52.廷出 柚子
1.2話で読み切りされてるみたい。。。
頑張るしかないか。。。
「高校に調査、ですか」
憂と出会う一年前。第四陰陽寮にて、柚子は御井に「倶鳥那高等学校の異常を調査せよ」という新たな任務を与えられていた。
「そうだ。最近、異界の扉の活動が多く報告されている。お前には奴らの寝床の可能性が高いココを調べてきて欲しいって訳だ」
「分かりました、期限はいつまででしょうか」
しかし、その態度は現在の柚子と違い酷く冷たいモノだった。仕事人間と言うべきか、「任務を全うする事しか生きる理由が無い」とでも言いたげな雰囲気を醸し出している。
「期限なんだが……特に決めていない」
「それは、どう言う」
「俺はな廷出。お前に学校に行ってもらって、友達を作って欲しいんだよ」
「……それも任務ですか」
「いや、俺の個人的なお願いだ。お前に仕事以外の趣味を見つけて欲しいていうな」
「…………」
御井は心配そう見つめるが、柚子に理解される事は無かった。
「義務教育は既に終えています。今更教育機関に通うメリットはありません」
「……そうか。ま、気が向いたら声を掛けてくれ」
「分かりました、失礼します」
柚子が部屋を出るのを確認すると、御井は堪らず溜め息をついた。
「はぁ……」
「相変わらず愛想が無いわねぇ、あの子」
柚子と入れ代わりで部屋に入る須藤。ライブ帰りなのか、デアちゃんグッズでゴテゴテだ。そんな須藤の姿に呆れつつ、御井は相槌を返した。
「廷出は生まれが特殊だからな」
「あのジジイの施設でしたっけ? あーやだやだ、死んでも戻りたくないわぁ」
「お前は生活態度を調教してもらえ…………さて、柚子はどうなることやら」
廷出 柚子。
彼は生まれて間もなく母親から見捨てられた孤児である。
そんな柚子を拾ったのが陰陽寮歯車目トップ、(零)博士だった。しかし、拾われた理由は決して暖かなものでは無い。
零博士は「理想個体と悪魔が契約するとどうなるのか」という人体実験の為に、赤子であった柚子を使用したのである。
自身が運営する陰陽寮教育機関に僅か一歳足らずで放り込み、零博士は実験を開始した。十年にも渡る地獄の訓練に、一般陰陽師として魔眼使いとの実戦。
結果、柚子は零博士の望む"理想個体"として育て上げられたのである。
教育機関を卒業した柚子は管理上、祓い目に異動。
そして選定された契約悪魔は正義の悪魔 《アンドロマリウス》。零博士は力を引き出させる為、柚子に全ての契約を結ばさせた。
その力は凄まじく、祓い目として柚子は次々に戦果を挙げていき、現在の「第四陰陽寮副隊長」の地位にまで上り詰めたのである。
だがその代償は人として、子供としてはあまりにも大きかった。
【悪戯感】が消え、まともな子供時代の無い柚子は自分の感情を表に出すことが無い。
つまる所、柚子は"生きた人形"だった。
「……友達、か」
部屋を出た後、一人廊下で考え事をしていた柚子。御井から言われた「友達」と言う言葉がやけに引っかかっていたのだ。
『何を悩んでいる』
「アンドロマリウス……」
『我々の使命を忘れたか。我々は悪を粛清する為に生きている』
「別に任務に不満はない。ただ.....友達とはどんな存在なんだろうって」
柚子には友達と呼べる存在は居ない。特殊な環境で育てられ、任務漬けの日々を過ごしていた為、作る暇も必要も無かったからだ。
「友達」と言う言葉を知っていても、その意味までは分からなかったのである。
『友とは"悪を粛清する同士"だ。我々の使命は悪を』
「それはもう分かっている。まぁ、悩む必要は無い……か」
自分はただ淡々と任務をこなすだけ。今までも、これからも。
「御井隊長、先程の話ですが____」
~~~
PIPIPIPIPI
ケイタイが煩く鳴り響く。
昨日の憂の事を夜遅くまで考えていた柚子は未だ眠りについていたのだ。着信音で目が覚めると眠たそうにケイタイを確認する。相手は御井、慌てて通話ボタンを押す。
「もしも」
「廷出!! 良かった、無事だったか」
「はい、何か起きたのですか?」
「今朝、鴉目から倶鳥那高校の異常を確認した」
「!? それは本当ですか」
「あぁ。しかし、昨日の今日でこれだ。何もないと良いんだが……気を付けて向かってくれ」
「了解」
柚子は神妙な面持ちで通話を切る。
「よりによってあの高校……胸騒ぎがする」
『柚子、我々のする事は変わらない。悪を粛清するのだ』
「あぁ、分かってる」
現地に辿り着くとグラウンドには多くの生徒が倒れていた。間違いなく魔眼使いの仕業だろう。
しかも校舎の方からはまだ戦闘音が聞こえる。柚子は犯人を殺す為、音の出所である二年Dクラスに向かい__今に至る。
教室に着くと、そこには昨日助けた憂が女性を抱えていた。女性は血だらけで死んでいるように見える。
「やっぱり……お前も敵だったんだな」
「それは、どういう」
亜梨実をそっと床に置き、柚子を睨み付ける憂。状況が飲み込めず困惑する柚子だが、時は待ってはくれない。
「とぼけるなよ......その服、陰陽師だろ。前にも似たようなのを見た。お前も俺を殺しに来たって事か」
「違う!! 俺は、そんなつもりで来たんじゃ…………」
そう言い返したかったが、柚子は憂の言う事を完全に否定することは出来なかった。間違いなく陰陽師は魔眼使いを殺す存在、魔眼使いの敵なのだから。
言葉に詰まる柚子、すると自然に視線は憂の足元に横たわる女性にいく。
「その人は」
「…………"俺が殺した"」
「ッ。それは本当、なのか」
思わず聞き返す柚子。無意識の内に「憂は人を殺していない」と思い込んでいたからだ。憂は何かに巻き込まれただけの"普通の高校生"だと、本気でそう信じていたからだ。
(頼むから、違うって言ってくれ……!!)
必死に願う柚子。しかし、それは他の誰でもない友達によって裏切られた。
「あぁ、そうだ。俺が殺したんだ」
「それがもし本当なら、俺は憂を殺さなくちゃいけなくなる……ッ」
もし憂が人殺しだとしたら…………初めての友達を、自分の手で殺す事になる。
「俺は化け物だ。お前を殺す事に何のためらいもない」
明確な敵意......もはや彼は自分の知っている憂ではなくなってしまった。そう胸に突き付けられた現実に柚子は歯を強く食いしばる。
「これ以上、君に人を殺させない……!!」
「やれるもんならやってみろッ!! このドグサレがァァァ!!!!!!」
怒り任せに生じた衝撃波は目に映る全ての窓ガラスを割った。以前の憂とは比べ物にならない威圧感......だが柚子もまた下がろうとはしない。
「柚子ッ!!!! てめぇを」
「憂ッ!!!! 君を」
憂と柚子の宿命の戦いが____
「殺す!!!!!!」「止める!!!!!!」
始まった。
憂くんは「母の死」と「陰陽師(偽面田の同僚)」で正気では無いので、陰陽師姿の柚子を敵判定してしまいます。酷いね。
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