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 第十二章 消えた二つの力

第十二章「消えた二つの力」を公開しました!


今回の物語では、聖剣教団に大きな異変が起こります。


ローディスの死後、修復施設へ運ばれた聖剣グランセリオ。そして、かつてリュウガとの戦いで折れた聖剣アストレア。


なんと、**二本の聖剣から聖なる力が完全に失われていた――。**


いったい、消えた力はどこへ向かったのか?


一方、リュウガは剣王ヴァルド・レインのもとで修行を続け、新たな技《ムーンバースト》を発見します。


さらに、セレナの前には聖剣教団の捜索隊が現れます。


そして、その中にいたのは――かつての友人、クラスリスでした。


なぜ彼女は聖剣使いになったのか。

二人の再会は、これからどんな展開を生むのか……。


それぞれの場所で動き始める、新たな謎と運命。


ぜひ、第十二章「消えた二つの力」を読んでみてください!


感想や応援コメントもいただけたら嬉しいです!


**次章もお楽しみに!**


三國ユウ

挿絵(By みてみん)

 朝日が昇る早馬が行き交う


 聖剣教団本部――。


 聖剣修復施設には、朝早くから慌ただし

い足音が響いていた。


「こちらです!」


 数人の兵士が、担架を運び込んでくる。


 その上に横たわっていたのは――傷だらけのローディスの遺体だった。


 そして、その傍らには一本の聖剣が置かれている。


 傷ついた刀身。


 ところどころに亀裂が走った聖剣。


 グランセリオ。


「ローディスの遺体は安置所へ」


「グランセリオは修復室へ運べ!」


 兵士たちは指示を受け、それぞれの場所へ散っていく。


 グランセリオが修復室へ運び込まれると、一人の男が歩み寄った。


 聖剣修復担当研究員――セドリック・ヴァルティア。


 長年、聖剣の修復と構造を研究してきた男である。


「グランセリオ……」


 セドリックは修復台に置かれた聖剣を見つめた。


「まずは損傷状態を確認する」


 手袋をはめ、慎重に刀身へ触れる。


 刀身の傷。


 内部の亀裂。


 聖なる力の流れ。


 一つずつ確認していく。


「損傷は大きいが……修復そのものは可能だな」


 セドリックはそう呟いた。


 だが――。


「……ん?」


 触れていた手が止まった。


「聖力測定を」


「はい!」


 助手が測定器を動かす。


 しばらくして、結果が表示された。


「……反応がありません」


「もう一度だ」


「はい」


 再測定。


 しかし、結果は変わらなかった。


 セドリックの眉間に皺が寄る。


「おかしい……」


 聖剣には、本来、聖なる力が宿っている。


 その力がある限り、刀身には淡い光が浮かぶ。


 それは聖剣である証の一つでもあった。


 だが――。


 グランセリオの刀身には、その光がない。


 ただの剣のように、鈍い鉄の色をしている。


「……聖なる光が消えている」


 助手が呟く。


「いや……」


 セドリックは首を横に振った。


「光だけではない」


 もう一度、グランセリオへ手を添える。


「聖なる力そのものが……失われている」


「……え?」


 修復室に沈黙が落ちた。


 聖剣の力が弱まることなら、過去にも例はある。


 だが――。


 完全に失われる。


