#90. 羽根の設計図
「というか《設計図β》が別のところにあるのは気になるわね」
「確かに。なんで一緒のところにないんだろ?」
《設計図α》は骨組み部分。
ドラゴンが羽ばたき、突風にも耐えうる強度が求められる。
《設計図β》──羽根も同様のはずだ。
旧アルファスに無いとなると、開発する前に頓挫してしまったのか。
もしくは、羽根は違う技術が必要だった可能性。
「《設計図β》は……あれ、この位置ってボルダーの工房?」
「あぁ〜、あのドワーフNPCのことやね?」
「アルファスとルナデルタで共同開発してたってことかな。元々隣国だったもんね」
『ジークリウスみたいな騎士の鎧を作れる金属加工技術はあったわけだしね』
『ってことは、出来るのは魔法の羽根か?』
『魔鉱石使うあたりぽいな』
『アルファスとルナデルタが協力して片翼を作ろうとしたって……あの古竜は何者なのよ』
『あれは古の時代、アネモレナスは暴虐の限りを尽くしていたレヴァリオスを異界へと追いやってな……旧アルファスで悪魔に召喚されたレヴァリオスはかつての復讐のために暴れていたのじゃよ……』
『ありそう』
「考察もいいけど、残り五時間を切ったわよ」
「えっもう一時間なの!? まずいよ急がなきゃ!」
「相手によっては時間かかるかもだし、とりあえずルナデルタに戻ろっか」
ボルダーが素直に渡してくれることを祈りつつ、五人は《妖精国ルナデルタ》へファストトラベル。
白樹工房へ向かうが──そう、そこまではよかったのだ。
白樹が煌々と火を上げているのを見るまでは。
「も、燃えてる……」
「燃えてるわね」
「燃えてるな」
「どないするんこれ」
「設計図燃えてないよね!?」
根元では複数のNPCによる消火活動が行われ、鍛冶師ボルダーは──アルメネルに正座させられていた。
「貴様はァ! 何度ッ、何度言えばッ……いや何度燃やせば気が済むんだ!?」
「お、落ち着けよアルメネル」
「実は『鍛冶師』じゃなくて『火事師』なのか!? 白樹を燃やすなんて、はぁッ! どれだけ火力を上げてるんだ!」
「しょうがねぇだろ、《魔鉱石》で熱を上げねぇと剣が作れねぇ!」
火元は《魔鉱石》。
理由は、いつも通りのようだ。
「おっちゃん! 設計図! 設計図燃やしてないよね!?」
「うおぉ、なんだ嬢ちゃん」
「羽根の設計図! レナちゃんの……アネモレナスの義翼の設計図だよ! あるんでしょ!」
「あ、あぁ……? そいつは、まぁ、確かにあるにはあるが……」
「どこに!!」
「は、白樹製の箱に仕舞ってある。だがこの火じゃ直に箱も燃えちまうな……」
「どっどどどっ、どうしよう!!」
「落ち着いてツバサ! とりあえず消火しよう」
「だが、《魔鉱石》の魔力が尽きない限り火は燃え続けちまう」
NPC達が水属性魔法で懸命に消火活動をしているが、火は弱まるどころか火力を増していく。
一体どれだけ魔鉱石を使ったのか。
どうにか《魔鉱石》の魔力を使い切らなくてはならない。
その時、カナメが単身──燃え盛る工房へ飛び込んだ。
「カナメ!?」
「耐久力には自信あるから!」
炎に包まれようと、【生命維持装置】の自動回復があれば長時間耐えられる。
炎の中を進み、視線の先には鍛造炉。
中には煌々と青い光を放つ魔鉱石があった。
「【バーンアップ・オーバードライブ】ッ!」
MP全消費。
枯渇したMPを鍛造炉の《魔鉱石》に触れて即時回復する。
これにより、《魔鉱石》は輝きを失い沈黙。
炎も勢いを失い、しばらくして鎮火された。
「ふぃー……MPを使い切れるスキルがあってよかった」
『さすカナ』
『バーチャルとはいえよく飛び込めたな』
『バーンアップで鎮火してて草』
「レヴァリオスの火よりマシですよ──っと、箱発見!」
箱の耐久値は赤ゲージで見た目も黒く焦げてはいるが、中身は無事。
これにて《設計図β》──確保完了。
「カナメちゃんありがとおおおお!!!」
「お、落ち着いてツバサ。まだ素材集めは終わってないよ」
「そうだった。でもこれで半分! 折り返し地点だ!」
残る素材は、火災の原因にもなった《魔鉱石》。
そして《星稀晶》と《嵐飛竜の翼膜》だ。
《魔鉱石》は工房から拝借──というわけにもいかない。全て燃え尽きてしまった。
やはりマップに示された場所に向かうしかないようだ。
だが、時間にはまだ余裕がある。
「次は《魔鉱石》と《星稀晶》を求め、いざ洞窟探索だよ!」
「《黒鉄鋼》の例に倣うなら、またモンスターが待ち構えてるだろうね。できる限りの対策をしてから行こう。目指すはパーフェクトゲームだ」
雑貨屋で有用そうなアイテムをいくつか見繕う。
一番大切なピッケルも、各自しっかりインベントリに忍ばせた。
目的素材の前にスタンバってるであろうボスモンスターが《剣狼》の時のような厄介な特性を持ってないことを祈りつつ、炭鉱夫五人は未開の洞窟へと足を踏み入れた。




