表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/74

56.運命共同体

「ここは……」


 目を覚ますとそこは瓦礫の山ではなく、憂はベッドの上で寝ていた。

 何があったのか思い出そうとするが、柚子に撃ち抜かれた辺りから記憶が無い。気絶していたせいだろうか。


「目が覚めたのね」

「杉江、ッ!!」


 声のする方へ振り向くと、そこには杉江が本を読みながら座っていた。

 憂は「ここは何処か」尋ねる為に起き上がろうとしたが、全身に痛みが走りそれ以上は動けなかった。


「処置したばかりだからあまり動かないで」

「.....処置?」


 ゆっくり身体を確認すると、杉江の言う通り至る所に包帯が巻かれていた。


「お前ってこういうの出来たんだな」

「私はただ魔眼で医学知識を調べただけよ。他は素人同然だから治療自体はお父さんにお願いしたわ」


 そう言って見せつける右腕にはいつもの黒い長手袋は無く、灰色の人外の腕が露わになっていた。


「魔体……フォラスか」

「詳しい事は話さないけど、別に良いわよね?」

「あぁ、それとここまで俺を運んで来たのも杉江で良いんだよな」

「えぇ。ここはお父様の持つ別荘の地下、私と瀬流君以外誰も居ないわ」

「そうか」


 一先ず安全だと知り、ほっと息を吐く憂。


「それで.....私と別れた後何があったの。もう少しで瓦礫に飲み込まれて死ぬ所だったわ」

「あの後……」


 憂は杉江に覚えている限り全ての出来事を話した。

 Dクラスに居たのは面田ではなく母だった事、害虫と柚子は陰陽師だった事、柚子と戦い負けた事…………そして、母を殺した事。


「そう……そうなのね…………」


 話が終わる頃には杉江の顔色が死んでいた。憂に()()()をしてしまったという自責の念に駆られていたからだ。


 そして、その理由は憂が一番分かっている。


「杉江お前、俺に"嘘"ついたよな」

「ッ……!!」


 怒りでなく憎悪。どす黒いオーラが溢れ出ていると錯覚する程に、憂の威圧は人の域を超えていた。


「あそこに居たのは面田じゃなくて母さんだった。お前が間違えなければ母さんは死ぬ事は無かったんだ…………分かるか? お前が俺の母さんを殺したんだよッッ!!!!」

「それ、は......」


 憂の言葉は杉江の精神を追い詰めていく。

 杉江自身が()()()()()()()を知っているからこそ、憂の苦しみがより鮮明に伝わってくるのだ。


「それはそうと……杉江は"これから"どうするんだ?」


 だが憎悪に満ちた雰囲気から一転、憂は杉江に"素朴な疑問"を返した。


「これから、って」

「お前が大好きだった学校はもう存在しない……お前の帰る場所なんて"何処にも無い"んだ」

「ぁ、ぁぁ……」


 声にもならない声を上げる杉江。

 しかしそんな事お構いなしに憂はもっと追い詰めようとする.....が。


「これ以上はお前のお父さんに殺されちまうな」


 そうお茶らけて話す憂の首は杉江の右腕……フォラスの腕によって絞めつけられていた。「これ以上娘を侮辱するなら殺す」という警告である。

 しばらくして首から灰色の右腕が離れると、憂は喉の調子を確かめつつ話を再開した。


「俺は、俺に母さんを殺させた奴らを許さない」

「……えっ」


 その発言に思わず顔を上げる杉江。

 そして数秒の間が空け、憂は自分の"覚悟"を告げた。



「奴らの本拠地……陰陽寮を潰す」



 憂の覚悟.....それは「第四陰陽寮の襲撃」だ。


「正気、なの……」


 杉江が疑うのも無理はない。相手は陰陽師、魔眼使い専門の殺し屋だ。陰陽寮の襲撃など自殺しに行くようなもの。


 しかし、憂の目は自殺志願者の目ではなかった。


「あぁ、俺は本気だ。それと杉江、()()()()()

「.....は? 何で、私まで」

「悔しくないのか」

「ッ、それ、は……」

「俺の母さんが死んだのも、お前の居場所を奪ったのも、元を辿れば陰陽師のせいだ。俺達には奴らに復讐する"権利"がある」

「け、けど」

「……杉江」

「ッ!?」


 杉江の優柔不断に限界が来たのか、どす黒いオーラを身に纏う憂。その瞳は黒く濁っており、どこまでも深い闇があった。


「共に復讐しよう杉江。俺達は"運命共同体"......そうだろう?」


 甘く囁く地獄への誘い。罪滅ぼしか、それとも自棄か。

 その言葉は杉江に"心中"という選択肢を生み出した。


「……分かった。私も、陰陽寮を潰す」


 その言葉に満足した憂は不敵に笑った。


「よし、そうと決まれば早速行動しよう。奴らと殺り合うには戦力が足りないからな、先ずはあいつの所に行くか」

「…………」


 先程の威圧感が嘘のように消え、日常会話のように喋り出す憂。

 もはやその変化に杉江はついていけなかった。精神が不安定と言えるレベルではない、()()()()()()が切り替わっているのだ。


「杉江」

「な、何」


 憂は"笑顔"で杉江に話しかける。

 その笑顔は、まるで____



「冬木って今、どこに居る?」



 悪魔だ。




ここまで読んでくれた方々、本当にありがとうございます。

これにてⅤ章は終わりとなります。

最近ブクマも増えたし読んでくれる人増えたのでワイトは嬉しいです。。。

憂くん達の物語はいよいよ大詰め、Ⅵ章をお楽しみに。


ちなみに憂くんの言動が支離滅裂な件ですがアレは仕方のない事です(罪悪感皆無&精神崩壊)

憂くんの今後の活躍が楽しみですね(ゲス顔)


感想☆ブクマは作者のモチベを上げます。

Twitter→@iu_331

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