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DAY54 文明の墓場とスクラップの街

浄水場施設を後にして歩き始め、

もう数時間が過ぎようとした。


しかし一馬は歩く事に集中できず、

辺り一面をひとつひとつ確認する。


道らしい道が(ほとんど)ど無く、

地面に広がるのはスクラップの山。

突起物が重なり合って、

(いびつ)な形を作り広がっている。


観察してみると大半が、

廃棄された電子機械。

そこに不燃物の山が折り重なっている。


木や植物や廃屋などはあるが、

人が住むと言いうよりは、

ごみの埋め立て地の様な場所。


一馬「文明の…墓場…。」


一馬は浄水場を後にして数分で、

”フルフェイス型リユーザブル・レスピレーター”。

を装着する事を余儀なくされた。


辺り一面のゴミから

ガスらしき匂いが充満していた。


腕の測定器も、

要注意喚起の数値を示していて、

フィルターを交換したばかりの、

保護具を一馬は装着した。


先進国も途上国も、

同じ問題を抱えている。


ただし途上国は、

都市化のスピードに、

周囲のインフラが追い付かず、

結果、スラム化しゴミの街に変貌していく。


急成長と、

制度の未整備が引き起こす歪みである。


一馬は5000時間捧げたゲームで、

この景色を知っていた。


ゲーム内で出てくる、

廃棄物とガラクタが、

辺り一面に、敷き詰められたエリア。


それはゲーム内では、

危険度MAXエリアである。


一馬(おいおいおい、この展開は…)


地下下水路で、

爆発と共に吹っ飛ばしたはずの赤い瞳。


一馬「汚染エリア…突入かよ…」


**********


チチチチチチチチチチッ…


ザッザッザッザッ


はぁはぁはぁ…


チチチチチチチチチチッ…


ザッザッザッザッ


チチチチチチチチチチッ…


はぁはぁ…


一馬はとにかく走り続けた。


赤い瞳の大き目な汚染ネズミ群が、

一馬に向かい追いかけてくる。


ネズミにとって、

非常に良質な”たんぱく質”が、

目の前を必死に逃げている。


一馬(もぅいやいやいやいや勘弁して下さい、ほんとにもう僕食べるとさすがのアナタたちもお腹壊すんじゃないですかね?鉄の胃袋?いやいやいやいやはい!はい!いやいや、グルメなあなた達には私なんて…はは、ええはい、滅相もございませんホントに…恐れ多いぃぃぃぃぃぃぃぃきゃぁぁぁぁぁ)


下水路とは違い逃げ道も広い。

ガスが充満してはいるが、

外であるため、常に空気は循環している。


最低限の抵抗と、

弾丸の節約の為、逃げる事に決めた。


走り続けると

”バラックの住宅”が広がる地域に入る。


”バラック”住宅…

正式な建築基準や建築資材を、

満たしていない居住する為の家。

安価な材料を継ぎ接ぎして、

スラム化した貧困地域で作られる建物。


一馬「はぁはぁはぁはぁ…

振り切っったぁーきっつーあーきっつもうきっつぅぅつらッ」


気が付くとネズミを振り切っていた。

計測機を確認して、

マスクを頭の上まで上げる。


一馬「拠点…候補では無い…無いな」


一馬は物色をして、先に進む事にした。


居住スペースを確保してあるが、

建物と建物の境目が曖昧な居住建物。


廃材やトタンが並べられ、

段ボールで塞いではいるが、

最低限の雨宿り以外は、プライバシーも何もない。


台所らしい台所も無く、

缶詰や食品らしいものも、水に浸り腐っている。


たまにウォーカーが、

顔を覗かせるが、軽くあしらう。


一馬はウォーカーを可愛く感じてすらある。


一馬(なんて鈍足でスローライフな奴なんだ…ああ、敵が君たちみたいにのんびりしていればいいのにって、馬鹿!馬鹿!バカ!脳みそバグってんな…深呼吸…)


すぅ…


一馬「うっ!臭っゴホゴホゴホカハゴホッ」


バコンッ!


