俺の守りたい森
《第4層 原生林》
さて、狂える亜人……トンポを探さないとな。
予定通りなら話を通してくれてるはずだ。
そうしてトンポを探し、4層をしばらく歩いた。
すると1匹の森神の眷属に出会った。その眷属は案内でもするかのように俺達の前を歩き、時折立ち止まり様子を見るかのように振り返った。俺達は黙ってその後に続いた。
それからしばらく歩き、開けた場所でトンポと出会った。
「……案内、ご苦労」
トンポのその言葉を聞いたのか案内をしていたような眷属は森へと去っていった。
「よお、トンポ。約束、果たしに来たぞ」
「……その名は追放と共に捨てた」
「なんだ、お前もか。亜人は独り立ちすると名前を捨てる文化でもあるのか?」
「知らぬ」
「そうか。そうそう、お前の友達に会ってきたぞ。骨塚の王。トントンコンビのトンタだよ。アイツお前に追いつこうと頑張ってたぞ」
「……我に友などおらぬ」
「そうなのか?アイツの言では結構仲良さそうだったけど……まさか嘘か?」
「……虚言と言う程では無い。ただ……全ては遠い過去と言うだけだ」
「……そうか。そうそう、森神には話を通してくれたか?」
「……ついて来い」
そう言うとトンポ……でいいのか?は背を向け歩き出した。俺達も後に続いた。
しばらくして薄暗い原生林では珍しい日の差す場所に出た。
そこには1匹の大きく緑を身に纏った鹿がいた。森神だ。
「我が師よ。客人です」
「おお……ネルグか。ご苦労。して、久方ぶりじゃの、ハイド」
「俺にとってはそうでもないんだけど、そうらしいな。お前の感覚ではどれくらいだ?」
「さてな。そこのギルドNPCと違ってワシはお主の居らぬ時間を数えたことは無いのでな」
「冷たいなぁ。俺は創造主なんだからもうちょい、こう……さぁ?」
「ほっほっほ。確かにお主は創造主かもしれぬ。じゃがこの大森林を見てきたのなら大方察せるのではないかの?お主がしたことは最初の種を蒔いたに過ぎぬと」
「それは、そうだな」
俺が護らなければと思っていた。
必要とされているのだと。
だから呼ばれたのだと。
だが案外そうでもなかった。
俺がいなければ何も出来ない訳じゃなかった。
皆、俺の知らない200年を自分達で生きてきた。
であれば何故……?それも200年も経った今になって……?
「さて、ネルグに言伝までしてワシと相対したのは世間話のためでは無かろう?申してみい」
「……ああ、そうだな。と、その前に。ガルド、この手入れキットで俺と森神が話してる間にネルグ?の武器を手入れしてやってくれ」
「承知しました」
そうしてガルドはネルグと向き合い、武器の手入れを始める。後は向こうでやってくれるだろう。
「さて、本題に入ろうか。最近の様子はどうだ?人間が出入りするようになってからの原生林の様子とか」
「変わらぬよ。多くが挑みその全てが死んだ。虫共は新鮮な肉が手に入って生き生きしとるしの。強いて言えば、連中の装備の処理に困っておる位かの」
「それは俺が引き取ろう。集めたら知らせてくれ。突破した者は?」
「おらぬの。5層到達者はお主が連れ込んだあの坊主が初めてではないかの。他は大勢であれ、少数であれ、皆ここで死んでいったわ」
「ふんふん。生態系の乱れとかは?」
「無いの。ワシらで調節出来とるわい」
「そうだ、トンポ……いやネルグって言うのか?の様子はどうだ?」
「あやつか?あやつも変わらずじゃよ。強靱な肉体を持っておる割に心根は……」
「……我が師よ」
「ほっほっほ。少々喋り過ぎたかの」
「……粗方予想はついてたけど心配するようなことは無かったな」
「終わりました、ハイド様」
その言葉を聞いて斧を受け取ったネルグは、おもむろに近くの倒木へ斧を振り下ろし、鋭さを確認する。
……どうやら満足したようだ。
「おお、丁度いいな。話、ありがとうな」
「ほっほ。また来るがよいぞ。ほれ、ネルグや。送ってやりなさい」
「……ついて来い」
そうしてネルグの案内のもと、4層を去った。
《第5層 ギルド館》
「おかえりなさいませ、ハイド様」
「ああ、ただいま、アイリス。ガルドもお疲れ様。」
「いえ。お役に立てたならなによりです」
「これから如何なさいますか?」
「今日見てきたもののまとめをしたい。手伝ってくれるか?」
「勿論です。では私室へ案内致します」
《第5層 ギルド館、私室》
「して、実際に見てきた大森林は如何でしたか?」
「率直な感想としては俺の知ってる大森林だけど俺の知らない大森林だった、かな。森神の言葉を借りると俺のしたことはまさしく種を蒔いただけだった。そこからの成長は完全に俺の手を離れていた。製作者としてはこれ程嬉しいことは無いよ。ただ、その過程をじっくり見守れなかったのは残念かな」
「成る程。ハイド様はまた新たな知見を得られたのですね。今後の課題点は見つかりましたか?」
「ああ。おおよそは。まずは何と言っても第1層だ。ここは早急に何か手を打たないとなんだけど……どうしたものかな。森のやり方を人間達に守って貰えればいいんだけど……」
「でしたら人間達の権力者と話し合うのは如何でしょう。人間達は大方攻略都市アルヴェインから来ています。そこを治めている人間と話をつけられれば……或いは」
「ふむ……しかしそう簡単に権力者と話が出来るものか?信頼出来る伝手も無いし……」
「まずは伝探しから始めるのがいいかもしれませんね。あの冒険者は如何ですか?」
「アランか?信頼は出来るがどこにいるか聞いてなかったからな……まあ、何はともあれまずは行ってみるか!」
「でしたらフィリアを連れて行くといいかと。彼女はアルヴェインへ出入りしていたこともありますから」
「おお……!流石は案内人。さて、じゃあ準備を……」
「の、前にお休みください。大森林を縦断してお疲れでしょう?御身あっての大森林ですから」
「はは……そんなに神経質になることもないのに……まあ、でも疲れてはいるしな。お言葉に甘えようか」
「はい。では何かあればお呼びくださいませ」
「ああ。おやすみ、アイリス」
アイリスが出ていったのを確認してからベッドへ潜り込む。
今日は収穫が沢山あった。
骨塚の正体、各層の様子。
久しぶりに冒険らしい冒険が出来た気がする。
問題は山積みだ。
それでもやっぱり俺はこの森が好きだ。
だから。俺はこの森の守護者で居たいんだ。




