25.洗脳の魔眼
洗脳____人を思いのままに操る危険な能力として有名……だが、それはあくまでもマンガやアニメの中だけの話。テレビなどで紹介している催眠ショーなどは心理学に基づいた優しい詐欺である。
少なくとも今までの自分ならそう思っていた、魔眼使いになるまでは。
「せ、洗脳…………それは本当なのか?」
「そうね、学校の噂とか良い例じゃないかしら」
「まさか……!!」
「えぇ、間違いなく魔眼の力でしょうね」
「…………マジか」
驚きはしたが、確かに納得はいく。むしろ今まで気づかなかったのが不思議なくらいだ。
この学校では今「瀬流憂は殺人鬼である」といった噂が流れている。始めはマスコミの煽りや怪事件の生き残りのせいだとばかり考えていたが、噂が魔眼によるものだとすれば合点がいく。いくら煽られたとはいえ、"生徒全員に憎まれる"という状況は明らかに可笑しいからだ。
しかし、そうなると"誰が何のために殺人鬼の噂を広めたのか"が疑問に残る。
憂は自他共に認める下の上・中の下の人間。好いている人は少なくとも恨まれるまでのことはしてないつもり…………だが、理由は分からなくとも犯人には心当たりがあった。
「……もしかしたらその魔眼使いが送り主なのかもしれないな」
「送り主?」
「あぁ、言ってなかったけっか。僕今脅迫文送られているんだよ」
「それは気の毒ね」
「下手な慰めはやめろ」
「殺ス?」
「殺さない」
という訳で脅迫文について簡単に説明すると、杉江はその話に合点がいったのか少し考え込む。プリン君はいつも通り殺意マシマシだ。
「それが本当なら犯人は同一人物の可能性は高いわね。良かったじゃない、私たちの目的は同じよ」
「ちっとも嬉しくないけどな……それで、相手の目的は何なのか分かったか?」
「分からないわ」
「おい」
"キーンコーンカーンコーン"
「もう授業か……いったん僕帰りたいんだけど」
一時間目開始のチャイムが校舎に鳴り響く。憂は怪我のせいで全然授業に出れていない為、これ以上サボる訳にはいかなかった。
「しょうがないわね。放課後にお茶会でもしましょう」
「お茶会?」
「瀬流君、悪魔について何も知らないでしょう? 同盟を結んだ以上、ある程度知識が無いと私が困るのよ」
「教えてくれるのかッ!?」
憂は魔眼、もとい悪魔について多くの事を知らない。何故悪魔は契約するのか、プリン君や杉江の使っていた道具は何なのか、目的は何なのか、分からない事だらけなのだ。
その点、杉江は自分よりも理解しているのは明らかであった。杉江の魔眼の力のお陰という事もあるが、それ以上に魔眼の使い方に慣れていた。そんな彼女が「魔眼について教える」と言ったのだ、興奮するなという方が難しい。
「えぇ、仕方なく。私は生徒会の仕事があるから、先に駅で待っていて欲しいのだけれど」
「分かった」
「それじゃあ決まりね。ひとまず解散としましょうか」
「おう……って、結局部屋の掃除しなくても良いのか?」
そう言って床を見ると、段ボールや缶詰めがあちらこちらに散らかっており、食べカスやスープやらでデコレーションされ、はっきり言って地獄絵図であった。
「大丈夫よ、どうせ誰も入ってこないでしょうし」
「入ってこないって、生徒会の奴らが入ってくるかもしれないだろ」
「いいえ、入って来ないわ。相手側も刺激させないように洗脳するでしょうね」
「何で」
「プリン君」
「……」
何という皮肉か。地獄絵図を作っている本人が居るお陰で、ここは学校唯一の天国になっていたのだ。その事実に気が付いた憂は思わず言葉を失ってしまった。
「とはいえこのままじゃ足の踏み場もないわ。瀬流君、お片付けお願いね」
「……は? 何で僕が」
「プリン君のお世話係でしょ? それじゃ私は教室に戻るから、よろしく」
「? 殺ス?」
「殺さない!! て、あ、ちょ、待てやぁぁぁ!!!!!!」
少し目を離した隙に杉江は姿を消していた。必死の遠吠えも空しく、生徒会室の掃除をする羽目になってしまった憂。
そして掃除が終わる頃には、既に一時間目が終わってしまったことは言うまでもない。
Q.何故憂君がこんなにも授業をサボりたくないのか
A.日数&圧倒的授業内容の遅れ
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