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29.害虫の探し方

昨日は虫取り(海)に行っていました。

「さて、そろそろ害虫駆除を進めたいわね」

「害虫駆除……」


 次の日の放課後。例の如く放送で呼び出され憂は生徒会室に向かい、杉江と話し合いをしていた。どうやら例の魔眼使い対策の話し合いをするらしい。


「そう言えばどうやって探すつもりだったんだ? その魔眼を使うのは分かってるけど」

「それだけ分かればもっと楽が出来たわね」


 杉江曰く、フォラスの魔眼には「目の前に調べる対象が居なければ使用する出来ない」という制約があるようで、代わりに【全知の書】で調べようとすれば膨大な情報を絞る事が出来ず圧倒的に効率が悪くなるようだ。


「じゃあどうやって探すんだ?」

「そんなの、駒を調べれば良いだけよ」

「駒?」


 とはいえ犯人捜しのヒントが無い訳ではない。

 杉江はいつもの紅茶を一口飲み、説明を続ける。


「何名かの生徒の性格が去年と比べて大きく変化しているの、それも皆四月から」

「そいつらが駒だって言いたいのか? うーん、それだけで怪しむのは……」

「クラス一の根倉が春明けに金髪ピアスでも違和感は無いと?」

「あーそれは確かに可笑しいわ」


 そう言って憂はいつだか校門前で絡まれたあの不良達を思い出した。今思えば自分に干渉する為の駒だったのだろう。


「それで彼らの記憶を調べれば何かヒントを得られると思って、その生徒達全員とお話をして来たわ」

「お話ねぇ……ん? ってことは僕も性格が変わったと思われてたのか?」

「いいえ、そもそも瀬流君と会ったのは記憶を見る為じゃないもの」

「え?」

「あんな噂聞けば間違いなく害虫の関係者って分かるし、運が良ければ仲間に出来ると思ったの……まぁ思わぬ乱入者が来たけれど」


 杉江の目に留まった理由がようやく判明した……だが、そんな事よりも憂はある事が未だ引っかかっていた。


「は、いや……だってあの時、死ねって」

「あれは嘘よ」

「噓ォォ!?」


 衝撃の真実(「死んで」)に堪らず叫んだ憂。しかし当の本人からは特に反省した色は見えなかった。


「瀬流君が魔眼使いだって事はある程度予想していたから、確信を得る為にも必要だったのよ」

「それでも死ねは無いだろ……」

「貴方と同盟を結べている時点で問題はないわ」

「お前って絶対サイコパスだよな」


 杉江のイカれた思考には流石の憂も顏を引きつるしかなかった。


「話を戻すけど私が会って来たのは5人。そして……全員が()()()()に瀬流君の噂を広げるように指示されていたわ」

「仮面?」

「大方、魔眼対策でしょうね。駒から自身の正体をバラさせない為に……」


 杉江の魔眼(フォラス)のように「相手の情報を調べる」能力を持つ悪魔は他にも存在する。その為、自身の情報を隠す為にはあの恰好が最も効果的なのだ。


「相手は魔眼使い同士の戦い方に慣れているとみて良いわね」

「はぁ……いったい僕に何の恨みがあるって言うんだよ」


 当然憂はそのような相手から狙われる理由が分からず溜め息をつく。


「それで、瀬流君の周りには性格が大きく変わった人とか居ないかしら?」

「……性格が大きく変わった奴、か」

「心当たりがあるのね」

「…………」


 杉江の追求に顏を俯かせる憂。忘れもしない、自分が悪魔と契約するキッカケとなったあの事件だ。


「そいつは、僕の親友……だっ!?」


 それ以上言葉を紡ぐ事が出来ない……どうやらあの時の出来事を話すのは契約に反する(非協力的)らしい。

 しかし、昨日の今日だ。憂の不自然な行為の訳をある程度察しているのか、杉江は1人思考していた。


「成程……確かに彼が駒だという可能性はあるわ」

「ッ……杉江は知らなかったのか?」

「えぇ。恐らく彼は本命の駒に選ばれてしまったのね」

「ッ、それじゃあ灯央はソイツのせいで……ッ!!」


 殺人鬼の濡れ衣を着せ、脅迫文を送り、更には親友を操り殺した。もはや洗脳の魔眼使いが何処の誰であろうと、憂が許す事はないだろう。


「とりあえず彼の交友関係を調べてみるわ」

「助かる」

「礼を言う必要はないわ。私のやりたい事をしているだけなのだから」


 ようやく話が一段落ついた____その時。


「…………プリン」

「プリン……は?」

「これは……」


 突如窓を見つめ出したプリン君。気になった憂達はプリン君の方へと振り返るとそこには__プリンが()()()()()

 正確には浮いているのでは無く外の壁にプリンが置いてあるだけ……なのだが問題はそこではない。憂も杉江も外に置かれたプリンは勿論、"その壁"にも見覚えが無かったのだ。


 更にプリンは「見つかった」と言わんばかりに下の階へと姿を消した。


「ッ!! プリィィィィィィン!!!!!!!!」


 窓ガラスを割り、四階の窓から飛び降りるプリン君。

 一方、憂達は突然の出来事にしばらくついていけなかったが、徐々に現状の不味さに気付き始める。


「……なぁ。これまずくね?」

「今ここでプリン君を失ったら害虫駆除が難しくなるわね……」

「そうじゃなくて!! あぁもう!! 早く追うぞ!!」


 わざわざ面倒事に首を突っ込む事は嫌であったが、他に解決出来そうな人間も居ない。悪態をつきながらも、憂はすぐさまプリン君を追い始めたのだった。




【全てを知る】魔眼持ってるのに、「魔眼使いには魔眼が効かない」ことを知らない訳無いですよね……


それと「フォラスの魔眼は使いずらい!」と思われるかもしれませんが、制限が無いと情報戦チート無双になるので、この設定にしました。



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