26.悪魔のお茶会
放課後になると憂は高校の最寄り駅である倶鳥那駅にて待ち合わせをしていた。多くの学生で賑わっているはずなのだが、何故か自分の周りには誰も寄り付かない……洗脳の魔眼使い許すまじ。
それから30分程待つとようやく杉江が現れる。帰宅部の自分とは違い生徒会の仕事がある為、仕方ないと割り切った。
「待たせたわね」
「別に。で、どこに行くんだ?」
「あそこの喫茶店にしましょう。話し合いには丁度良いわ」
「了解」
男女2人で横並びに歩いているがデートのような甘酸っぱい雰囲気は全く無い。どちらかと言えば腐れ縁といった雰囲気だろう。本人達はそんな仲間意識でさえ無いのであるが……
「お、お待たせしました。抹茶ラテ二つと特製ステーキ三つでござい」
「グシャガツモツグシャ!!!!!!!!」
「ひッ!! ご、ごゆっくりぃ!!」
「……ちょっと良いか」
「良いわよ。その為に来たんだから」
「それじゃあ……何でここにプリン君が居るん?」
杉江は抹茶ラテを一口飲み、憂の質問に答える。
「置いてきぼりは可哀そうでしょう?」
「いや、いやいやいや!! 騙されんからな? てか、店員めっちゃ怖がってたじゃねぇか」
「それはお世話係の仕事よ」
「僕はその係認めてないからな?」
席取りは憂の対面が杉江、隣がプリン君だ。正直、大人しくなったとはいえあの怪物が隣に居るのは落ち着かないので変わって欲しかったが、ここで気分を損ねたらきっと杉江は質問に答えてくれなくなるだろう……憂は得意の諦めを選んだ。
「それで、杉江パイセンは何を教えてくれるんですかい?」
「特別にさん付けを許すわ」
「杉江は何を教えてくれるんだ?」
「そうね、逆に何が分からないかしら」
「うーん、何が分からないかが分からないんだよなぁ」
「仕方ないわね……とりあえず基本的なことを教えるわ。それでいい?」
「お願いします杉江さん」
軽い冗談を言い合い、ようやく本題に入る。
「とりあえず、契約についてどこまで知っているの?」
「悪魔が人間に力を貸す代わりに生気を吸う……くらい」
「本当に何も知らないのね」
「ぐぅ」
「まぁ良いわ。とりあえず"人間が契約出来るのは悪魔一柱までが限界"っていうのは?」
「一柱ってのは聞いたけど……限界?」
一応アガレスにも説明してもらったのが、限界という言葉に引っかかりを覚えた。
「悪魔の力は強大なの。二柱も取り込んだら人間の体では耐えきれないわ」
「ほーん、もし契約したらどうなるんだ?」
「爆散」
「爆散……」
「もっとも、瀬流君が契約の結び方を知っているとは思えないけど」
「ぐぅ」
そんな事言われたってアガレスとの契約は訳も分からぬまましまったのだ。しかも当の本人が詳しく教える気が無いと来たら……もはやどうすることも出来ない。
改めて気付いた事実にショックを受ける憂であったが、杉江は気にせず話を続けた。
「契約する方法は二つ。"悪魔と直接交渉するか"、"魔眼を取り入れるか"よ」
「魔眼を……」
そう言われ憂はアガレスとの出会い頭で灯央の右目を捻じ込まれた事を思い出す。今更ながら、アレが悪魔との契約だと理解したのだ。
「悪魔は人間の魂を通じて契約しているの。魔眼は人間と悪魔を繋ぐパスみたいなものね。だから魔眼が無くなると元の持ち主は死ぬわ。気を付けなさい」
「死ぬって、あの野郎……」
「とにかく、それが第一契約、通称《魔眼契約》よ。分かったかしら」
「……は? 第一?」
第一と言われ憂は啞然とする。
「そう、第一契約。瀬流君は最近魔眼使いになったみたいだし、知らなくて当然ね」
困惑している憂をよそに、杉江は何もない所から本を取り出す。それは昨日、アガレスの名前を読み上げたあの本であった。
「ッ!! それは」
「これが第二契約、通称《魔具契約》よ。魔眼が悪魔の目だとするなら、魔具は悪魔の道具。私の魔具はこの【全知の書】ってところね」
「……やっぱ杉江の魔眼強くね? 全て分かるとか人の秘密暴きまくりじゃねぇか」
「そうでもないわ。この間のプリンだって当時の生産者の気持ちまで頭に入るのよ? 強力な分、使い勝手は悪いわね」
杉江はそう言うが、リスクに応じたリターンがあるだけあの悪魔より何百倍もマシだろう。
「流石情報量だけで殺せるだけはあるな」
「因みにプリン君も第二契約を結んでいるわね」
「……え」
「グシャガツ……殺ス?」
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