DAY110 積もる権威と欲望
重苦しい扉が開き、
2台の車両がギバーを出発する。
一馬達はオリバーの計らいで、
拠点になりそうな所へと移動する。
この世界の特性上、
ギバーに寄生し行動する事は出来ない。
寝食を堪能できるのは、
特殊な条件のイベントがある時のみ。
オリバーのギバーから車で10分。
進んだ先に、廃ビルと廃工場が見えた。
一馬「・・・意外に」
一馬が思ってた以上に、
防護柵がある、要塞造りであった。
オリバー「着いたぞ」
一馬達は車両から降り、
建物を見渡す。
一馬「おい、ここ使っていいのか」
オリバー「ああ、問題ない」
一馬「お前たちは使わないのか?」
オリバーは建物を見渡し、
頷きながら一馬を見つめる。
オリバー「使えないんだ・・もうな」
奥歯に物が詰まったような返事をする。
一馬「なんだ?」
オリバーは笑みを浮かべ説明をする。
かつて死の大地を管理する為、
複数のギバーがあった。
ギバーと言っても、
軍を駐在させ、
監視を行う施設がいくつも作られた。
オリバーに案内された施設も、そのひとつ。
世界が終末を迎えて、
この世界では10年以上経とうとしている。
一馬(そうか・・気を抜くと忘れそうだけど、
ゲームの設定は終末後の世界だったな・・。)
当初はこの施設も有効活用していたが、
7日に1度の
狂乱の血死潮が、規模を縮小させた。
隼人「戦死とゾンビ化・・・」
オリバーは静かに頷く。
ゾンビとの戦いは、
理屈では太刀打ちできない。
常に感染リスクがつきまとい、
感染すれば死ぬか死を招くゾンビに変わる。
人間の争いで死んでも
感染すればいずれ、ゾンビになって人を襲う。
オリバーは研究員という
重要ポストだった為、厳重に守られる。
施設を抜け出し追われる側になったが、
何とか今日の今日まで生きている。
黒羽「疑問がある。
軍は何でお前達を放置しているんだ?」
一馬は「確かに」と
至極まっとうな疑問だと感じた。
オリバー「いや、多くの仲間が殺されたよ」
オリバー曰く、仲間は殺され、
増えるどころか日々減っている。
一馬「減ってる?」
日々減るという表現に、
妙に引っかかりを感じる。
隼人「それで?
オリバーさんの相手の現状予想は?」
オリバー「多分、全面戦争は仕掛けてこない」
隼人「理由は?」
オリバー「俺を殺す
メリットが無い・・いや無くなったが正確か」
一馬「どういう事だ?」
王=ヨルガンドが現れる2か月前、
ギバーに潜り込んだスパイが、
研究資料を盗み、ギバーの人間を殺し逃げた。
オリバー以外にも
多くの研究員が軍施設に、確保されている。
しかもそこの軍曹が、
研究の指揮管理をしている。
専門知識は無いが、
方向性と目的がはっきりしている。
”終末世界の覇者”
オリバーからすると
何とも陳腐な野望だが、
権威欲の奴隷が力と権力、
両方持っているから厄介である。
隼人「それでも全面戦争は無い?」
オリバー「んーうまく言えないが、
実際あちらも人員の確保は苦戦してると思う」
黒羽「思うって」
隼人「いいや、正直な所だろうね。
感染対策が難しい・・そんな所なのかな」
オリバー「ああ、こっちも変わらないがな」
ゾンビがいる世界で感染は、
もっとも厄介な事象である。
振り向くと、白く濁った瞳に、
気持ちの悪い血管が浮き出る。
粘りのあるヨダレをたらす。
躊躇なく襲い掛かり、家族や友人
そして恋人に噛みつき食らう。
オリバー「とりあえず
ヨルガンドが現れて以来、襲ってはこない。
正直、理由はわからないが
もしかしたらヨルガンドの餌になってるかもな」
一馬(そうなってたら、
それはそれで幸運なんだろうな・・
無駄な争を避けるに越したことは無いからな)
隼人「とりあえず一馬君問題ないかな?」
一馬「あ?はい正直、
移動しないで対策できるなら御の字ですから」
オリバー「これを渡しておく」
一馬に鍵が手渡される。
一馬「(きたぁああああ)
はあ、はあ、はあ、こ、これは、
ももももももももも・・
もしかして、く・る・ま?」
オリバー「お、おう。こ、怖いぞお前」
きらんっ
一馬の手から鍵が消える。
錬次「ひゃっほおおおお」
一馬「て、おま、おま、待てやゴラァァアア」
黒羽「チッ、緊張感ねーなアホ共」
葵「んふふふふ」
黒羽「な、なんだ?」
葵「混ざりたいんでしょ?」
黒羽「チッ、ガキと一緒にするなっ一緒に!」
隼人「ふふ、瑠奈ちゃん達は荷物をまとめて。
黒羽と武臣さんは中を確認。
朱華さんと六花さんは・・ま、適当に」
オリバー「連絡はレシーバーが中にある。
周波数は合わせたままだと思うからそれで」
隼人「わかりました。でも、なんでここまで?」
オリバー「・・・さっぱりだ。
でもこれだけはわかる。
一馬って男がなぜか信用してみたくなった」
隼人「彼、いいでしょ?」
隼人とオリバーが、
顔を見合わせ笑顔を見せる。
トーマス「俺はオリバーとギバーに戻る」
隼人「わかりました」
トーマスとオリバーは、
車に乗り込もうと移動する。
一馬「トーマス!」
車の窓から一馬が覗き込む。
一馬はガッツポーズをする。
トーマスは釣られ、
ガッツポーズを一馬に返す。
一馬は車を走らせ、
トーマスとオリバーは、
車に乗り込み出発した。
ふたつのタイヤの跡が雪に刻まれる。




