37.化け物同士の戦い
多分、まともな戦闘はコレが初めて(紅の)
「ぁはは!!!!」
先に仕掛けたのは傀儡卿。キメラ化した影響で身軽さで一歩劣るものの、須藤はその脚力を生かし危なげなく回避する。傀儡卿はパワーこそあれど構えが出鱈目、回避すること自体は余裕だった。
「その図体でぇ良く避けられますねぇ?」
「貴方こそ、そんなひょっろちい体で良く動けるわねッ!!」
「はははぁ!! 私の契約悪魔ぁ《ガープ》は【肉体を強化する】魔眼を持ってぃますぅ......だぁかぁらぁ!!!!」
そう言って傀儡卿が軽く屈むと、足元から"バキバキッ"と何かが折れる音が響いた。恐らく、魔眼の力に身体が耐えきれていないのだろう。
「こぉんなこともぉ出来るのですよぉ???」
(コイツ、自分の足を壊すくらい強化して……!!)
「余所見とはぁ、随分と余裕そぅですねぇ?」
「ッ!?」
強化を終え、須藤に襲い掛かる傀儡卿。しかし限界を超えた強化により、そのスピードは倍以上になっていた。
いくら動きが大雑把とは言えど、ここまで速過ぎると避けきる事は不可能。須藤は成す術も無く、その喉元に直定規が通り過ぎる……が。
「本当にぃ、面白い体をしてぃますねぇ貴方ぁ......!!」
傀儡卿が振り向くと、そこには"亀の甲羅"だけが存在した。
移動での回避は不可能と判断した須藤は頭手足尾全てを甲羅に収納する事で直定規を寸の所で回避したのである。
だが、それは同時に自身の攻撃手段も捨ててしまった。
この状態では行動する事が出来ず、かと言って甲羅から出れば傀儡卿に切り落とされる。
何より、この狂信者は例え攻撃されようが"任務を果たせれば良い"と笑顔で死ねる人間。傀儡卿が攻撃を止める事は、無い。
傀儡卿は甲羅を砕く為、歩み出したその時__甲羅から何かが飛び出した。
「はははは、は……"骨"?」
マルバスの魔眼の強みは何も移植だけではない。その力を使えばど《・》こであろうと【身体を改造する】事が出来るのだ。
例えばぐちゃぐちゃになった右肩を簡易処置をしたり、肉と骨にそれぞれ分解したりなど。須藤にとっては朝飯前の行為だった。
では、元々付いていた肉は何処へ行ったのか…………答えは"首"である。
「guaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
「ほnヵsこckdcかおあおcdk!!!!!!!!!」
キリン__一見穏やかなそうな動物だが、時には肉食動物をも一撃で仕留める程の強さを持っている。そんな彼らの最大の武器は"首"、200kgを超える超重量の肉塊を相手に叩きつけるのだ。
そう、須藤は手足尾の筋肉全てを首に移植し"疑似キリンの首"を作り出したのである。関節の無い純粋な肉の塊は強大な鞭と化し、そのスピードとパワーは【肉体を強化する】魔眼使いである傀儡卿でさえ耐えるられず簡単に吹き飛ばされた。
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
甲羅を脱ぎ捨て、人間形態に【身体を改造する】須藤。魔眼の連続行使に全肉使用による全身の筋肉疲労。人間形態の変形が体力的に限界だった…………だが。
「ぉぼろひましたぁ」
視点が定まらず、骨が突きだし、手がダランと垂れ、全身は血だらけ。障害物や地面に叩きつけられ、体の至る所が異様な曲り方をしている…………それなのに、傀儡卿は立ち上がった。
「嘘でしょ、何でアレ喰らって生きてんのよ……」
思わず苦笑いをする須藤。その様子を見てかどうかは知らないが、傀儡卿はその砕けた顎を支えながら話し出した。
「あぁあ......人間はぁ普段、力をセーブしてぃるってぇ知ってますぅ? この魔眼を使ぇばぁ誰でも"100パァの力"をぉ使えるのですぅ」
「へっ!! だとしても、それで立ち上がるのは貴方くらいでしょうね!!」
相対する両者だが共に満身創痍の状態。例え魔体が使えたとしてもそう長くは使えない__が、それでも使うのが傀儡卿、己が死のうとも邪魔者を殺せれば本望である。
そしてそれは命をかけた須藤もまた同様であった。
「ははははは!!!!」
「くぅおおおおおお!!!!」
ボロボロに朽ちた青肌の腕で須藤に襲い掛かる傀儡卿。
対しマルバスの魔体である獅子の腕で向かい受ける須藤。
力も体力も拮抗している今、勝負を制したのは____須藤。
実は須藤が人間形態に【身体を改造する】際、"切り落とされた熊の腕"も移植していたのだ。首に変えていなかった為比較的疲労しておらず、傀儡卿の魔体から耐える事が出来たのである。
「うぁ、あ、ぁ」
「はッ!!!!」
遂に限界が来たのか、傀儡卿は右腕が朽ち果て口から血を吐き出していた。
当然その隙を逃すはずなく、須藤は首を貫くと頭と胴は離れ、傀儡卿は確実に死んだのだった。
「はぁ、はぁ、これで____」
「流石はぁ陰陽寮のエリィトさぁん。質では勝てませんでしたかぁ」
「!? 誰!!!!」
(まさか今の......いや、そもそも声の方向が可笑しいッ)
須藤の嫌な予感は当たってしまった。
「ですぅ」
「がぁ」
「数ぅ」
「ではぁ」
「負けぇ」
「まぁ」
「せぇん」
傀儡卿と同じ黒いボロ布を纏い、直定規を素手で持つ20人近くの集団が何時の間にか須藤を取り囲んでいた。
「まさか......コレ全部アンタ、なの?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「そうですよぉ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「ッ!!」
須藤の予感、それは"全員が傀儡卿"と言う最悪の悪夢だ。
「私ぃ本当はぁ【肉体を操る】魔眼使ぃなんですぅ。その証拠にほらぁこの右目ぇ、良く出来てるでしょぅ?」
「カラーコンタクト…………はは、だから"傀儡卿"、ね」
今まで魔眼だと思っていた眼はカラーコンタクト、今まで魔体だと思っていた腕は壊死しただけの腕。
もしもそれが本当ならば、須藤は魔眼使いでもない"唯の人間"を相手に死闘を繰り広げていたことになる。
"人形遊び"、まさに傀儡卿の名に相応しい魔眼使い。
もはや笑うしかなかった。
「それではぁ……さよなら」
ぐさりぐさりと須藤の体に次々と直定規が刺さる。
腹を裂く事も腕を切り落とす事も無く、ただ刺し続ける。
20近くの直定規が刺さった須藤の身体は、まるで一つの芸術作品であった。
ちょいと書き方が不安定だったので、ここで決めときます。
《》→新単語
【】→悪魔の能力名
()→内心、名前
゛゛→強調する単語
「」→会話、内容
『』→直接話してない会話
↑こんな感じに改稿しておきますが、内容はさほど変わりません。
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