61.十年前
あけおめ更新です。
「はぁぁぁ~~~」
十年前、第四陰陽寮にて。
無精髭が目立つ男が長机に肘を立て、溜め息をついていた。
「……瀬流さんはどうしたんだ?」
「今日息子さんの入学式らしいわよ~」
「あぁ、それで」
御井は須藤に理由を聞いても特に驚かない。第四陰陽寮ではこれが日常だったからだ。
「だってぇ~」
「瀬流さん、仮にも隊長なんだからしっかりしてくださいよ」
「"仮にも"って、御井ぃ酷くない? 息子の入学式行けなくて傷心してるんだよ? もうちょい優しくしても良いんじゃない?」
「しません」
「あ、瀬流さん。テッシュ取って~」
「酷ぇ部下達だなぁ」
第四陰陽寮隊長、瀬流 普吾。
白と水色の陰陽服がトレードマークの祓い目。無精髭が目立つダメ親父。そして"重度の親バカ"だ。
そんな普吾が愛する息子の入学式に行けなかったのにはある理由があった。
「それにしても今どき悪魔崇拝なんてしてる集団なんているんですねぇ。ボリボリ」
「菓子食いながら紙に触るな」
「えぇ~」
悪魔と人間の歴史は長い。
紀元前辺りでは「力を持つ悪魔を崇拝する」なんていう行為は珍しくなかった。だが、エクソシストによる粛清により数を減らし、悪魔崇拝はこの世から姿を消えた……はずだった。
何故かここ一ヶ月近く、「黒服を着た怪しい集団の目撃情報」が急激に増加したのである。過去にもこのような悪魔崇拝モドキはあったのだが、すぐに対処する事が出来ていたのだが、今回は違う。いくら調べても黒服集団の正体が掴めないのだ。
お陰様で陰陽師達は常に警戒態勢、隊長の普吾も強制出勤になる始末。
「何が悪魔崇拝だ、俺の人生の楽しみを奪いやがって……呪い殺してやる!!」
「その意気ですよ、瀬流さん」
「まぁ、そこら辺はアンタらで頑張ってね~。私、戦闘力皆無だし」
「お前……」
「仕方ないじゃない。私、か弱いレディですもの」
この頃の須藤はまだキメラフォームを開発していない為、幼女の姿で活動していた。戦闘力は皆無だが、一応魔眼使いの為陰陽寮で働いているのだ。
「まぁまぁ、そう責めるな。資料作りで貞美ちゃんの右に出る奴は居ねーんだから」
「そーよ!! それにね、今日は最新情報を手に入れたんだから感謝してよね!!」
「こいつ……」
「えーと、確か黒服集団の組織名が…………」
「"異界の扉"って言うんだぜェ、お嬢ちゃん」
「そうそう、異界のッ!!」
「誰だ、お前」
「俺? 俺は兎。異界の扉司祭、(出珠 兎)。よろしくゥ!!」
三人しか居なかった部屋に突然現れた黒服の男。おちゃらけながら話しているが、三人の警戒が解ける事は無い。
「あぁ、よろしく。ちょうどお前らに会いたかったんだ」
「情熱的だなァ、照れちまうよ」
「まったく、随分と余裕そうだな。そんなに自分の腕に自信があるのか?」
「いやァ全然、これっぽちも無い」
「……は?」
「そォ!! 何を隠そう俺の役目は____"時間稼ぎ"さ」
そう呟いた瞬間、"ドカァン!!!!"と何処かから爆発音が鳴り響く。異界の扉による第四陰陽寮襲撃は既に始まったのである。
「爆発ぅ?! 鴉目は何して」
「御井!! とっととコイツを」
「はっはっはァ!! 戦略的撤退!!」
「ぶっ飛ばし……はぁ?」
どうやら兎は本当に戦う気が無いらしく、爆発音を聞いた瞬間そそくさと逃げ出してしまった…………歪な種を持って。
「何だったんだあいつは……取り敢えず早く爆発した所に……御井?」
「…………憎い」
「お前何言って……ッ、あいつの仕業か!!」
そう、出珠 兎はアンドラスの魔眼使い、最高の囮役だ。
アンドラスの魔具【不和の種】の影響を受けてしまった御井は「兎を殺しに行きたくてしかたない」、とても普吾に付いて来れる状態ではなかった。
「貞美ちゃん、御井のサポートを頼む」
「瀬流、さ……」
「ちょ、ちょっと。瀬流さんはどうするのよ!!」
未だ混乱している須藤に、普吾は悪ガキのように笑った。
「俺を信じろ」
と言う訳で憂君のお父さんは「娘に嫌われそう」キャラです()
やるときゃやるダメ親父ですね。
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