俺と湿地帯の主
《第2層 湿地帯》
「うわぁ、本当に湿地帯だぁ……」
俺が丹精込めた世界が目の前に広がっている。
少し感慨深い。
水面に映る自分を見る。
「……本当にハイドになってる……」
どうやらこれは紛れもない事実らしい。
だが一体どうして……?
……さっぱりだ。
まずは彼女の言う通り5層を目指してみよう。
……今の俺にできることはそれぐらいだ。
さて、この湿地帯を抜けるとなるとそれは相当骨が折れることになるだろう。
俺は製作者だからな。よーく知ってる。
まず第1に、足場の悪さ。ゲーム的には移動速度低下のデバフを当ててたっけか。
実際歩いてみると、泥に足を取られ、体力がみるみる奪われていくのを感じる。
第2にデバフエネミーの数々。ヒルによる軽度の失血、毒虫による毒デバフ、その上の足場の悪さ。
足にはヒルが沢山ついてたし、毒虫達は俺の周囲をブンブン飛び回ってる。羽音が鬱陶しい。
だが幸い、今の所敵対されている様子はない。
製作者補正だろうか?
第3にこれらを抱えた上での通常エネミー。
本調子出ないところに容赦なく襲いかかる。
移動速度も遅いので遭遇頻度も必然的に増える。
これは不快度指数高い。当時の不評も納得だ。
……これも今の所敵対はされてない。
戦える自信は無いので非常に助かる。
程なく進んだ所でいい感じの陸地で休息を取る。
「はぁ……はぁ……クソ、誰だよこんなクソマップ作ったのは……」
まあ俺なんですけどね。
だが自然とはこういう物だ。
不快度指数が高いからとここを曲げては俺の信念に反する。これは必要な不快感だ。
……第2層も半分は過ぎた。3層まで行けば快適に進めるはずだ。
だがここからは水深も深くなる。
……奴に気をつけなければ。
腰ほどまで水に浸かりながら前に進む。
運動不足だったとは思ってないが流石にこれはキツイ。
そうこうしていると、目の前からバシャバシャと何かが近付いてくる。……奴だ。
「出やがったな、この野郎!お前は相変わらず手当たり次第だな!」
奴の攻撃を何とか躱す。奴……ヌシは近付くもの、動くもの、食べられそうなものを手当たり次第に飲み込もうとする。俺も例外ではないらしい。
「念のため木の棒で武装しといて良かったぜ。これでも喰ってろ!」
大口を開けて飛び込んでくるヌシの口に木の棒を突っ込む。流石にたまったものではないのか、何度かえづいて吐き出す。そして食べられるものではないと判断したのか去っていった。
「……ふう。行ったか」
油断も隙もない。だが俺の理想の大自然とはこういう物だ。その一端を肌で感じ、ちょっと嬉しい。
「ふふふ……さて、また戻って来るかもしれない。急いでここを離れよう」
そうして俺は無事に湿地帯を抜けることに成功した。
ここからはしばらく平坦な陸地が続く。
ここまで苦労することはないだろう。




