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DAY50 生まれ落ちた変異と菌糸の系譜

「よし、ここだな」


5人組の集団が、

変電所のフェンスを越える。

冷たい鉄の箱がより一層、

風を冷たく感じさせる。


建物と鉄の箱の周りを、

厳重に囲む背の高いフェンス。


その奥には変電所管理施設がある。


5人組の構成は、

・エンジニアが2人

・傭兵が1人

・生物学者と微生物学者。


トーマスは

その中の、”生物学者”である。


トーマスを含めた5人は、

静かに慎重に、

変電所施設に向かい、奥へ進んで行く。


まだ、そこに潜む悲劇を、

想像すらしていなかった。


**********


ドンッ…


「まってくれよぉ!?

殺さないでくれッなっなっ」


一馬が反応した先に、

布のポンチョを被った子供が、視界に飛び込む。


驚いて、銃口の軌道を、

数センチずらした事により、

銃弾は軌道を外し壁にめり込む。


子供は何が起きているのか、

理解できていない。

必死に子供を抱き寄せ、

トーマスはこっちを嘆願(たんがん)するように睨む。


トーマス「頼むッ撃たないでくれ!

もう少しなんだ!もう少し時間をくれよ…」


過って子供を撃たなかった事に

一馬は内心ホッとしていた。

今の一馬には、隼人の影はもういない。


一馬「落ち着け…話してくれ」


一馬の雰囲気が変わり、

トーマスの緊張が解け始める。


トーマス「……わ、わかった」


一馬「トーマス…その子は何なんだ?

人間なのか?それとも…?」


トーマスは口を開いた。

トーマスは頭で話を、

整理しながら説明を始める。


トーマスは夫婦で変電所に来た。

5人組の中に、

パートナーである”アリー”も同行していた。


”アリー”は微生物学者で、

今回の任務でとても重要な役割があった。


一馬「まてまて、び?びせいぶ…」


トーマス「微生物学者だ。

そして、この子は、

アリーとの間に出来た俺の子供だ。」


一馬の頭は混乱する。

子供を連れて、

危険な任務をするのか理解に苦しむ。


しかしトーマスが手のひらを向け、

一馬の混乱を察する。


トーマス「アリーは妊娠していたんだ。

ここに来た時点では、妊娠2か月だった…」


一馬の考えを先回りするように、

トーマスは、説明の補足をしていく。

トーマスは話を続けていく。


今回の目的は主に2つ。


電気供給の復旧作業と、

真菌の解明である。


一馬「しんきんの…解明…」


一馬は少し考える。

頭には”信用金庫”の略語か?と、

くだらない事を考えながら。


一馬「あっ!?ウイルスとか?」


トーマス「そうだ。アリーは元々、

細菌や菌糸などを調べる専門的だ。」


一馬は納得する。

ゾンビの世界にウイルスは付き物。

ゾンビゲーム愛が停まらない

一馬からすると、飲み込みやすい設定である。


一馬「話の腰を折るけど、

その子が、地下の惨劇の原因なのか?」

トーマス「違う違う!

誓って違うッあれはこの子が生まれる前の話だ。」


一馬「生ま…れる前…?」


思考を巡らせ、

頭の中でキーワードを並べる。


一馬(微生物、夫婦、妊娠、

2か月、産まれていない、

菌糸、ウイルス、生まれる、子供)


短い沈黙のあと、一馬が口を開く。


一馬「多分だけど…妊娠中の感染…か?

