57.冬木の家
「陰陽寮襲撃」編開幕です。
「全生徒が直定規のような刃を所持……以前お前が対峙した傀儡卿に違いないだろう」
「ねぇ、柚子君一人で大丈夫なの? アイツ並の魔眼使いより何倍も厄介よ?」
柚子に高校へ向かうよう指示した後、御井は須藤と共に現状確認をしていた。
傀儡卿、「唯の人間を魔眼使い並に強化する」魔眼使い。その恐ろしさを身を以て知っている須藤は柚子だけでは対処出来ないと警告するが、それ以上に御井は警戒すべき点があると考えていた。
「恐らくこの騒動は囮、奴らの目的は他にあるだろう」
「目的って......予想はついてるんでしょうね?」
「あぁ。それに既に手遅れだって事もな」
「ちょっ、手遅れって!!」
「ONEの契約者の名前、言えるか?」
「……ハァ? 何で急に」
御井の問いに困惑する須藤。殺害対象である野良魔眼使いの名前など、一々覚える必要が無いからだ。例え相手が指定災害種の契約者と言えど、重要なのは悪魔であり人ではない。
とは言え今回は何故か鴉目の伝達に不備があり、正確な情報が手に入らなかった事も理由に含まれるのがそれはひとまず置いておこう。
「知ってる訳ないじゃない。ま、どうせしょうもない」
「瀬流 憂だ」
「名前……せる? え、せるって、もしかしてあの"瀬流"なの?!」
「血縁関係も調べさせた。あの人の息子で間違いない」
「そんな、そんなことって……!!」
御井の話に須藤は酷いショックを受け、その場に蹲る。まるで「その苗字だけはありえない」とでも言いたげに。
「ONE、異界の扉、瀬流…………十年前と同じだ」
そう言って椅子から立ち上がった御井の顏は何かを決意していた。
「須藤。俺は今から出かけて来るから代理を頼む」
「隊長......何処に行く気?」
「全陰陽寮に協力を要請する」
~~~~~
俱鳥那高校から徒歩一時間程の距離にある住宅街。
その中でも青い屋根の白い家に憂と杉江は用があった。
「ここよ」
「ここか」
フォラスの魔眼を使って特定した冬木の現在地は「冬木の家」。憂に殺されない事が余程響いたのか、あの日から冬木は自宅に引き籠っているらしい。
そんな人物が素直に入れてくれるとは思えず、案の定ドアノブを捻ったりチャイムを鳴らしたりしても開く気配は無かった。
「杉江、ドアノブを壊せ」
「はぁ……分かったわ」
フォラスの右腕を使って強制的に扉をこじ開けるとその瞬間、隙間から生温い血の匂いが家の中から溢れ出した。
「あいつの魔眼って確か【肉を消費する】、だっけか?」
「まぁ、そういう事でしょうね」
嗅ぎ慣れた血の匂いは鼻腔を擽り、顏を顰めさせる二人。
冬木の魔眼と血生臭い匂い......そこから導き出されるのは一つ、彼女は今もなお"食事"をしているのだろう。
「行くぞ」
「えぇ」
しかし今更憂達がそんな事に怖がる事もなく、そのまま冬木の家に侵入した。
中の様子は「悲惨」と言う言葉が良く似合っていた。目につく全ての物が壊されており、至る所に血が飛び散っているからだ。
「こっちよ」
そう言って真っ赤に染まった階段を上がる憂と杉江。血は一つの道になっており、おそらく死体を引きずった痕なのであろう。その血は「咲理」と書かれた扉で途切れていた。
「うっ、これは……ッ」
扉を開けると、今までの臭いとは比べ物にならない程の濃厚な血と生肉の臭いが二人に襲い掛かった。淀んだ空気に堪らず顏を隠してしまったが、それでもと目を開く憂。
すると、瞳に映り込んだのは一面見渡す限りの"赤"だった。
「あはっ。お二人とモ、お久しブりですね…………!!」
赤い部屋の中心には身体を赤で染めた一人の少女が床に座って居る。
その正体は冬木……否、冬木だったモノ。
髪はボサボサで三つ編みも解けており、トレンドマークの眼鏡もひび割れていた。憂の言葉が止めとなった冬木は元々不安定だった精神が完全に崩壊してしまったのである。
「お二人に紹介しマすね!! こっちが私のお父さんで、あっちが私のお母さんデす。二人とも優しくて美味しクて最高のかゾくです……ッ!!」
そう言って指差したのは雑に置かれた二つの死体。血の気はすっかり無く、二つとも腸が零れ肋骨が見えている。冬木の食事相手は彼らだと容易に想像がついた。
そう、精神が崩壊した冬木は今まで我慢していた自分の親さえも殺し、食べてしまったのだ。
(化け物め……)
親を食べた冬木と母を殺した自分が重なり、同族嫌悪を抱く憂。
しかし目的の為には冬木の力は必要不可欠。憂は冬木に近づき「陰陽寮襲撃」について話そうとする…………が。
「冬木、話がある」
「あはは…………お前は、私を殺スのか?」
お道化た雰囲気が殺意に塗り替わる。
「殺さナいクせにコこに来たノか? 私はモう苦しみたクナイ。私ヲ苦シまセルなラ…………殺ス!!」
感情の高ぶりに右目を紅に染める冬木。冬木にとって憂は「自分の夢を壊した裏切り者」、壊れてしまったとは言えそうなった原因だけは忘れていなかったのだ。
だが憂は今にもこちらへ襲いかかろうとする冬木から目を逸らさず、冷静に話始めた。
「俺はお前を殺さない」
「ッ、ヤッぱリ!! お前ヲッ!!!!」
「だが、"死に場所"はくれてやる」
「殺…………えっ」
その死に場所とは"陰陽寮"、憂は冬木の自殺願望を利用して陰陽寮で暴れて貰おうと考えていた。
しかしその言い草は矛盾そのもので当然冬木は困惑する......が、そんな事を憂が気にするはずも無い。
憂は冬木の髪を持ち上げ、強引に目を合わせる。
「お前を死なせてやる。だから__俺の為に死ね」
心境を一切無視した一方的な道具発言。流石の冬木も怒りを感じたのか、顏を俯かせ何かを呟いていた。
「……は」
「あ?」
「はぁぁぁい♡♡♡ 分かりましたぁ♡♡♡ 憂様♡ 」
「……は?」
「えぇ……」
お久しぶりです。。。
ワクチン二回目で副反応全部出たクソ雑魚ナメクジです。。。
やっぱり一回休むと書く気失せるからヤバいですね。
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