一馬「えっ?」

一馬は臨戦態勢に入り、身を隠し様子を覗う。


突然、銃弾が命中して

トタンの一部がはじけ飛ぶ。


割れた鏡面の破片が足元にあったので、

鏡面の汚れをズボンの布でふき取る。


鏡面だけ覗かせて発砲方向を確認する。


パリンっ!


鏡面が打ち抜かれる。

一馬も本格的にスイッチが入る。


周囲を見回してルートを選択する。

極力身を(かが)めながら動き出す。


有難い事に、

”壁らしい壁”が無いので、動きやすい構造。


右に動き左に動き、

最小限の音を意識して動きまわる。


スリンガーで、

物を遠くに飛ばし、意識を散漫にさせる。


穴だらけの”バラック式”が、

ここきて、有効的に使えている。


壁のように貼り付けられた段ボールに、

下の方から穴を空け、覗き込む。


一馬(人影は…あそこか!?)


!?


一馬(げっ、またアイツかよ…)


銃を構えているのは、

”隼人”の

元教え子にして、同じ部隊出身のあの男。


一馬「黒羽(クロウ)…」


一馬には苦い苦い思い出がある。

黒羽(クロウ)には何度か殺されている。

しかもなぜか黒羽(クロウ)は一馬を執拗に狙ってくる。


一馬(あーもう来たよ運命?まさに運命?えー?デステニー?何がデステニー?デスとテニー?テニーって何?てかお前なんなん?なんか腹立ってきたよムカムカしてついでに胃もムカムカしてきた…ねっ!!!)


黒羽(クロウ)が、

視界を逸らした瞬間一馬が飛び出す。


黒羽(クロウ)が、

虚を突かれた様子で振り向く。


長い銃身に手首を絡め、銃口を逸らす。


ドンッ!


黒羽(クロウ)

反射で発砲するも一馬には当たらない。


黒羽(クロウ)は後ろに後退しようと、

重心を後ろに移動させるが、

一瞬早く一馬が絡ませた手首から、

手で銃身を握り引っ張り込む。


高熱になった銃身に手袋が焼き付く。


抵抗しようと後ろに、

更に体重移動させようとした所で力を抜く。


バランスを失って、

後方に倒れそうになる黒羽(クロウ)に合わせて、

一馬がさらに前に踏み込んでいく。


ドンッ!


黒羽(クロウ)は抵抗に発砲するが、また当たらない。


一馬はすでに銃身より、

半歩横に身を横にかわしている。


逆手に握ったナイフで、

引き金に添えた右手を刺す。


黒羽(クロウ)「くっ!」


緩んだ手元を確認して、

一馬は両手でスナイパーライフルを奪い取る。


一馬は奪い取り、

素早く狙撃体制に移っていた。


黒羽(クロウ)は反射的に、

腰のハンドガンを手に取るが、

右手の傷で落としてしまう。


ドンッ!


その瞬間、黒羽(クロウ)左肩に銃弾が撃ち込まれる。


黒羽(クロウ)「あぐっ…はぁはぁはぁはぁ」


一馬「あきらめろ…」


一馬と黒羽(クロウ)の睨み合いが続く。

黒羽(クロウ)の目頭が、怒りで血走っている。


しかし黒羽(クロウ)は、

目の前にいる男に困惑すら覚えている。


旧軍式のプットゥ(レッグラップ)を巻き、

銃身の銃口を、冷静にこちらに向ける男。


黒羽(クロウ)(軍人のような

独特の雰囲気は感じられないのに…なんなんだ)


何よりその立ち姿や鮮やかな戦闘術が

”隼人”にそっくりに重なる男に驚いている。


黒羽(クロウ)「お前は…

何者だ…はぁはぁ…誰なんだァァァァァァ」


一馬「一馬…天海一馬」


ドンッ!


スクラップとゴミの街で、

残響だけがゆっくりと空へ消えていく。


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