 そんな事例は、セドリックの知る限り存在しなかった。


「あり得ない……」


 その時だった。


 修復室の扉が開いた。


「セドリック研究員、大変です」


 駆け込んできたのは、女性の研究員だった。


 ミレイユ・セラフィース。


「アストレアについて報告があります!」


「アストレア?」


 セドリックが振り返る。


「はい!」


 ミレイユは手にした資料を強く握っていた。


「アストレアの聖力を調査したところ……」


 そこで言葉が止まる。


「どうした?」


「聖なる力が……完全に消失しています」


 セドリックの目が見開かれた。


「……何?戻ってきた当初は聖なる力はわわずかながら残ってたはずだぞ」


「そうなのですが、今朝光が無い事に気付き測定したところ」


 ミレイユは首を横に振る。


「完全に……なくなっています」


 セドリックはグランセリオへ視線を戻す。


「……グランセリオも聖なる力がないんだ」


「えっ、グランセリオもですか?」


 二人は顔を見合わせる。


 これまで聖剣を研究してきた二人にも、理解できない現象だった。


「二本の聖剣が……同じ状態に?」


「そんな」


「原因は?」


「現時点では……分かりません」


 そこへ修復施設担当の教団の司祭が入ってきた。


「報告は今聞こえていた」


 二人の研究員が振り返る。


「聖剣の力が消えたというのは事実か?」


「間違いありません」


 セドリックが答える。


「原因は?」


「まだ解明できていません」


 司祭はしばらく黙り込む。


 そして――。


「聖剣保管庫にある全ての聖剣を調査しろ」


「全て……ですか?」


「そうだ」


 司祭は強い口調で命じる。


「刀身の状態」


「聖なる光の有無」


「聖力の量」


「契約者との繋がり」


「全て確認しろ」


「異常がない聖剣も含めてだ」


「分かりました!」


 研究員たちが一斉に動き始める。


 聖剣保管庫へ向かう者。


 測定器を準備する者。


 資料を集める者。


 修復施設は一気に慌ただしくなっていった。


 だが――。


 誰も知らない。


 失われた聖なる力が、どこへ向かったのか。


 そして、それを取り込んだ存在がどこにいるのかを。


    ムーンブレイド。


 教団の一部しかその名は知らなかった。


 ◆


 その頃――。


 教団本部から遠く離れた場所。


「もう一度だ!」


「はい!」


 リュウガはムーンブレイドを構えていた。


 その前に立つ男――剣王ヴァルド・レイン。


「身体の中の魔力を感じ流せ!」


 リュウガがムーンブレイドへ魔力を流す。


「違う!身体の中に感じるだろ聖剣に選ばれたんだ扱うだけの魔力は持ってるはずだ」


 ヴァルドの声が飛んだ。


「押し込むな!」


「身体へ流せ!」


「はい!」


 リュウガは歯を食いしばる。


 何度も失敗してきた。


 ムーンブレイドの力は強い。


 その力に、まだ身体が追いついていない。


 だが――。


 修行を重ねるたび、少しずつ変化が現れていた。


 剣の力が身体を駆け抜けても、以前ほど身体が振り回されなくなっている。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 魔力と身体がムーンブレイドに馴染んできていた。


