DAY108 淡い思いと雪の音
日が昇り始めると、
辺り一面白く染まっていた。
踏みしめる度、
氷がすりつぶされ軽快な音を立てる。
吹雪は落ち着き、
オリバーの本拠地へ場所を移す事にした。
錬次「テンちゃん・・・」
一馬「ああ、錬次・・・」
ぎゅうぅぅぅ
錬次「ははは、
テンちゃんは後部座席で待機してなよ」
一馬「ははは、
何を言ってるんだよ。大柄な君が前じゃ窮屈でしょ?」
ぎゅうぅぅぅぅ
一馬「いい加減にしろよ!怒るぞ?」
錬次「ほう、その言葉そっくりそのまま返す」
瑠奈「はーあ、隼人さん」
隼人「一馬君と錬次君は後ろね。
前は僕と黒羽と運転手・・ね」
一馬・錬次「えええええ」
一馬と錬次が取り合っていたのは、
四輪駆動のジープの前席。
サイズ感が日本国産の倍の大きさで、
一馬と錬次の心を擽る。
一馬「黒羽!譲れ!」
黒羽「あ?はっやだね」
錬次「そうそうクロちゃん。
嫌だよね上から目線ねー?
クロちゃん俺に譲ってくれるよな?」
黒羽「誰がクロちゃんだ!
馴れ馴れしい。先輩の決定だ!従えよ」
一馬「かぁぁあああ、
先輩の決定だ!
先輩、先輩うるせーよいいだろ席ぐらい。
どんだけ忠犬なんだよ」
黒羽「おい・・・殺すか?」
一馬「あっ?望むところだ!」
誠が不安そうに揉めている姿を、
遠くから眺めている。
トーマス「ほっとけよ」
誠の肩に手を置き、
トーマスが誠を落ち着かせる。
瑠奈と葵はとても親しくなっている。
朱華と武臣と六花は
我関せずとした態度で、車に乗り込む。
オリバーは隼人達が乗り込んだ車に乗せらる。
車両内に殺伐とした空気が流れ、
オリバーは冷汗が止まらない。
全部で4台の車で、
オリバーの本拠地を出発した。
窓から見える景色は、
1日前とはまるで別世界の風景が広がる。
一馬「そうだ、オリバー」
オリバー「な、なんだ?」
一馬「・・・俺、最近傷の治りが速い気がするんだ」
オリバー「えっ?・・・・・傷は?」
一馬「んー完治するわけじゃ無いんだけど
血は知らない間に止まっている」
隼人と黒羽は黙ったまま耳を傾ける。
オリバーは鞄の中を漁り始め、
注射器の入ったケースを取り出す。
オリバー「血を抜かせてくれ。
結果は拠点に戻ってみないと、なんとも言えないが」
一馬「か、かまわないけど。感染してるのかな?」
オリバー「・・・正直わからん。ほら、刺すぞ」
一馬は針先から視線を逸らし、
全身の血を集める様に腕に力を込める。
オリバー「おい、力みすぎだ」
錬次が粘着質な視線を一馬に向ける。
錬次「ぷっビビッてやんの」
黒羽「ぷっ」
「あははははははははははは」
一馬「あ?ああ!ビビってるわけないだろ?
おい、錬次!あ?てめぇ黒羽笑うんじゃねえ」
一馬はオリバーに詰め寄り殺気を放つ。
一馬「早く刺せよ、刺せ!」
オリバー「ひ、あっ?」
プスッ
一馬「あ?あ、あああああ」
「あはははははははははは」
隼人は周囲を確認しながら、
聞き耳を立て、笑みを浮かべる。
10㎞程、進んだ先に
ギバーの立て看板が見えてくる。
一馬もそれに気が付き、
銃を抜きオリバーに突きつける。
オリバー「な、なにするんだよ?」
隼人「オリバーさん、ギバーが本拠地なの?」
オリバー「???」
一馬「答えろ・・・ハメたのか?」
オリバー「な、何言ってるんだ!
ふ、ふざけるのもいいかげんにしろ!
ぎ、ギバーの事なのか?
ぎ、ギバーなんてどこにでも沢山あるだろ!」
一馬は銃口を向けながら、
この世界の構造を思い出す。
地図に主張されているギバーは主に5つある。
しかしギバーの本質は村で、
5つ以外にも複数存在している。
5つのギバーは、
ゲームクリアーには必須の場所であって、
ギバー自体が5つしか無いわけではない。
一馬は銃をホルダーに収め、
スマホの地図を確認する。
一馬「隼人さん、地図確認しました。
別の方角の別のギバーです」
隼人は運転席に向けた銃口を下ろす。
黒羽も気が付くと、
オリバーに向けて銃口を向けていた。
オリバー「か、勘弁してくれよ」
一馬は念押しにもう一度質問するが、
オリバーには騙すほどの度胸は感じられない。
ギバーの規模はとても大きく、
東京ドーム3つ分ぐらいある。
有刺鉄線に鉄板の塀が周囲を囲んでいる。
重苦しいシャッターがあり、
塀には武装した傭兵が配置されている。
シャッターの横に鋼鉄の扉があり、
細長い小窓から傭兵が声をかける。
オリバーが車から顔を出すと、
重々しくシャッターが上に巻き取られる。
車両を進めるともう一つの扉に阻まれる。
隼人「厳重だね」
オリバー「当然だ、
あいつらに奪われるわけにはいかない」
男「おい、降りてこい」
皆車から降り、
男の指示に大人しく従う。
男「あっ、オリバー様お帰りなさい」
一馬「オリバー様?」
オリバー「言ってなかったが、
このギバーの運営管理をしているのが俺だ」
一馬「お前のギバーなの?」
男「お前、何を生意気に・・・」
男が気が付くと、
後ろから銃口を押し付けられている。
オリバー「許してくれ!
おい、お前達この方たちは
俺の大事な客人だ。
失礼のない様に・・いいな?」
黒羽は肩を軽くすくめ、
銃口を男の体からゆっくり外す。
男「あ、開けろ!」
観音開きの鉄格子ゲートが開く。
一馬達の視界に映る光景は、
今迄見てきた、
どのギバーとも違うものだった。
畑が広がり、
見ただけで生活感が感じ取れる。
オリバー「んっ?畑が気になるのか?」
一馬「え、いや」
オリバー「農作物を
育てるのも化学だからな。
少なくとも自給自足が、
出来るに越したことはない。」
オリバーは立ち止まり、
後ろの方を離れて歩くトーマスを見つめる。
トーマスは広がる光景に、
アリーの面影を思い出す。
オリバー「とりあえず
抜いた血を施設に置いてくるから、
あそこのPHBで食事でもしててくれ。
おい、お連れしろ」
一馬・錬次「ゴクん」
雪の気配を感じ、頬についた雪が解ける。




