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猫耳パーカー少女あらわる

不思議な夢を見た日の帰路のことだった。いつも通り陽向に口説かれながら家に帰っていると、陽向が突然女子高校生とぶつかった。


「うわっ、すみません!」

「こっちこそごめんなさい、ですにゃ」


陽向がすかさず謝罪すると、相手も謝罪し返した。とんでもない語尾付きで。

ですにゃ、だと? やばい人と陽向がぶつかってしまったかもしれない。陽向を守らなければと思って急いで立ち塞がろうとしたが、その女子高生が俺たちの方に振り向いた瞬間体が動かなくなった。嘘だろ、アンニュイな美少女が猫耳パーカーを着ている。


「猫を追いかけてたから周りをよく見てなかったにゃ。蓮華のせいだにゃ」


蓮華? めちゃくちゃ聞き覚えのある名前だ。まさかこの女子高生が女神の言っていた二条蓮華か?


「あ、もう猫いなくなっちゃったからにゃ、って言わなくてもいいや」


にゃは恒常の語尾ではないのか。陽向の方を見ると困惑し切った様子で眉を下げている。俺目線だとゲームの中の不思議系ヒロインとしてここまで振り切ったキャラ付けがされているんだろうな、ということが分かるが何も知らない陽向視点だと美少女だけではカバーしきれないレベルの不審者に違いない。


「にゃ、は猫がいるとき限定なのか?」


どうしても気になって質問してみると、猫の気持ちになって仲良くなるためだと返された。語尾ににゃを付けるだけで猫と仲良くなれるなら猫を飼っている人と猫の保護活動をしている人は誰も苦労しない。


「にゃ、をつけて喋ってたら仲良くなった」

「へぇ、すご......」


俺と会話しながらも、視線はずっと陽向の方に向けられている。さすが主人公とヒロインだ、なんて感心していると蓮華がいきなり陽向にずんずん近付いて思いっきり匂いを嗅いだ。


「っ!?」

「何やってんのお前!?」

「すんすん、うん。キミ、猫に好かれる匂い」


こいつヤバい、いくらヒロインだとしても流石にこれは看過できない。そう思って、怯え切って硬直してしまった陽向の肩を掴んで急いで蓮華から引き剥がすと、蓮華は俺を一瞥してから邪魔しやがって、と言いたげに眉を顰めて唇を尖らせた。その態度に、精神年齢アラフォーの俺も流石にムカついて睨み返したが無視されてしまった。


「キミを蓮華の秘密基地に連れて行ってあげる。猫ちゃんいっぱいいて楽しいよ」


唐突な誘い。

え、俺は? なんて思いながらいきなり秘密基地に誘われた陽向の方を見ると、間髪入れずに陽向は首を横に振った。推定二条蓮華よ、なんでこの誘い方で承諾してくれると思ったんだ。


「いや、そんなこと言われましても......」

「えー、残念......あ、別の猫発見、待ってにゃ〜」


断られて一瞬寂しそうな顔を見せたが、猫が道を横切った途端にそっちに意識が持っていかれたようで、すぐに走り去っていった。その様子を二人で呆然としながら眺めていると、蓮華の揺れるスカートのポケットから何かが落ちるのを目撃した。いくらヤバい人だとしても、落とし物を放置するのは流石に良くない。仕方なく落とし物の方に向かって拾い上げると、それはハンカチだった。もちろん猫柄の。よく見ると布製のタグにマーカーで何か書かれている。


「なにこれ、二条蓮華......?」

「やっぱりそうか......」

「友樹?」


蓮華と名乗る少女が二条蓮華と書かれているハンカチを落としていった。つまりあの猫耳パーカーの高校生はおそらく攻略対象である二条蓮華本人。

女神から二条蓮華という名前を聞いたときはお嬢様系ヒロインを想像したが、まさか電波系猫好きヒロインだったとは......


「き......友樹!......これどうする?」

「......あ、ぼーっとしてたわ、ごめん。そうだな......とりあえず交番行くか」

「近所の交番ってどこだろう」


考え込みすぎて話しかけられていることに気が付かなかった。危ない、陽向の前では変なところを見せないように気を付けないとな。


「近所の交番まで徒歩15分だって」

「うわ〜、微妙に遠いな......」


東土野駅 交番で検索した陽向曰く近所の交番まで徒歩15分。


「多分だけどさ、さっきの二条さんって人......土野高校だよね?」

「ああ、多分......」


ここから土野高校までは徒歩10分、交番より土野高校の方が近い。それに女神が夢の中で使っていた干渉という言葉。結論は言う前からわかり切っている。


「土野高校に届けようか」

「......だな」


貴重な女神の力とやらを使ってでも陽向を土野高校に行かせたかったのか。どれだけ宮井桜推しなんだよ。

でも、ひょっとすると土野高校にいるヒロインと出会うことで俺以外のやつに恋する可能性もあるよな?

女神の策略通りになるのは癪だが、攻略対象外である俺に恋をし続けるなんて可哀想だからこの機会に良い出会いがあるといいが......

なんとなくキャラ紹介

二条蓮華(にじょうれんげ)

猫耳パーカーという高校生にしては風変わりな見た目の美少女。

猫をこよなく愛していて、登校中に野良猫を追いかけて遅刻することもしばしば。

とある重大な秘密を抱えている。

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