「……いいぞその調子だ」


 ヴァルドが呟く。


「最初より、ずっと魔力の流れが安定している」


 リュウガは荒い息を吐きながら頷いた。


「はい……!」


 ヴァルドはリュウガの構えを見る。


「ゼインは、お前に剣士としての土台を作った」


「土台……?」


「ああ」


 ヴァルドは頷いた。


「構え」


「足運び」


「重心」


「間合い」


「斬撃の軌道」


「どれも剣士として必要なものだ」


 リュウガは黙って聞いている。


「ゼインには、聖剣へ魔力を流すための専門的な知識があるわけじゃない」


「だが――」


 ヴァルドは少し笑った。


「あいつは、お前の身体に徹底的に剣術を叩き込んだ」


「剣を扱うための身体そのものを作ったんだ」


 リュウガはムーンブレイドを見る。


「俺の……土台」


「そうだ」


 ヴァルドは頷く。


「その土台があったからこそ、お前は魔力の流し方を知らなくても、ムーンブレイドの力を引き出すところまで辿り着いた」


「そして――」


 ヴァルドは少し遠くを見る。


「ムーンスラッシュまで引き出した」


 リュウガの目が少し見開かれる。


「ムーンスラッシュは、ただ剣を振って出せる技じゃない」


「聖剣の力を引き出す知識がなくても、剣術だけでそこまで辿り着かせたか……」


 ヴァルドは小さく息を吐いた。


「……やはりゼインは大した男だ」


 その声には、かつて共に旅をした男への感慨が滲んでいた。


「師匠が作った土台があるから、俺はここまで来られた……」


「その通りだ」


 ヴァルドは頷く。


「だから、ここから先はわしの役目だ」


「ゼインが作った土台に、わしが聖剣に魔力の流し方を教えてやる」


「ゼインが基礎なら、わしの修行は応用編だ」


「もっとムーンブレイドの力を引き出せるようにする」


「お願いします!」


 リュウガは強く頷いた。


 その時だった。


 身体の奥を、何かが走り抜けた。


「……!」


 リュウガの目が見開かれる。


 ムーンブレイドから伝わってくる力。


 それまでとは違う。


 まるで剣そのものが、何かを伝えようとしているようだった。


 頭の中に――。


 一つの光景が浮かぶ。


 月。


 白い光。


 ムーンブレイドへ集まる力。


 そして、それが一気に解き放たれる。


「……」


 リュウガは、その光景を見つめていた。


 次の瞬間。


 頭の中に、一つの言葉が浮かんだ。


   ムーンバースト。


「……ムーンバースト」


 リュウガの口から、自然と言葉が漏れた。


「何?」


 ヴァルドが振り返る。


 リュウガ自身も驚いていた。


「今……頭の中に」


「技のイメージと一緒に……名前が」


「名前?」


「はい……」


 リュウガはムーンブレイドを見る。


「ムーンバースト……って」


 ヴァルドは目を細めた。


「わしが教えたわけではない」


「はい」


「なら――」


 ヴァルドはムーンブレイドを見つめる。


「ムーンブレイド自身が、お前に伝えたのかもしれんな」


 リュウガは剣を握り直した。


「……試してみます」


「ああ」


 リュウガは身体に魔力を巡らせる。


 剣へ流す。


 今までとは違う。


 力を一つに集める。


「――はあああっ!」


 リュウガが踏み込んだ。


 ムーンブレイドを振り抜く。


 瞬間――。


 巨大な月光の斬撃が放たれた。


 ――ズガァァァンッ!


