DAY55 おひとよしと悪縁
急なスコール音が聞こえてくる。
今の一馬にとって、
とても意外な状況に身を置いている。
「痛いからね…」
「ぐっ!がぁぁぁぁ……はぁはぁはぁ」
一馬(なんで?なんで?こんな状況に?…なんで?)
「クソッ…」
「自業自得だよ」
「うるさいっ痛ッッッ」
バラック住居を抜けると
既に死んだ夜の繁華街が広がる。
貧民街の娯楽商業施設が集中している。
高層の建物はほとんど無く、
有るのは2階建ての飲食店が並ぶ街。
唯一高層の建物は
ホテルでそこの1室でなぜか、
黒羽と葵と3人で光を囲んでいる。
**( 数時間前 )********
ドンッ!
ドンッ!!
ドンッ!!!
一馬は黒羽に、
銃口を向け殺すつもりで構えていた。
気が付くと周囲には
色が変色したウォーカーの群れに囲まれていた。
反射的に銃口を、
変色ウォーカーに向け撃ちだす。
しかし変色ウォーカーは、
撃たれてもそのまま向かってくる。
一馬「えっ!?硬ッ?硬ッ?」
ドンッ!
黒羽「どうした!早く殺せ!」
黒羽は、
自分を撃たない一馬に苛立ちを隠せない。
一馬「うるせー!黙れ今は黙れ!って言うか、立て立てさっさと立て逃げるぞ!」
黒羽「ぁあ?」
一馬「走り抜けるぞ!先いけー」
黒羽「チッ」
黒羽の眼は、
怒りに満ちてはいたが、
状況を理解したのか立ち上がり走り出す。
黒羽の背後から、
追いかけるように一馬が走り出す。
黒羽は負傷した手で、
器用にハンドガンの弾を変色ゾンビに当てる。
一馬は援護するように
黒羽から奪った、
スナイパーライフルで応戦する…が。
カチッ…カチカチ
一馬がハンドガンに素早く持ち替え、
変色ゾンビに弾を撃ちこむ。
バラック住居を抜けると、
整った道が足元に広がっている。
気が付くと、
変色ウォーカーもいなくなっており、
一馬と黒羽は足を止めている。
一馬・黒羽「はぁはぁはぁはぁはぁ」
お互いの眼が合い、
反射的に銃口を向け合う。
一馬「はぁはぁあきらめろ」
黒羽「はぁはぁ…はぁ…F○○K」
変色ウォーカーを振り切り、
緊張の糸が途切れた瞬間、
黒羽手と肩は激痛に見舞われる。
激痛で手は震え、
黒羽の手は、
限界を迎え引き金も引けない状態。
ドンッ!
一馬「!?」
いきなり放たれた第3の銃弾は、
大きく外れ何処かに被弾する。
一馬は反射的に銃口を向ける、
第3の人間に向かい走り出す。
今度の銃口は確実に、
一馬の方向へと向いている。
一馬は拾った石を、
揺動の為、相手へ投げる。
飛んできた石に驚いて
相手の態勢が崩れ、
その隙を突いて更に接近する。
銃口を向けた腕の脇に、
滑り込むように身体を預け、
肩強く当てていく一馬。
一馬は態勢を崩した所で、
銃を握るてを掴み、ハンドガンを奪い取る。
奪い取るのと同時に足をかけ、
相手は転倒し尻餅をつく。
「きゃっ」
一馬「は?」
黒羽「手を出すなっ!待て、待て…」
一馬は戸惑いを感じつつ冷静さを装う。
一馬「お前は?コイツな仲間…か?」
黒羽「葵!大丈夫だ抵抗するな」
一馬「あおい…お前の名前か?」
尻餅をついていた葵は静かに頷く。
一馬は銃口を外して立つ様に促す。
葵はこちらを見ながら、
ゆっくり立ち上がり黒羽の方を見る。
黒羽はゆっくり頷き、
それを確認して葵は一馬と目線を合わせる。
一馬「とりあえず、何処かに避難しないと…」
葵「う、うん。わかった。」
黒羽「チッ」
黒羽を葵が、
支えながら3人で繁華街の飲食店に入る。
元々2人が拠点として用意していた店。
その2階でひと息つく事にした。
葵「ご、ごめんなさい」
一馬「!?」
一馬は不意のひと言に言葉が詰まる。
葵「どうせ彼から、
アナタに絡んで攻撃したんですよね?」
黒羽「なっ!余計な…」
葵「黙ってよ!アナタの
勝手な行動のおかげで、予定が狂ったんでしょ!」
一馬はサイコパス感満載な
黒羽が、たじろいでいる姿に少し驚く。
一馬「予定…とは?」
黒羽「…」
葵「セントマーク病院で物資を手に入れる事です。」
黒羽「お、おい!勝手に…」
葵は黒羽を睨みつける。
一馬は内心話の内容よりも、
モヤモヤした気持ちで一杯になっていた。
一馬(えーなんなん?可愛ッ!睨んでいるのに可愛さしか感じませんがー何処ぞやのツンツン娘との違いは何?ってか、少しイャイチャ感を感じてしまうのは俺だけなのか?そうなのか?俺の醜い嫉妬心からなのか?黒羽許すまじっ!)
