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DAY104  月明かりに浮かぶ朱色の影

空気に湿り気を感じ、

雲行きが怪しくなってきている。


朱華と武臣は、

傭兵のオフロードバイクを盗み、施設から逃走した。


まだ、日は落ちていないが、

雲が陽を覆い、辺りに影を落とす。


朱華(荒廃した世界?あの異形な人間もどきも・・・)


朱華の視界に入る世界は、

日本のそれとも似ても似つかない。

見慣れない荒地に、

海外のナンバープレートが付いた廃車。


広く大きな道路に、

水平線に広がる無機質な景色。


後ろを振り返るも追手の気配は感じない。


外国のコンビニは、

ガソリンスタンドと併設されている事が多い。


日も陰り、視界が悪くなったので、

バイクを停車させ、コンビニへ足を運ぶ。


あがががががががが


朱華「!?」


腐った人間が音に反応し、

コンビニから飛び出してくる。

武臣の方へ向かい、ゾンビが襲い掛かる。


朱華が駆け寄り、ゾンビの頭を鷲掴みにする。


朱華「てめえ、襲うなら私だろっ?」


ゴリッ


ゾンビの首は簡単にねじ切れ、

頭と胴体が斬り離される。


朱華「こいつら何で襲ってこない」


武臣「お嬢が視えないそうです」


朱華「あっ?どういう事だ・・・いや、後だ!酒が無いか見に行くぞ」


武臣は小さく頷き、

朱華と共にコンビニの方へと歩いて行く。


ゾンビは複数隠れており、

死角からちょっかいを掛けるが、

朱華と武臣に一蹴され、破壊される。


朱華「くそ、時化てやがる」


武臣「お嬢・・」


武臣は手にスピリタス瓶を握っている。


朱華「でかした」


コンビニの入口を塞ぎ、

一晩やり過ごすことに決める。


朱華はおもむろに上着のポケットを探る。


朱華「スマホ・・」


スマホを起動させると、

モンスターリストアプリを見つける。

ひと口酒を含み、

暇つぶしにアプリを閲覧する。


朱華「ウォーカー・・・武臣!武臣!」


武臣「はい、お嬢」


朱華「この世界は?」


武臣「日本ではありません」


朱華「わかっている。

私の知る限り、

パンデミックが起こったニュースは知らん。

だが、ここは何かしらに感染し、

終末を迎えた世界・・ここまではいいな?」


武臣「はい、ご明察です」


朱華「私が、見えない理由は?」


武臣「彼らの話だと、

お嬢も感染者で、デルタと言う型の感染だそうです」


朱華「特徴は?」


武臣「まだ実験途中だったようなので、

詳細はわからないそうですが、

同じ感染を”してはいる”が「適応」しているそうです」


朱華「なるほど」


朱華は酒を口に運ぶが、

飲み干しまい、一滴も残っていない。

瓶を持ち直し、

首元を瓶で軽く叩きながら、思考を深めていく。


朱華(私が、感染者・・

・・確か傷の治りが異常だった

・・電気の拷問も思ったよりは痛くはなかった

・・ゾンビには視えてはいない

・・視えない?視覚機能があるとは思えない

・・音を立てて気がついた?・・いや)


武臣「お嬢・・」


武臣が小瓶のウイスキーボトルを手渡す。


朱華「ああ」


朱華の頭にいくつかの仮説が浮かび上がる。


・絵に描いたような荒廃した世界

・自分と武臣が同時に存在する

・ゾンビの存在

・スマホにご丁寧にアプリが搭載されている。

・視えないではなく感知できない

・都合のいい感染


朱華「あははははははははははは」


武臣「お嬢?」


朱華「はーあは、馬鹿らしいな!」


武臣は朱華の言いたい事を、理解できない。


朱華「この世界、ゲームだよ!ゲーム!

どんな魔法を使ったかわからないが、

この世界はゲームの世界なんだよ」


武臣は怪訝な顔をするも、

上機嫌になった朱華を見てホッとする。


朱華「おい、これから拠点を作る。

武臣はスマホの機能を学習しておけ!朝になったら起こせ」


武臣は頷き、

ポケットのスマホを取り出す。


朝になり、武臣はガソリンを補充し、

朱華を起こしてコンビニを後にする。


南方に向かい、

ガレッジ(軍用大学拠点)で足を止め一晩過ごす。


朱華と武臣がこの世界に来て、

既にひと月ほど経過していた。


その間、狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)には巻き込まれず、

施設防衛力の恩恵に預かっていた。


朱華「要するに、7日間に一回イベントがあるんだな?」


武臣「はい、お嬢の推察通り、ゲームイベントがあります」


朱華は職業柄怪我をよくしており、

興行した後は安静を取らされ、入院させられた。


暇を持て余した朱華がしたゲームが、

FPSのクラフトゾンビゲーム。

特徴は、7日間に一度血のような月が昇る。

赤い月の日は、ゾンビが狂気を帯び、

全力でプレイヤーを殺しに、

襲い掛かってくる。


クラフトでの拠点作りが、

勝敗の優劣をつける。

こだわり始めると時間が溶ける、

「沼」のようなゲーム。


朱華「まて」


朱華の感覚は常軌を逸脱している。

技を受けるのが仕事のプロレスラーでなければ、

たぶん誰も朱華に傷をつける事は出来ないと思う程に。


朱華がナイフを握りしめ、

身を屈め素早く走り始める。


相手が動きに気が付いた時には、

朱華の姿は何処にも見当たらない。


下を覗き込むと、

朱華の姿が映りこんでくる。


男は攻撃を避け、朱華のナイフが空を斬る。


「チッ」


二人が同時に舌打ちをする。


銃を構えていた男が警戒しながら、

左手でナイフを抜き、握りしめる。


ドンッ


男が銃を突き出し発砲するが、

朱華が位置を変え、最小限で銃口から遠ざかる。


朱華は相手の脇に拳を叩きつけ、

身を低くし、両足をすくいに掛かる。

転倒を防ぐように、朱華の上半身を押さえつけるが、

朱華の勢いが止まらない。


朱華の背中越しに、

ナイフを刺そうと腕を振り叩きつける。


突然、足元に圧力が無くなり、

男は後方に、転倒してしまう。


膝を落とした状態で、

朱華は器用に足を動かし、

床を滑るように距離を詰める。


男が気が付いた頃には、

後ろから左腕をねじり上げられ、

両手で首元を締め上げている。


右手の銃は転倒時に落としていた。


朱華は後ろから胴体を両足で挟み、

身体を密着させ万力のように力を入れていく。


「あ、あ(な、この馬、馬鹿力は・・・)」


男の意識は次第に消える。

朱華は男から離れ、男の姿を見下ろしている。


武臣に視線を向け、

武臣は頷き、男に近づいていく。

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