俺の知らない森へ
「んん……」
目覚めて最初に目に入るのは、知らない天井。
ああ……そういえば俺、異世界転移したんだったな……
ふと、元の世界のことが気になった。
両親は心配してるだろうか?
大学は大丈夫だろうか?
帰れるなら帰りたい。
心配はかけたくないし、ゲームにハマってたせいで単位もギリギリだった。
でも帰り方なんて分からないし、目の前では俺の森が数百年も荒らされ続けている。
……放ってはおけない。
俺は今この大森林の主、ハイドなのだ。
皆ずっと待っていてくれた。皆きっと俺に期待をしている。なら、今度は俺がその期待に応える番なのかもしれない。
それに今やこの大森林は俺の制作物というだけではない。森の生き物達も、ゲームの駒なんかじゃなく本当に生きている。
なら尚のこと、この場所が踏み荒らされるのを黙って見ている理由は無い。……俺が守らなくては。
そのためにもまずは現状把握だ。
装備を整えて、今の大森林を見て回ろう。
特に骨塚。あれは俺も知らない未知の領域だ。
身だしなみを整えて、ギルド倉庫へ向かう。
「よお、モック爺。元気してるか?」
「おお……!ハイドではないか!本当に戻ってきたんじゃな……!うむ、儂は元気じゃぞ。向こう100年は安泰じゃ!」
「ははは。なら良かった。森を改めて見て回る為に準備がしたいんだがいいか?」
「勿論じゃとも。装備、消耗品、素材、諸々この200年間手入れは怠っておらん。存分に持って行くがいい」
「ありがとう。じゃ、失礼して……」
倉庫を開く。俺からしてみれば昨日のことなのだが、ここでは200年経っているらしい。
だがそうは思えない程整えられていた。
……これも俺を待ってのことだろうか。
「ふぅ、こんなものかな」
装備、ポーション類、スキル消耗品、一通り持った筈だ。
後は……骨塚の主が亜人なら何かお土産があった方が上手くいくかもしれない。
「なぁ、モック爺。骨塚の亜人って知ってるか?何かお土産を持って行こうと思うんだけど」
「ああ、トンタ坊のことじゃな。懐かしいのぉ……儂が現役の頃はトンポ坊と一緒にトントンコンビと名乗って暴れ回っておったわい。トンタ坊への土産ならネクロマンス素材が喜ぶのではないかの。あやつはネクロマンサーじゃからな」
「ふむふむ……じゃ、この《希少な獣骨》でも持っていくか。ありがとう、モック爺」
「なんのこれしき。この老骨で役立てることがあれば、遠慮なく言ってくだされ」
「さて、準備も整ったし、行ってくるよ」
「うむ、気をつけて行くんじゃぞー」
モック爺に見送られギルド倉庫を離れる。
ギルド玄関ではアイリスとメイドエルフ達が見送りに来ていた。
「ハイド様、いってらしゃっいませ」
「いってらしゃっいませ!ハイド様!」
「うん。行ってくるよ」
皆の見送りを受けてギルド館を発つ。
目指すは骨塚。俺の森なのに未知の領域。
ただ、道中もしっかりと見て回ろう。
その方が無駄が無いはずだ。
……少しだけワクワクしてきたな。
こんな冒険らしい冒険をするのは久しぶりかもしれない。
……いい収穫があるといいんだけど。




