第十一話
真琴抜きで、修行を再開することにしたチームメンバーは、トレーニングルームで各自【魔術式人形】(シュミレーション戦闘をする時に使う動くサンドバック)を相手に戦闘練習をしていた。
朱鷺は時々、練習のついでにメンバーの戦闘を観戦している。
気になっていたのは所沢の戦い方だ。
【特性】を持っていないのに【魔術式人形】の攻撃を悠々と回避し、賺さずカウンター技も決めていた。
【応用魔術】を駆使し、自らの拳に赤色のオーラを纏い右ストレートを【魔術式人形】の腹部に打ち込む。
恐らく攻撃力倍増の魔術を使ったのだろう。
【魔術式人形】が一瞬にして霧散霧消する。
いくら【下級魔術式人形】といえども跡形をもなく消すことは大概の人間には無理だろう。
しかも、所沢は一般人だ。
相当な武道家なのだと改めて実感する朱鷺。
そんな朱鷺の視線を察知したのか、こちらを向いた所沢は手を振った。
「お前のも見せてくれ」
そう言っているように見えた。
いくら結界の中といえども、民家(と言っても超大豪邸だが)の中で【特性】は使うべきじゃないと朱鷺は思っている。
朱鷺の【特性】上、体から大量の【魔導力】を周囲に蔓延させながら攻撃する為、たかが【下級魔術式人形】を相手に【特性】を使ってしまうと、無駄な体力を浪費することになる。
室内で規格以上の【魔導力】を発生させるのも宜しくない。
酸素と同じように、一定の数値を超えた【魔導力】を吸うと【魔導力中毒】になり最悪の場合しに至ることある。
以前、琴羽相手に【特性】を使ったのは、
そのようなことも全て考慮した上で【特性】を使うべきではないと判断した朱鷺は片手から闇属性の【魔導力】纏った波動弾を発射した。
僅かに【特性】の力を混ぜてみたが、【魔術式人形】に的中すると、その場で黒い渦に変化しまるでブラックホールのように【魔術式人形】を吸収してしまった。
それを見た所沢は驚愕していたが、朱鷺にとってはこの程度のこと、大したことない。
各自練習が終了するとすぐに所沢は朱鷺のもとに向かった。
「不知火、お前、さっきの能力なんて言うんだ?」
「まぁ、自慢じゃあないが(自慢)、俺の【特性】、【死神】の力だッ」
自慢じゃないといいながら思い切り決めポーズで返答する朱鷺。
「すげぇな!!!」
「そ、そうか?・・・・・・」
「おう!!! マジかっこ良かったぞ!!!」
予想以上の好リアクションに思わず動揺する朱鷺だったが、話をしているうちになんだか恥かしくなってきた。
元々、褒められ慣れていない朱鷺には、こういう「馬鹿正直熱い系スポーツマンキャラ」は少し相手をしにくい人種なのである。
しかし、この所沢という人間は、朱鷺がそういう人種を苦手としていることに気がついているのか、多少、配慮はしてくれているように思えたので、なんとなくだが「関わるのも悪くない」そう思えた。
約一ヶ月前にこの生徒会に入ってから、関わりが無かった委員が殆どだったが、所沢との会話を通してもっと知り合いを増やし色々な刺激を浴びることも大切だなと気付くことが出来た。
「さてと、今日はこの辺にして、皆、晩ご飯にしましょ」
琴羽の呼びかけに、朱鷺たちは食堂へ移動を始めるのだった。
しかし、
「あれ? 響子お前は行かないのか?」
響子だけが、移動しようとしない。
「あ、ちょっとお腹の調子が悪いだけだから。先に行ってて。私もすぐ行くよ」
「大丈夫か? 先行っとくから、もし何かあったら、連絡しろよ」
「う、うん。ありがとう」
*
「ええ、その通りよ」
『馬鹿な奴らだwww』
「私の見解では、おそらく2日後には完成させるわ」
『まぁ、僕の復活の糧となるんだ。彼女には頑張ってもらわないとね』
「その時には私もちゃんとした待遇を受けられるんでしょうね?」
『まぁ、君は安心して気長に報告を続ければいい。気づかれることは無いよ』「 【Evilemperor・THE・Revive】。成功するんでしょうね?」
『君も心配性だねぇwww 安心してくれ。成功させて見せるよ。その時には、彼を解放する』
