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第十話

連休初めの早朝。

俺と琴羽、響子、霞ヶ関、所沢は駅の前に集合していた。

数日後に迫る運営委員会との決戦に備えチームメンバーで修行をすることにしたのだった。

チームの中には【魔術(マジック・オ)決戦(ブ・ディサイシブ)】経験者がいないため、経験者に教わりにいくという。

しかし、

「ナンデスカコレ・・・・・・」

朱鷺達(琴羽を除く)は目の前に現れた超大豪邸に驚愕する。

「ここが私の実家よ」

巨大な門いついているセンサーのような物にカードを翳す琴羽。

静かに開いた門。

建物まで何メートルあるだろうか。

それほどまでに大きい家に住んでいた琴羽に驚くしかない朱鷺。

「さぁ、今日から2日間、皆にはここでみっちり修行してもらうわ。【()(どう)()】(【魔術】によって(もたら)される効果を変化させる道具)の類はほとんど揃っていると思うわ。設備も万全の状態にしておいてもらったから、心行くまでレベルアップして頂戴ね!」

張り切る琴羽を横目に一体どんな家なんだろうとある意味、心を躍らす。

門から何十メートル歩いたところで、やっと玄関扉を開ける。

「「「「「お帰りなさいませ」」」」」

沢山の使用人(メイドも含む)が出迎えてくれた。

まるで王族になったような気分だ。

大きな正面階段から一人の女性(と言っても幾許か上にしか見えない)がおりてくる。

「待ってたぞ、琴羽!」

煌びやかな見た目には不釣合いな、男勝りな口調で琴羽を迎える女性。

「ただいま帰りました、お姉さま」

「「「「お姉さまぁ!?」」」」

「いつも家の琴羽が世話になってるな。姉の真琴だ。よろしく!」

元気のいい声で挨拶してくれる真琴さん。

(胸が・・・・・・デカい)

何故、ここまで大きいのが姉妹に固まったのだろうか・・・・・・

まぁそんなことはおいて置いて・・・・・・

「こんにちは。不知火朱鷺です。2日間よろしくお願いします」

「そう畏まるなよ~ こっちが緊張しちゃうだろ」

そういうキャラなんだなとだんだんペースをつかんだ朱鷺。

「ほぉ~ へぇ~ なかなかじゃないか・・・・・・」

朱鷺の顔をまじまじと見る真琴。

「な、なんですか?」

「いやぁ・・・・・・「なかなかタイプだなぁ」ってな☆」

「な、なぁぁあ!?」

思わず動揺する朱鷺。

「お、お姉さま!」

何故か、琴羽まで赤面し、姉の突拍子もない台詞に動揺する。

三人のやり取りを見て響子は琴羽の気持ちを悟ったのだった・・・・・・

魔術(マジック・オ)決戦(ブ・ディサイシブ)】経験者である真琴は今回、実践で必要になる技術(その場の適応力、判断力など)をレクチャーしてくれるらしい。

「実は私も、弥江ノ坂魔術学校の生徒会に所属していたことがあってな」

朱鷺達が入学する一年前に卒業しているようなので、今日いる(というか、生徒会全員)の中で一番生徒会暦が長い響子も知らないことになる。

「副会長として、運営委員会や治安維持委員会とも論争したよ・・・・・・」

「朱鷺くんと同じ立場だったってことだね」

姉は副会長、妹は会長。

しかも、それがどこにでもあるような学校の生徒会ではなく、世界でもトップレベルの弥江ノ坂魔術学校ときたものだから凄い。

「何で、【魔術(マジック・オ)決戦(ブ・ディサイシブ)】をすることになったんですか?」

霞ヶ関の質問に、よく聞いてくれたと言わんばかりに眼を輝かせる真琴。

「その頃生徒会副会長だった私は、生徒の魔術に関する興味をより引き付けて確かなものにする為に、私自身、興味があった【魔術(マジック・オ)決戦(ブ・ディサイシブ)】を体育祭の一環として行うことにしたんだ」

