55.正義の拳銃
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pvブーストすごっ
切りよくするため短めです。
柚子の肉体的制約、それは【自分の思う正義を成せ】。「友達を殺す事は正義なのか」が分からなかった柚子は引き金を引く事が出来なかった。
だが"憂を助ける"と覚悟した今、肉体的制約が逆に柚子の体を奮い立たせていた。
そして憂もまた、柚子の覚悟を感じ取っていた。
「…………」
柚子を殺す意思に揺ぎはない。だが、気になる点が一つだけ。
(何だあの銃、いつから持っていた?)
いつの間にか構えていた鈍色の拳銃。あれが柚子の魔具なのだろうか。しかし遠距離攻撃である以上、【黒鱗】の敵ではない。
(まぁいい、お前の覚悟ごと返り討ちにしてやる…………!!)
憂は左手に【黒鱗】を浮かべ、その時を待つ__しかし、蛇の眼は確実に獲物を捕らえていた。
”ドォォン!!!!”
破裂音のような重たい銃声が辺りに響き渡る。そして、鈍色の拳銃から撃ち出された白銀の弾丸は螺旋を描きながら真っ直ぐに、曲がることなくただ真っ直ぐに飛んでいく。
「ッ!?」
アンドロマリウスの魔具【正義の拳銃】、その能力は「真っ直ぐ飛ぶ弾丸の生成」。
本来、拳銃よって撃ち出された弾丸は空気抵抗や重力によって僅かながら曲線を描くものだが、【正義の拳銃】は違う。こと滞空時間において、【正義の拳銃】から撃ち出された白銀の弾丸は何らか物体に当たるまで"全ての影響を受けない"。
そう、【正義の銃】はアガレスの魔眼の影響を受けない____"唯一の天敵"であった。
(弾が減速しなッ!?)
衝撃波の膜に触れたにも関わらず、弾道が変わらないどころか減速すらしない弾丸に今更危機感を覚える憂。
しかし、その時には既に弾丸は己の右肩を貫いていた。
「ぐッ、あああああああ!!!!」
あまりの痛みと衝撃に地面を転げ回る憂。右肩を強く握り、大声をだして痛みを誤魔化している。
そんな憂に柚子はゆっくりと近づく。
「急所は外したから、ちゃんと処置すれば後遺症は残らないよ」
「なんで、なんで僕に当たって.....!!」
遠距離攻撃に対して無敵であるはずの【黒鱗】が全くもって通じていなかった。いつの間にか心の拠り所となっていた【黒鱗】の敗北は憂の精神面に大きなダメージを与えていた。
だが、悪魔に"絶対"は無い。
「"運が良かった".....そうとしか言えないよ」
憂の敗因、それは「【黒鱗】の力に"慢心"していた」事。自身の強みである「弱者の戦い方」を忘れてしまった結果、怒りに身を任せた力任せの戦いになってしまったのだ。全てに恐怖していたあの頃であれば、こんなしょうもないヘマはしなかった。
「はぁ……はぁ……まだ、僕は何、も…………」
連続の戦闘で体力気力は既に限界。先の攻撃が止めとなり、もはや憂は立ち上がる事すら出来なかった。
「憂、そのままで良いから聞いてくれ。俺は憂が」
「『黙れ』」
「ッ!?」
"腹底から冷たくなるような重い声"に咄嗟に柚子は距離を取る。しかし、すぐさま自分がした行動に疑問を抱く。
相手は身動きも取れない程の重症、警戒こそすれ過度に恐れる必要は無い……はずなのに。
(何だこの威圧感は......さっきまでと別物じゃないか!?)
全力で後退した理由、それは柚子の本能が「目の前の存在が危険だ」と警告したから。憂から発する"ナニカ"に流れる冷や汗、恐怖が溢れ出る。怒りでも殺気でもない、これではまるで__
(まるで、人間じゃないみたいな)
警戒の為に距離を取った柚子。だが、その数秒が憂に逃げる為の隙を与えた。
"バコン"
柚子が離れた瞬間に天井に向かって右手の指で弾く。発生した衝撃波はごく小さなものだが、"目的"を果たすには充分な威力だった。
傷付いたのは何も憂や柚子だけではない、戦場である校舎だって同じくボロボロだ。さて、そんな状態で"崩れかけの天井"に衝撃を与えたらどうなるのだろうか。
"バキバキバキッ!!!!!!"
勢い良く広がる亀裂はすぐに校舎全体に広がり天井と床が崩れ落ちる。
そう、憂の目的は「倒壊による逃走」。しかし気づいた時には全てが手遅れ。
「憂!! 憂ぃぃいいいい!!!!」
必死に叫ぶ柚子。
だが、聞こえたのは思い出の場が崩れる音だけだった。
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