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DAY111 初拠点の戦い

誠「熊ゾンビがきた」


カンカンカンカンカン


雪の世界の夜は、

吹雪と共に訪れる。


横殴りの雪が、視界を奪う。

警戒の鐘が鳴り響くが、

吹雪が鐘の音を濁らせた。


ドーン・・・


腹の底から震わせるような、

射撃音が聞こえる。


隼人「ふぅうううううう」


隼人は銃床(ストック)を、

ポケットにしっかり押し当てる。


利き手を握り直し、

左手でハンドガード前方を軽く包む。


銃床(ストック)に頬を落とし、

正しく見える位置で視線の距離を保つ。


V字に切り欠きされた、

リアサイトに目位置を合わせる。


リアサイトを、

フロントサイトの針に重ね合わせる。


V字のリアサイトのピントがぼやけ、

フロントサイトの針が、

くっきり浮かび上がる。


優しく触れる様に、

トリガーに触れた指に圧を溜めていく。


隼人「ふぅううう・・・すぅ」


リアとフロントのサイトが、

完全に安定した瞬間。


ドーン・・・


指の圧からトリガーが解放され切れる。

火薬の爆発に銃が後退するが、

肩で反動を吸収し、標的から視線を外さない。


黒羽(クロウ)(やばい、さすがだな・・)


隼人が構えている銃は、

「スプリングフィールドM1903」


連射が出来ない

”ボルトアクション式”の

軍用ライフル。


かつての世界大戦で使用された、

比較的古い軍用ライフルである。


しかし強力なフルパワー弾の、

「7.62×63㎜」が使用可能である。


熊ゾンビの頭が、

西瓜(すいか)が破裂するように砕け散る。


発射後も照準姿勢を崩さず、

銃の動きを抑え、

弾道の感覚に身を預ける。


反動が素直なボルトアクションなので、

照準復帰がとてもスムーズ。


ゆっくりとしたフォロースルーが、

熟練者のそれを物語っている。

グリップから利き手を外し、

ボルトハンドルを上へ持ち上げる。


持ち上げた

ボルトハンドルを後ろへ引くと、

排莢が飛び出す。


ボルトを後ろで一瞬止め、

次弾を確認する。


ボルトを前進させると、

弾がチャンバーに送り込まれ、

ボルトハンドルを下へ倒し、ロックする。


そして下へ倒しロックをする。


隼人が再び銃床(ストック)に頬を預ける。


集中と共に視界が狭くなっていく。

シンプルな構造の照準だが、

標的が隼人には鮮明に映る。


ドーン・・・


一連の規則正しい動きが、

約3秒台で繰り返し行われた。


黒羽(クロウ)(あーなんで旧式ライフルで、

あんなに完璧なショットが

撃てるんだよ!クソッかっこよすぎだろ)


隼人「・・・・・ふぅううううう、すぅ」


ドーン・・・


高低差がある位置に、

横殴りの風と雪が、

弾道に意地悪をしてくる。


隼人は経験と技術により、

風を読み逆算しながら照準をあわせる。


ドーン・・・


次々とゾンビの頭がはじけ飛ぶ。


一馬「流石だなー隼人さん。

錬次!瑠奈!俺達も踏ん張れよ」


瑠奈・錬次「おう」


錬次は消防用の斧を軽々振り回す。

武臣と組んで以来、

錬次はスレッジハンマー以外の武器を、

選び使うようになった。


スレッジハンマーの

最大の弱点はスタミナ。


機動性は錬次の馬鹿力がカバーするが、

体力の概念が皆無なゾンビ相手では、

消耗戦になれば()が悪く勝ち目は無い。


ドンドン


ハンドガンも器用に使いこなす。

ハンドガンも反動はとても強く、

映画やアニメのように、

片手で簡単には扱えない。


錬次の腕力と強くしなやかな体幹が、

短期間で攻撃バリエーションを増やしている。


瑠奈の立体的な動きに磨きがかかる。

先の先が得意だった瑠奈が、

後の先の動きをするようになる。


朱華に出会い、

朱華の戦い方を見てきた瑠奈。


動きを「読む」のでは無く、

動きを「合わせ」且つ「上」を行く。


絶対的な運動量でかく乱する戦いから、

必殺を目的とした戦い方に変わっていた。


朱華は拠点内から双眼鏡を覗き、

瑠奈の動きを確認している。


朱華「ふふふ、登ってこい」


瑠奈の脚に、

無骨なレガースが装備されている。

無骨なレガースはゾンビの頭を砕き、

一撃当たれば絶命する。


一馬(ふぅうう、冷たい、風が強い、思考は?指の感覚が少し鈍い、足は・・動く・・視界は?広い・・1・・2・・)


一馬のギアが上がる。

ゾンビに詰め寄り、

中腰からボウイナイフを振り抜く。


勢いよくゾンビの脚が分断され、

風車のように宙で足が回転する。


振り抜いたボウイナイフをそのまま

後方にいたゾンビの首元に当てる。


ボンッ


ゾンビの首が真上に跳ね上がり、

頭がくるくると回転し、真下に落ちる。


朱華「あははは濡れるじゃねーか、一馬!」


一馬がゾーンに入ると動きが速くなる。


正確には動きではなく、

神経の反応が早くなる。


そして神経に集中された感覚が、

全身の弛緩を作り、

緩急が動きを早く見せる。


常人の倍の反射速度に、

反射神経が成せる、相手の裏の裏。


先の先でもあり後の先でもある、

未来予知に近い動き。


ボウイナイフが

ゾンビの肉に食い込む瞬間まで、

一馬の体に緊張は無い。


薄皮一枚・・・

肉が数ミリ食い込んだ瞬間、

全身が連動し、

ボウイナイフが振り抜かれる。


一点に集約するように、

一馬の攻撃がゾンビに襲い掛かる。


バリンッ


ガラスが割れた音と共に、

少し離れたゾンビが燃え上がる。


西瓜(すいか)のようにはじけ飛ぶゾンビの頭。


カンカンカンカン


一馬「ハアハアハア」


錬次「お、終わった?」


瑠奈「ハア・・ハア」


一馬達は周囲を見渡す。

動いているゾンビは見えず、

ゾンビの屍だけが、雪に埋もれている。


一馬「ふーちかれたよー」


吹雪が一層強くなり、

決戦の跡に蓋をしていく。


狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)が明ける。

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