どうやら、体育祭で【魔術決戦】を行い、自分もメンバーとして参加したらしい。

「で、結局どっちのチームが勝ったんですか?」

「・・・・・・・・・・・・ まず最初に大切なのは・・・・・・」

所沢の質問を完全に無視(スルー)する真琴。

負けたんだなと、その場にいる全員が理解した瞬間だった。

「お、おほん! ではまず初めに【汎用魔術】を使用する際の正しいタイミングから教えるぞ。と、言っても、本番では【汎用魔術】なんてほとんど使い物にならないが、一応説明しておく」

ということで、真琴の講義が始まった。

「【汎用魔術】。皆が甘く見がちな・・・・・・実際に強くはないが、甘く見ると痛い目にあう「どんな人でも扱うことのできる魔術」。私も含めこの場にいる全員が、弥江ノ坂魔術学校という魔術を極めたもの、魔術を極めたいものが通う学校に通っているがために、【応用魔術】が使えて当たり前だから、【汎用魔術】が疎かになってしまう。しかし、「誰でも扱える」ということがどれほど強いか、それはこの映像を見れば分かる」

プロジェクターによって映し出された戦闘のシュミレーション映像。

【応用魔術】を扱うことができる魔術師が数名を【汎用魔術】のみを扱う魔術師数十名が攻撃しているシーンをシュミレートしている映像だった。

実際のところ、この映像どおりには行かないかもしれないが、恐らく似たものになるだろうと予測される。

最初のうちは【応用魔術】を使う魔術師サイドが優勢だったが、徐々に【汎用魔術】の圧力(数の暴力)に圧され、最終的には【応用魔術】に必要な魔導力が尽き果て総攻撃をかけられると言う形で戦闘が終了した。

「今、映像を見て分かったように、いくら【応用魔術】といえども「数」には敵わないんだ・・・・・・」

「要するに、「数」で戦えと?」

霞ヶ関の質問に無言でうなずいた真琴。

「でも、相手方もこっちと数は同じよ?」

「そうなんだよなぁ・・・・・・」

(考えてなかったのかよ!?)

真琴は「う~ん・・・・・・」と、考え込んでしまった。

「【儀式】でモンスターを呼び出したらどうだ?」

所沢の意見は、

「いや、残念なことに【魔術決戦】では【儀式】を使用するのはルール違反なんだ」

違反という理由で却下らしい。

何かと難しいゲームだ。

「数」重視の作戦は愚策ということだ。

「結局、一人ひとりが強くならないといけないということだろ」

「ああ。それしかないな」

(じゃあ、それを先に教えてくれよ!?)

しかし、話を聞いていると・・・・・・

どうやら、真琴の魔術師としての技術はそこまで高くないらしい。(少なくとも、今日一緒にいるメンバーの中で考えるなら、最弱だろう)

結局、

「お姉さまがここにいる理由あるの?」

妹に存在意義を問われる始末。

「ある!・・・・・・と想う・・・・・・」

妹の冷たい視線に、自信を失ったようだ。

「あ、あるだろう?」

皆に問うが・・・・・・

沈黙。

「あぁ~ 分かったよ~ 私がここにいる理由なんて無いですよ!」

いじけて部屋を出て行く真琴を尻目に、肩を落とす琴羽。

「ははは・・・・・・」

その光景を苦笑いしてみるしかないメンバーは、修行がこんな調子で大丈夫なのだろうかと心配するのだった。

「うぇ~ん うぇ~ん。琴羽にはみられたよぉ・・・・・・」

くさい嘘泣きを見せながら真琴は自分より少しばかり背の高い男に泣きついた。

「・・・・・・はぁ・・・・・・」

呆れて返事もせずため息をつく男。

「ひ、ひどい! 私ほんとに泣いちゃうぞ!」

「勝手にしろ・・・・・・」

男は吐き捨てるように言い放った。

「お前、それが彼女に対する態度か!?」

涙目になりながら訴える真琴の手を払い落とした男は、

「今は仕事中だ。お前の話を聞いている時間など無い」

淡々と、冷静な声音で囁くように言った。

「ちぇっ・・・・・・ケチ・・・・・・」

「仕事が終わったら聴いてやる」

そう言うと、男は仕事を再開するのだった・・・・・・


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