 前方の巨大な岩が吹き飛ぶ。


 地面が震えた。


 しばらくして、土煙が晴れる。


 岩には深い斬撃の跡が刻まれていた。


「……」


 リュウガは荒い息を吐く。


「できた……」


 ヴァルドは岩を見つめる。


「放ち方は、分かったみたいだな」


「はい!」


 リュウガの顔に笑みが浮かぶ。


 しかし――。


「だが、技の精度はまだまだ低い」


「……え?」


 ヴァルドは斬撃の跡を指差す。


「威力は申し分ない」


「だが、魔力の流れが途中でぶれている」


「狙った場所へ正確に当てられていない」


 リュウガは岩を見る。


 確かに斬撃は真っ直ぐではなかった。


「ムーンバーストは、ただ魔力を放てばいい技じゃない」


 ヴァルドは続ける。


「魔力の量」


「流す速度」


「剣を振る角度」


「身体との連動」


「全てが噛み合って初めて、本来の威力になる」


 リュウガは頷く。


「まだ完成じゃない……」


「当然だ」


 ヴァルドは笑う。


「だが、放ち方が分かった。それだけでも大きな一歩だ」


 そして、再び構える。


「だから――修行を続けるぞ」


「はい!」


 リュウガも構え直す。


 ヴァルドはムーンブレイドへ視線を向けた。


「それに――」


「わしも、まだまだムーンブレイドの力を研究したいしな」


 リュウガが少し驚いた顔をする。


「剣王でも、まだ分からないことがあるんですか?」


「当然だ」


 ヴァルドは笑う。


「このムーンブレイドは、わしがこれまで研究してきた聖剣とは何かが違う」


「だからこそ面白い」


「お前がムーンブレイドを使いこなしていく過程も、わしにとって重要な研究になる」


 リュウガは頷いた。


「なら……俺も協力します」


「ああ」


 ヴァルドは満足そうに頷いた。


「修行も研究も、まだ始まったばかりだ」


「よし、もう一度だ!」


「はい!」


 二人の修行は続いていく。


 ムーンバーストを完全に使いこなすために。


 そして――。


 ムーンブレイドに秘められた謎を解き明かすために。


 ◆


 その頃――。


 別の場所では、一人の少女が街道を歩いていた。


 セレナ


 肩には旅用の鞄。


 その中には、何冊もの古文書が入っている。


 その中でも、一冊だけ特別なものがあった。


 先日、ある魔法使いから受け取った古文書。


 そこには、魔力をさらに高める方法が記されている。


 セレナは何度も読み返していた。


 しかし――。


「……やっぱり、私だけでは解読できない」


 古文書には、古い文字と複雑な術式が記されていた。


 魔法の知識があるセリナでさえ、完全には理解できない。


「エリオスさんなら……」


 セレナは古文書を閉じた。


 古代の知識に詳しいエリオスさんなら、この内容を解明できるかもしれない。


 それに――。


 もっと魔力を高めたい。


 まだ自分には、知らない力がある。


 その可能性を確かめたい。


「早く戻らないと」


 セレナは再び歩き始めた。


 目的地はエリオスのもと。


 古文書を見せ、その内容を解き明かしてもらうために。


 だが――。


 しばらく歩いたところで、セレナは足を止めた。


 前方に複数の人影が見える。


 武装した集団。


 そして、その胸元に刻まれた紋章。


 それを見た瞬間、セレナの表情が変わった。


「……教団」


 聖剣教団の捜索隊。


 セレナは反射的にフードを深く被った。


 教団はまだ、自分が生きていることを知らない。


 余計な接触は避けるべきだった。


 セレナは道の端へ寄り、そのまま通り過ぎようとする。


 ――その時。


「そこの女!」


 声が響いた。


 セレナの足が止まる。


「止まれ!」


 捜索隊の先頭に立つ女騎士が、セレナを見つめていた。


 腰には聖剣。


 鋭い眼差し。


 セレナは振り返らない。


 そのまま歩こうとする。


「待て!」


 女騎士が近づいてくる。


「今……お前から魔力を感じた」


 セレナの胸が跳ねた。


 フードをさらに深く被る。


 だが――。


 女騎士は、セレナから目を離さなかった。


「その魔力覚えがあるわ幼いころ感じた事がある」


 女騎士の表情が変わる。


 警戒から――。


 驚きへ。


「……そんな」


 セレナは息を殺す。


 女騎士はじっとセレナを見つめていた。


 その魔力。


 その雰囲気。


 遠い記憶の中に残る少女。


 まだ自分たちが教団で暮らしていた頃。


 何でも話せた。


 何でも相談できた。


 大切な友人だった少女。


 忘れるはずがない。


「……まさか」


 女騎士が一歩近づく。


 セレナはゆっくり顔を上げた。


 二人の視線が重なる。


 女騎士の目が大きく見開かれた。


「……セレナ?」


 そのなぜ彼女は聖剣使いになったのか名前が、静かな街道に響いた。


 セリナの身体が凍りつく。


「……あなた……」


 かつての友人。


 今は――。


 教団の聖剣使い。


 二人は言葉を失ったまま、互いを見つめていた。


 ――第12章 終―

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


今回の章はいかがでしたでしょうか?


物語も少しずつ大きく動き始め、新たな出会いや戦い、そして聖剣と魔剣を巡る謎が、これからどのように物語へ繋がっていくのか――。


楽しみにしていただけたら嬉しいです。


感想や応援コメントなども、お気軽にお寄せください!


それでは、次の章でまたお会いしましょう。


三國ユウ

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