DAY109 死の大地であがる湯気
辺りは薄く陰り始める。
四方囲まれたギバーに、
小さく渦を描き雪が舞う。
オリバーのギバーは、
”死の大地”があるエリアで運営している。
死の大地はさらに二極化している。
ギバーがある区画と、
ありとあらゆる方法で壁を作り分断した、
危険エリアがある。
危険エリアはカジノやホテル、
大きな商業施設が集まるリゾート区画。
そして、王”ヨルガンド”が現れた場所。
分断した壁は経年劣化で風化が進行している。
そして当初の目的のギバーは、
危険エリアへ唯一アクセスできる。
境界線を守り維持する為に作られたギバーは、
今は私利私欲の施設へと変貌している。
オリバー「こんな感じだ」
モグモグモグモグ
ズッズズー
フーフー
アーン
一馬「うん、んぐゴクン。
んーごくごく・・んーふぅ」
トーマス「一馬、聞いてるのか」
一馬「あ、当たり前!で、作戦は?」
オリバーはあからさまに困った顔をする。
隼人「決め手がないんだね?」
オリバーはゆっくり頷く。
元軍人なだけあって、
オリバーが抱える弱点に気が付く。
オリバーが運営しているギバーは、
インフラが充実している。
自給自足から販売、
そして大衆で食事をする空間。
軍事施設と言うには綺麗に整った施設。
腕に自信のある者達は、
オリバーのギバーにも少なからずいる。
しかし、6割以上は、
戦闘経験が皆無な一般人ばかり。
相手のギバーは6割以上が、元軍の関係者。
訓練された統率力に、
勝てる算段が立たない。
黒羽「確かに、
訓練された行動はイコール、
力でもありますからね」
隼人「オリバーさん、
僕達も作戦に参加させてくれませんか?」
オリバーは驚いた表情を見せる。
オリバーは一瞬戸惑ったが、
首を振り提案を拒否する。
オリバー「ダメだ!
数人増えた所で、焼け石に水だ」
ドンッ!!
朱華がテーブルに、
酒の瓶を強く叩きつける。
朱華から殺気が漏れ出し、
オリバーを睨みながら詰め寄っていく。
オリバー「な・・あがっ」
オリバーの首元を朱華が鷲掴みし、
万力のように絞り上げる。
オリバーは細身だが、
大きな身長と男性特有の骨格。
それを朱華は軽々片手で持ち上げる。
座っていた体勢から、
徐々に体を持ち上げられ、
気が付くと足元が床から離れていく。
オリバー「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
一馬「おい!」
一馬は朱華に手を離すように促す。
朱華は一馬に微笑み、
万力のような手を解放する。
オリバー「かはあーゴホゴホゴホゴホッハーハーハーハー」
朱華「おい畜生!
私が本気を出せばココの奴らは、
ひとりで全殺しできる。
その私に唯一地面を舐めさせた男がここにいる」
朱華は一馬を抱き寄せる。
一馬
朱華「たった数人と侮った男が、
私よりも強い・・いや最凶の男だ。
この男をお前の小さな物差しで測るな」
一馬の顔面に胸を押し付ける。
一馬「おぃく、苦しムムムムぶは!は・な・れ・ろ」
朱華「あん、ツレない奴め」
朱華は悪戯な表情を見せる。
六花は拳銃に手を掛けている。
瑠奈は軽蔑した目で一馬を見つめる。
オリバー「ほ、本当なのか?」
一馬「えっ?あ、ああ。
一馬君凄すぎて困ってます。
はいーそうなんです。
天才って僕の事?
天才って書いて一馬?よろしく天才です」
黒羽「チッ!馬鹿が調子乗りやがる」
錬次「そうそうテンちゃん馬鹿ー
あははははははははははははははは」
一馬「カッチーン」
葵「あ!口で言った」
誠「はは、久しぶりに聞いた口で言うの」
武臣「・・・・・」
瑠奈「もう、隼人さん止めて下さい」
隼人「あはははは、ごめん。
オリバーさん僕と彼(黒羽)は
元特殊部隊の軍人でした。
少数には少数の戦い方があります。
最凶が2人と専門家が2人、
そして僕たちが信頼する仲間、損はさせません」
一馬「次の狂乱の血死潮で、
俺たちの実力見せてやるよ。
納得させてやる」
オリバーは自信に満ちた、
一馬達を見渡す。
オリバー「よ、よし。今夜は全員泊っていけ。
朝一に、お前たちの拠点を用意する」
一馬(よっしゃーーー特殊イベント来たァア)
隼人「ギバーに泊るなんて初めてだね」
一馬「僕、経験済みです」
錬次「飯まだある?」
六花「朱華様に最高のベッドを用意しろ!
さもなければ殺す」
武臣「・・・・・・」
葵「瑠奈ちゃん一緒の部屋がいいね」
瑠奈「は、はい。葵さん」
誠「キッチンかしてもらえますか?」
黒羽「おいオリバー、
後で武器をみせろ」
トーマス「一馬、研究室に行くからまた明日」
一馬は錬次と食事の取り合いをしながら、
トーマスに手を掲げ合図をする。
自家製の野菜は新鮮なのがよくわかる。
スープに溶け込んだ旨味が、
疲れた体の隅々に広がる。
実際、肉は手に入る。
野生のウサギや鹿などは、
今もなお、生存している。
だが荒廃した世界で
野菜を手に入れる事は不可能に近い。
塩味はあまり強くは無いが、
舌の感度は上がっている為、さして問題がない。
冷え込んだ空気に、
スープの湯気が交じり合う。




