15.それは風船のようだった
「悪魔ァ? 何言ってんだオメー」
「殺人鬼庇ったせいで頭どーかしたんじゃね?」
杉江の突拍子のない話に二人は思わず鼻で笑うが、話はこれだけではなかった。
「貴方達、数か月前まではクラス1の根倉コンビだったじゃない。今じゃそんなチャラチャラしちゃって……イメチェンするきっかけでもあったのかしら」
「う、うるせぇ!! そんなの俺たちの勝手だろうが!!」
「おい、お前俺たちを馬鹿にするために来たのかァ? 理事長の娘だからって偉そうにしやがって」
杉江の言葉に苛立つ二人であったが、毒を吐いた本人は既に興味を無くしていた。
「はぁ……もういいわ。"死んで"」
突然の発言に唖然としてしまう二人。
だが、それは妄言ではなかった。
「はぁ? 何言って……あ、あああああああああああ!!!!!!!!」
「お、おい!! どうした!!」
二人組の片割れが突如として頭を押さえ発狂しだす。頭に激しい痛みが襲っているらしく、おびただしい数の血管が皮膚の上に浮き出している。
「ああああ…………ぁ」
それは風船のようだった。
みるみるうちに真っ赤に染まった頭が勢い良く割れ、辺り一面に血肉が飛び散った。
頭部を失った首からはおびただしい量の血が噴き出し、命が亡くなった身体は重力に導かれ力なく倒れ込んだ。
「ひ、ひぃッ!!」
そんな猟奇的光景を間近で見ていたもう一人の男はあまりの恐怖に腰を抜かす……が、そんな事はお構いなしに杉江は段々と近づいて来る。
「やめ、来るなぁ!!」
「貴方は私の探している人じゃなかった」
「そ、それじゃ」
「でも……死んでちょうだい」
「あ、あああああああああああ!!!!!!!!」
襲い来る痛みに爪で顔を掻くが抵抗も空しく、もう一人の男の頭も破裂してしまった。
「貴方達みたいなゴミはこの学園にはいらないわ」
頭のない二人を吐き捨てるように罵倒し、頬に飛んだ血を袖で拭う杉江。
「これで"五人目"。後は……やっぱり彼かしら」
夕焼けを背中に、彼女の右目は紅く染まっていた。
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「たぁだぁいぃまぁあ~~」
「おかえりなさい。久しぶりの学校は大丈夫……じゃなさそうね」
帰宅した憂は真っ白であった。
期末試験前の授業に実質三日目の人間がついていける訳がなかった。一応サポートとして学校側は個人授業をしてくれたのだが代償は大きく、全ての授業を終えた頃には憂はすっかり燃えカスになっていた。
「うん。でも友達に凄え良い奴がいてさ、色々と助けてもらったんだよ」
「あら、それは良かったわね。あんた、そういう友達少ないんだから大切にしなさいよ?」
「分かってるって」
母に言われるまでもない。あんな"良い奴"を大切にしなかったらそれこそ罰が当たる。
「ふふ、じゃあご飯の準備するから荷物片付けてきなさい」
「へいへい」
言われた通り荷物を自室に置くと自然に息が漏れた。
三ヶ月振りの登校から無事に帰れたと安心する反面、脅迫文の送り主について何も分からない事に焦りを覚える。
まぁ考えても仕方ないので、ひとまず休憩をしようとリビングの椅子に座りテレビをつける憂。
だが、くつろぐには最悪の番組がそこには映っていた。
「次のニュースです。本日4時未明、本栖区住宅街で変死体が二名発見されまし」
「あら嫌ねぇ……最近はこんなニュースばっかり、憂も帰り道に気を付けるのよ」
「あぁ……うん」
憂を心配する亜梨実だったが、その気持ちは本人に届いてはいなかった。
何故なら憂は"奴"を思い出していたからだ……トラウマを植え付けたあの殺意の怪物の事を。
「……あいつの仕業だ」
『どうする、また引き篭もるのか?』
「うぅ……でも犯人分かんないし、引き篭もるのも逆に危ないし……あぁどうすれば」
『何故悩む必要がある。お前には魔眼が』
「嫌だ!! 僕は……本当の殺人鬼になりたくない」
あの時を、人がミンチ肉になるあの瞬間を、今でも鮮明に思い出せる。
憂は一般人、それもどちらかというと気弱な方だ。例え強大な力を得ても使う事を躊躇ってしまう程度の人間だ。
だが、それ故に"人を殺さない"という意思は、意地は例え相手が悪魔だとしても譲りたくはなかった。
『ふはは……その意地がいつまで続くか見物だな』
「チッ、とりあえず後でプリンを大量に買わないと、か……」
これから来るであろう災難に憂は深いため息をついた。
さすが紅ヒロイン、血が似合いますね。
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@iu_331




