”UV-C”と呼ばれる波長が短いが、
人体にも害がでるレベルの強力なライト。
UV(紫外線)ゴーグル無しでは
今回の戦闘は続けていけないと説明される。
屋外設置用の”UV(紫外線)”は、
黒羽しかクラフトできなかった。
一馬もハンドガンに
取り付け可能な”UVライト”を作った。
しかし一馬のUVライトは
UV-Aという非常に弱い紫外線しか出ない。
一馬は嫉妬でとても憤慨したが、
黒羽曰く、
それでも効果があると説明を受けホッとする。
作戦の2つ目は”焼夷弾”。
弾の先に十字に溝を切った、
”ホローポイント弾”が大量に必要だった。
深夜からモーテルの移動まで、
”焼夷弾”用の薬莢を
3人で手分けしてアプリで生成していた。
一馬はいつも生成コストが
低い物しか作っていなかったので
予想以上の長い完成時間に驚いた。
”焼夷弾”は
薬莢から揃えないと作れないと説明された。
・薬莢
・マグネシウム
・アルミニウム
・鉛と火薬
黒羽の
クラフト出来るリストを見ると、
一馬の中二病心を擽るアイテムでいっぱいで、
一馬は内心、穏やかではなかった。
葵は2人の様子を横目に、
モーテルの補強をしている。
1階の部屋の窓は全て塞いで、
出来る限り侵入経路を限定する。
狂乱の血死潮では
お馴染みの基本戦略。
準備が終わった頃には、日が沈んでいた。
黒羽「おい、装備のチェックするぞ。」
一馬「ああ、葵…なんか食べるものある?」
葵「あっうん。ちょっと待ってて。」
黒羽と一馬は目の前に並べられた
”焼夷弾”と通常弾と”ボウイナイフ”。
一馬「これは…」
黒羽「”ボウイナイフ”…
アメリカ製のコンバットナイフだ。」
一馬(なっなんてカッコいいナイフ!この小憎らしい奴の事、一瞬好きになりかけてしまった。俺のわくわくが止まらない新武器のオンパレードぉぉぉぉ”ボウイナイフ”に”焼夷弾”。”焼夷弾”なんて某ゲームでしかお会いしてませんよぉ遂に遂に俺が使う日がくるとわぁぁぁぁって言うかお前のクラフトリスト反則級でムカつくんですがぁぁぁ)
一馬は何とも言えない
目つきと表情で黒羽を見ている。
黒羽「なっなんだよ!?」
一馬「なんでも…」
黒羽「チッ続けるぞ…」
時間が刻一刻と立っていく。
3人は小腹を満たし、
一馬は外に出て、辺りを見回している。
日は沈んでいるはずなのに、
辺りは暗くなっていかず赤みを帯びている。
顔回りにUVクリームを塗る。
出来る限り皮膚が
露出しないように布を巻き付ける。
一馬は足のプットゥ(レッグラップ)を
巻きなおして準備を整える。
黒羽と葵は
2階のモーテル入口の角部屋で待機をする。
黒羽は怪我で大きく動けない。
今回、黒羽は
角部屋の窓から
遠距離狙撃で一馬を援護し、
葵が黒羽の遠距離狙撃をサポートをする。
それぞれが淡々と準備を進める。
葵「一馬、スイッチ入れるよ」
一馬は手を上げて合図する。
一斉にUVライトが点灯し、
辺りが一段と明るくなる。
一馬はUVゴーグルを掛け直し、
ゆっくり深呼吸を始め集中力を高めて行く。
赤い月の光が
雲を更に赤く染め
夜とは思えない明るさを演出する。
狂乱の血死潮の幕が上がっていく。




