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60.襲撃開始

お久しぶりです。

仕事内容がレジ打ちかと思ったらガチ農業だった幽です。

 満月の光が暗闇を照らしている。


「こんな夜遅くにお参りですか? 杉江先輩」

「そっちこそ、エスコートにしては多すぎるんじゃないかしら」


 人々が眠りにつくその時、本栖神社の表では二つの勢力が対立していた。


 一つは黒い着物を着た青年、柚子率いる陰陽部隊。

 もう一つは憂率いる同盟組。だが、この場に居るのは杉江()()()()


「俺はてっきり憂達と一緒に来るのかと思ってましたよ」

「私も思っていたわ......でも、"用があるから一人で行け"って、酷いと思わない? ま、大した問題じゃないから別に良いけど」


 杉江の煽るような物言いに数人の陰陽師は顏を顰める。だがその余裕そうな態度が崩れる事は無い。


「手加減なんてしませんよ」

「いいから始めましょう。結果なんて____とうに見えているもの」




~~~~~




「まったく……この街には殺人鬼しか居ないのかしら」


 本栖神社の裏側、全身布に覆われた不審者は悲惨な現状を目の当たりにし溜め息をつく。

 一言で言えば「赤」、粗く切り裂かれた死体とボロボロになった肉片がそこら辺に飛び散っていた。待機していたはずの陰陽部隊が()()()()()()()()のである。


 そして、惨状の中心地に座り込む一人の赤い少女____血濡れた少女が死体を食べていた。両手で掴み取った内臓は口元を赤く汚し、純白であったであろうワンピースは返り血で真っ赤に染めている。


「あーちょっといいかしら、お嬢ちゃん」

「……ん、何ですか? もしかしてこの人達のお仲間さん?」

「そうね。一応私の部下なんだけど……殺したのはアナタで良いのよね?」

「はい!! 久しぶりにお腹いっぱいになりました!!」


 あたかも日常会話のように返事を返す血濡れの少女。穢れを知らない無垢な顏が血肉をより引き立たせていた。

 その様子に須藤は「何故内臓をぶちまけるような殺し方をしたのか」が分かった気がした。それは"食べる為"、少女は自分が食べやすいように死肉を細々にしていたのだ。


(いっぱいって、コレどう考えても指定災害種(ヤバい案件)よね。ONEやらKILLERやら、何でこんなヤバい奴らばっかり会うのかしら…………)

人肉喰らい(CANNIBAL)……新種かぁ」

「? どうかしたんですか?」

「いいえ……何でもないわ」


 子供のような話し方と引き起こした惨状のギャップに須藤の頭をバグらせる。

 やがて須藤は覚悟を決めた顔付きで少女を見つめた。


「陰陽師、須藤 貞美として____アナタを殺すわ」


 暫定指定災害種人肉喰らい(CANNIBAL)に宣戦布告をすると、その言葉に赤い少女、冬木の無垢は一瞬にして狂気に塗りつぶされる。


「それはぁ…………とぉぉぉぉぉっても楽しみですぅぅぅ!!!!」


 目がギラリと開かれ、口から血濡れた歯を見せつける冬木。ようやく現れた死神に心から興奮していたからだ。

 因みに、その変貌に須藤がドン引きしたのは言うまでもないだろう。




~~~~~




 紫苑の花束に向かって祈っていると、背後から"ザッザッザッ"と誰かの足音が聞こえて来た。


「お袋さんとの話は終わったか、ONE。いや、瀬流 憂」


 足音の正体は御井、だがそれは憂の想像通りだった。「柚子との戦いで俱鳥那高校の監視が付いている」と考え、わざと誘き出したのである。死者への祈りも今の憂には"敵を殺す為の道具"にしかならない。


「……」


 言葉は返さず、鋭い目つきで御井を睨む憂。


「あぁ、勘違いしないでくれ。別に戦いに来た訳じゃねぇ」


 御井は両手を上げ、自分に戦闘意思が無い事を伝えるが憂の警戒が解ける事は無い。


「俺の名前は御井、陰陽師のまとめ役をしている。少し話を」

「『黙れ』」

「ッ……!!」


 それでも強引に話を進めようとする御井であったが、その一言だけで口が塞がり冷や汗が流れ出した。腹底から冷たくなるような重い声が格の違いを嫌と言う程分からせてしまうのだ。

 左手に【黒鱗】を浮かべ、全身に黒い衝撃波を纏う憂。その姿はまるで憂からどす黒いオーラが溢れ出しているよう。


「もう何も聞きたくねぇ…………お前を、殺」






「瀬流 ()()



「…………何?」


 それは、本来このタイミングで聞くはずの無い"父親の名前"。

 何故コイツが父親の名前を知っているのか? いや、そこはどうでも良い。母親が死んだこの場所で、もっと前に死んだ父親の名前を言ったのは、いったい何故…………


「何で、父さんの名前を」

「やっぱりお前は……普吾さんの息子なんだな」

「父さんを知っているのか?」


 御井の話に身に纏った衝撃波をゆっくりと解除する憂。しかし、御井は何処か悲しそうな顔をしていた。


「普吾さんはな、俺の命の恩人なんだよ」

「…………は?」



「第四陰陽寮"前"隊長、瀬流 普吾。お前さんの親父は____陰陽師だ」



 そうして御井は口から零れる様に"瀬流 普吾"について、語り始めた。




ついに最終決戦!!……の前に回想です。

仕事が年末くらいには落ち着くのでしばしばお待ちください。。。


感想評価ブクマが作者の生きる糧です。

Twitter→@iu_331

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