アリーが死んでから、産まれた…のか?」


トーマスは少し

驚いた顔を見せるが、

なぜか、安心したような表情を見せる。


何かを決心したように、

軽く息を吐き答える。


トーマス「そうだ」


**********


トーマスの膝の上で、

子供は寝息をたて、眠りについている。


トーマスは、

愛しいまなざしを子供に向けている。

トーマスは説明を続ける。


生物学者だったトーマスは、

アリーと意気投合し、結婚をした。


数年の結婚生活を経て、

子供が授かった。


しかしここで

アリーが研究していた

ウイルス研究の進展がみられた。


トーマス「変異の菌糸が見つかったんだ。」


一馬「菌糸…キノコ?みたいな?」

トーマス「ん?ああっ間違いでもない」


一馬はスカされた気分だったが、

とりあえずトーマスの話に耳を傾ける。


普段から夫婦でゾンビ熱の対策や、

ゾンビ化の回避や改善方法を、

調べるのが、アリーとトーマスの主な仕事だった。


倒したゾンビの遺体などから、

サンプルを抽出して、(つたな)い設備で研究を進めていた。


一馬「そこで、何らかしらの

…特殊な、菌糸が見つかった…と。」


トーマス「そうだ」


ただし、トーマスの説明だと、

菌糸感染は場所によってと差がある。


一馬「で、変電所に、

顕著(けんちょ)(かたよ)りがあったと…。」


トーマスは(うなず)き、話を続ける。


兄のジョーカーは

妊娠したアリーを連れていく事を反対したが、

アリーが(がん)として譲らなかった。


トーマス「彼女は気の強い奴で、

アリーは弁も立つから兄貴も渋々、承諾したんだ。」


一馬は口下手な

ジョーカーを言い負かす、姿を思い浮かべる。


理由は明確で、

今なら”身軽”に動けるからである。


子供が大きくなるにつれ、動けなくなる。

しかも産んでからも、

行動範囲は制限される事は、目に見えている。


トーマス「今回しか無かったんだ。

彼女は早くこんな世界を、

終わってくれる事を望んでいた。」


一馬は(確かに、この世界で

子供が生まれ育つ事が、

どれほど過酷か想像がつかない。)


一馬「あと3人は…

エンジニアと傭兵?だったよな。

あの張り付いていた、大きい奴が傭兵…だよな。」


トーマス「いいや、エンジニアだ。

しかも、あんなに大きい奴ではなかった。」


一馬は一瞬驚くも、

菌糸の話を聞いて嫌な予感が頭を過る。


一馬「トーマス…」

トーマス「な、なんだ。」


一馬は少し沈黙し生唾を飲み込む。


一馬「もしかして、

秘密の部屋…みたいなのがあったりとか…

そっそこに、菌糸ビッッッシィィーりみたいな…?」


トーマスは今回も意外そうに顔を見つめる。


トーマス「お前…

間抜けなそうに見えて…

案外と頭が回転が速いな…。そうだ。」


一馬(間抜けは余計で・す・が!いやいやそれより新展開かよぉ落ち着け~一馬、ここは深呼吸ぅ|ひーひーふーひーひーふぅ《・・・・・・・・・・・・》いやいやラマーズ法をしてる場合じゃない!深呼吸…複式呼吸をしようか…あれっソフロロジー式呼吸(・・・・・・・・・)ってこんな感じだったような…って言うかどこで知ったのこんな情報…。)


トーマス「お、おい大丈夫か?」


一馬「えっ?えっははっ

I’m fine!I’m fine!」


トーマス「変電所の旧施設が、

地下から繋がっている」


変電所の地下2階から、

閉鎖されて下水通路へ向かう入口がある。


通路は直線で100m程で、

その先には旧変電所がある。


旧変電所の下水通路繋ぎ、

災害や避難通路として、そのまま維持されていた。


一馬「下水…施設の地図には

そんなもの記されてなかったけど?」


トーマス「ああっそれはそうだ!

基本的に見取り図には載っていない。」


トーマスの話だと

現変電所が建てる時に

内部設計図と内装設計図は分けてあるらしい。


そもそも働いている人間が、

下水の位置など把握する必要も無い。


そして今回は

実際に変電所から逃げてきた男が、

元従業員で、下水道の位置を把握していた。


今回トーマスと

乗り込んだ中の5人組の一人である。


一馬「それで…どうする気なんだ。」


トーマスは答えを選んでいる。

しかし、ここまでくると嘘をつく必要もない。

一馬はトーマスが、

喋り出すまで黙って待っている。


トーマスは

膝で寝かせる子供を見つめる。


トーマス「この子が…」


トーマスが口を開く。


地下室からスキャヴァーの群れが、

奇声をあげ暴れ回っている。


コンクリートの壁を伝い

不気味な音が聞こえてくる。

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