「貴方を信じるわ。でも、裏切ったら、許さないから」
『君が僕に何が出来るのかはわからないけれどね・・・・・・』
*
大きな食堂の、大きなテーブルの上に並べられた、大きな皿の上に盛られた、大きな料理を、大きな口をあけて食べる朱鷺。
皆、練習の疲れもあってか、中華料理やイタリアン、和食を関係なしに口へかきこんでいく。
最早、味というよりは美味しいという感覚と腹を満たしていくという感覚しかないのだろう。
沈黙。
ただひたすら食していく。
三人の男子によってわずか数分で大きなテーブルの上の料理は半分になってしまった。
響子が到着した頃には殆ど完食されてしまっていた。
幸い響子はそんなに食べないので量には問題なかった。
「アレだけ用意した料理が一瞬で完食されるとは思ってはいなかったわ・・・・・・」
大量にあった料理は綺麗さっぱり姿を消していた。
「そろそろ練習再開といいたいのだけれど、さっきの練習少しハードだったから、休みたい人は休んでもいいわ」
「んじゃ俺は、晩飯も食い終わったところだし、もう一暴れするか・・・・・・」
「僕も参加させてもらうよ」
「私も観戦だけするよ~」
どうやら皆、参加するらしい。
ここは、俺も参加しておいた方が今後のためになるだろう。
「俺も行く」
少々面倒くさかったが参加することにした朱鷺だった。
琴羽が皆を連れ案内したのは、先ほどとは別のトレーニングルームだった。
「今度はこの部屋で模擬戦を行ってもらうわ」
本番同様の状況を創りだすため、【魔術結界】をはっても維持できる魔導力が流れている部屋だそうだ。
二人一組のペア(響子は除く)になり約一時間模擬戦を行うことになった。
ペアはくじ引きで決めるらしい。
「赤と青があるから、せーので引いてね。いくよ! せーのッ!!」
響子が握っているくじを四人で引く。
「赤だ」
「俺は青だな!」
「僕も青だよ」
「あ、赤になっちゃったわ・・・・・・」
どうやら、琴羽とらしい。
・・・・・・
正直、こうなることは分かっていた気がするが、ここまで御都合シナリオになるとこちらも疲れる。
「じゃあ、俺たちが先にやるか?」
「え、わ、私たちが先に戦うの?」
そもそも、ペアを組んで対戦すると言い出したのは琴羽本人なのだが、今すぐするのかという視線を送ってくる。(嫌だという意思表示)
しかし、そんなことは関係ない。
今やろうが、二人(霞ヶ関と所沢)に先にやってもらおうが、結果は変わらない。
「俺の完全勝利に決まっている」と思う朱鷺。
結局、琴羽の視線などはスルーし、強行突破することにした。
「俺たちからやる」
「・・・・・・」
「なんか文句あるのか? ん?」
「い、いいえ・・・・・・」
勢いでおしきった形になったが、お互い少々準備してから【魔術結界】を張ることにした。
ちなみに、【魔術結界】内は結界外の世界とは世界線が異なる為、実際に結界が張られている面積は関係なく設定した面積になる。例えば、1㎡の土地で結界を張ったとしても、結界内の面積を100㎡に設定していればその面積になるというわけだ。
しかし、これは、魔導力によって結界が維持されている時間のみの話であり、結界が壊れると元の大きさに戻る。
その際、内部にあったものは全て外部へ転送される。(故意に破壊された場合を除く)
内部の状況は結界を張ったと同時に出現するモニターによって観覧することが出来る。
「さぁ、準備も出来たし早速始めようか」
「こうなったら、やるしかないわね・・・・・・」
二人は同時に【魔術結界】を発動する。
「【創造されし新たなる次元よ・構築されし真なる世界よ・今一つとなりて・黄昏の理想郷とし・現世に降誕せよ】」
魔術の発動と共に部屋の床に紋様が現れ紫色の輝きを放った。
発動した二人を囲うように結界が張られていく。いよいよだ。
二人は互いの様子を確認すると、叫んだ。
「「絶対、負けない!!」」
ここに、生徒会トップ二人の決戦が開始したのである・・・・・・




