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44.消えた感情

初めてファンアートを貰いました。。。トテモウレシイ

これからも頑張って更新します。

 放課後、生徒会室に集まった3人の空気は少しピリついていた。昨日の作戦を無視したので当然と言えば当然だが、当の本人である憂は気にせず椅子に座っていた。


「それで、昨日は何があったの」

「ん? あぁ、お前らと別れた後出珠にバッタリと出くわしちまってな。屋上に連れてかれたんだけど、そこで俺のこと煽るもんだから……こう"ドン"って」

「殺したの?」

「殺した」

「......一言あっても良かったんじゃないかしら」

「パニクってそれどころじゃなかったんだ。そのぐらい察しろ」

「…………」


 飄々とした態度で答える憂。昨日までの弱々しい態度だった人物とは思えない横暴さに、杉江の脳裏に()()()()()が浮かんだ。


「瀬流君。貴方、"第二契約"を結んだわね」

「第二契約?」

「言ったわよね。第二契約の代償はやりようによって人間性が失われるって」

「そうだな」

「ッ!!」


 それは以前、魔眼について話し合っていた際に杉江が唯一教えてくれなかった契約。

 「人間でいたいのなら知るべきではない」と杉江が気遣ってくれたのだが、それも無意味に終わった。


「なぁ第二契約の代償って何なんだ。教えろよ」


 知りたくなかったはずの代償について尋ねる憂。そんな憂に、杉江は何かを諦めたかのように口を開いた。


「代償は"感情欠如"…………感情が一つ、消えるわ」


 人間を含めた殆どの生物には感情が存在している。

 喜び、怒り、哀れみ、楽しむ…………他者とコミュニケーションを取る為に必要な大切な能力だ。そんな能力が欠けるのならば、それは確かに"人間性が失われる"と言えるだろう。


 しかし、憂は自身の消えた感情に毛ほどの興味も無かった。


(なぁアガレス)

『何だ』

(俺はお前と第二契約を結んだのか?)

『あぁ、結んだ。お前の【罪悪感】が消えた代償として俺の魔具が使えるはずだ』

「ふーん」


 適当に相槌を打つと、魔眼を起動する時のように左手に力を込める憂。すると左手の甲にまるで"鰐の鱗"のような黒い破片群が浮かび上がった。


「それは……!!」

『それが俺の魔具、《黒鱗》だ。力は使えば分かる』

「やっぱり…………契約してしまったのね」


 憂の魔具を見た杉江の目つきはより鋭くなる。だがアガレスに協力している今、憂が杉江の疑問に答える事は出来ない。


 「あの、憂くん」


 緊迫した空気の中、流れを変えたのは意外にも冬木であった。


「ん、何だ?」

「話を変えてしまうのですが……私のお願いはどうなるんですか?」


 憂は冬木に「殺す代わりに人探しをして欲しい」と言う約束をしていた。

 しかし、人探しは翌日には終わり最終目的も既に果たしている……自分の知らない所で。

 その為、冬木は「何もしない」と焦りを感じていたのだった。


「あぁ、それ()()で」

「…………え」

「そもそも殺す無かったし。それに害虫は死んじまったしなぁ、もうお前に協力する意味無くね?」

「そ、それは……」

「そう言う訳だから、そのお願いは他の人に叶えてもらえ」

「ッ!! もう一度だけ、もう一度だけチャンスをください!!」


 ようやく掴みかけた船。諦める事など出来るはずもなく、必死に懇願する冬木__それが憂の琴線に触れる事だと知らずに。


「あぁぅ……!!」


 憂は足に縋りつく冬木の首を()()()()()()()


「ぁ、ぁあ…………」

「別に、殺さなくても傷付ける方法はいくらでもあんだよ。何なら今、限界までやっても」

「瀬流君!!」


 「殺さずにただ痛めつける」、以前の憂からはとても考えられない行動に堪らず大声を出す杉江。

 「これ以上杉江の反感を買う訳にはいかない」と憂は素直に杉江手放した。乱雑に床に落とされた冬木は喉を抑え「ゴホゴホ」と噎せ返っていた。


「今日は解散にしましょう」

「あぁ、それが良いな」

「…………ぅ」


 こうして今回の話し合いは終わりを迎えた。

 その時、顔を隠して涙を流がす冬木が見えたが、憂にはその涙の理由がまるで分からなかった。




~~~~~




 瀬流家ダイニングにて一緒に夕食を食べる憂と亜梨実。会話が弾む事は無く、食卓には食器の音とテレビからの笑い声だけが響ていた。


「…………なぁ、母さん」

「なあに、憂」


 食事も終盤に差し掛かった頃、ボソリと憂の口が開く。そんな息子の変化を察してか、亜梨実はただ静かに耳を傾ける。


「もし、人を傷付けても悪気が全く無い奴って…………母さんは人間じゃないと思う?」


 罪悪感が消えた今、憂の全て行動に悪意は無い。聞こえは良いかもしれないが、それは"善悪の区別が無い"とも言える。果たしてそんな人間は人間と呼べるのだろうか。


 他の誰かに拒絶されたって別に構わない。そんな事よりも憂は(大切な人)からの拒絶が何よりも恐ろしかったのだ。


「はぁ。何かと思えばそんなくだらないこと考えていたのね」

「なッ」


 だが憂の緊張とは裏腹に、亜梨実は「くだらない」と呆れていた。


「どうせ友達とケンカしちゃったとか、そんな話でしょ?」

「それ、は」

「人間だもの。悪いことしたって、全部が全部気を付ける事なんて出来ないわよ」

「人間......」


 感情が消え、いつの間にか自分を化け物だと思い込んでいた。しかしこの母はそんな自分をまだ"人間"だと呼んでくれる。


「大切なのは何がいけなかったのか考える事。それとちゃんと謝ることね」

「…………そっか。ありがと、母さん」

「全く、私はあんたの母親なんだから。いつでも相談しなさい」


 そう言って亜梨実は憂に微笑む。

 いつだって自分の味方で居てくれる母の存在はありがたく、少し照れ臭かった。




母は強し。

改稿:<鷹鰐の紋章→黒鱗>に変更しました。理由は想定していたよりも鷹要素が無かったからです。。。



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