一馬も黒羽を睨みつける。
黒羽「な、なんだ?」
葵は一馬に経緯を話し始める。
黒羽と葵は、
組織のパートナーで今回は、
セントマーク病院がターゲット。
一馬からすると苦手思い出ではあるが、
この世界線だは関係ない事である。
一馬「何故、こんな所にいる?狂乱の血死潮が近くから歩いて行くには…。」
葵「バイクがあるわ」
一馬「あー」
黒羽「チッ」
一馬は納得する。
バイクなら
どんなに時間が掛かっても、2日もかからない。
一馬「それならココで俺なんて、
相手にしない方がよかったんじゃないのか?」
黒羽「道が陥没していたんだ。大方下水のガスが引火して爆破したんだろうが…チッ」
一馬の思考は、ローディングを始める。
一馬(陥没…?陥没?下水…ね。あーそれ原因俺ですねぇぇあーそれはそれはほんとすいません。)
葵「なんで真っ直ぐ戻って来なかったのよ」
黒羽「あっ?獲物が歩いてたら狩るだろ」
一馬「プッ、逆に狩られて乙」
一馬と黒羽との睨み合いが始まる。
葵「ストップ!私は葵です。アナタお名前は?」
丁寧に対応してくる葵。
一馬「一馬、敬語じゃ無くて大丈夫、一馬で良いよ。」
葵は一馬の顔をジッと見て、頷く。
葵「一馬さん。あっ一馬、
あと一日私達と行動して。」
一馬(あっ!だって可愛い。
ツンツン娘に爪の垢煎じて飲ませてやりたい…。)
葵は深く頭を下げて、お願いをしてくる。
内心、一馬は出来るなら、
この場を早く去りたかった。
葵が助けて欲しい理由は、
何と無く理解している。
一馬「狂乱の血死潮…だよね?」
葵「…はい」
一馬は少しだけ考える。
黒羽と葵を守る所以は何処にも無い。
ましてや、
いきなり攻撃してきた奴(黒羽)を、
守る義務もない。
しかし葵にこの戦況を、
乗り切れる程の戦闘センスは、皆無に等しい。
一馬「確か……群れないで、
熱さえどうにかなれば戦わないでいいんじゃ?」
黒羽「俺が血を流し過ぎたんだ…お前のせいでなっ」
一馬(あーはい?はい?そもそもお前が俺を襲って来なかったらそんな結果にならなかったのでは?責任転換もここまでくると犯罪級ですよ?ねぇねぇ葵ちゃんこんな奴捨てていいのでは?)
狂乱の血死潮は、
音や匂い熱に対して以上に反応する。
特に黒羽は、
血を巻きながらここまで来ている。
激痛による、
ストレスで体から出る匂いにも敏感に反応する。
匂いを覚えられれば、
狂乱の血死潮では致命的。
一馬が深呼吸をひとつする。
一馬「黒羽…お前の態度次第だよ。
俺にはアンタらを守る義理も義務も無い。特にお前。」
3人の沈黙が続く。
黒羽は、
一馬をまっすぐ睨み続ける。
黒羽「……たのむ」
一馬「わかった。作戦を練ろう。」
いつの間にか雨が上がり、
悪縁と共に、14日目の0時を迎える。




