表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっと普通だった幼馴染と、今日から恋人ごっこを始めます  作者: Atelier Lotus文庫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/121

第81話 癖

 放課後。


 本子は、委員会で一緒になった男子生徒を呼び出していた。


「この前の返事なんだけど」


「うん」


 男子生徒の表情が緊張する。


 本子は少し迷った後、頭を下げた。


「ごめんなさい」


「付き合えません」


 男子生徒はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。


「そっか」


「うん。本当にごめん」


「いや。ちゃんと考えてくれてありがとう」


 男子生徒は少し残念そうに笑い、その場を離れていった。


 本子は遠ざかる背中を見送る。


 嫌な人ではなかった。


 むしろ、優しくて誠実な人だったと思う。


 それでも。


 その人と一緒に帰ったり。


 休日に出かけたり。


 隣を歩いたりする姿を想像しようとすると。


 なぜか、縁之丞の顔が浮かんだ。


「……何で」


 今は顔も合わせづらい相手なのに。



 帰り道。


 本子は一人でコンビニへ寄った。


 飲み物が並ぶ棚の前に立ち、自分の好きなものを一本取る。


 そして、その隣にある飲み物へ手を伸ばした。


 縁之丞がよく飲んでいるものだった。


 二本を持ったところで、本子は動きを止める。


「……いらないじゃん」


 今日は一人だった。


 縁之丞の分を買う必要なんてない。


 本子は飲み物を棚へ戻す。


 ただ一本戻しただけ。


 それだけなのに。


 少しだけ、寂しくなった。



 夜。


 本子はベッドに寝転がりながら、スマートフォンを眺めていた。


 画面に、犬が転んで慌てる動画が流れてくる。


 思わず笑った。


「縁之丞、こういうの好きそう」


 共有ボタンを押す。


 送り先の一番上に、縁之丞の名前が表示された。


 指が止まる。


 以前なら、何も考えずに送っていた。


 返事が来なくても。


 既読だけでも。


 別に気にしなかった。


 けれど今は、送っていいのか分からない。


 本子は共有画面を閉じた。


「……何してるんだろ」


 スマートフォンを伏せる。


 送らなかった動画のことが、しばらく頭から離れなかった。



 翌朝。


 本子は一人で家を出た。


 いつもの道を歩く。


 何も考えずに足を進めていると、見慣れた角が近づいてきた。


 曲がった先には、いつもの待ち合わせ場所がある。


 本子は足を止めた。


 縁之丞がいるかもしれない。


 そう思った瞬間。


 会いたいと思った。


 けれど。


 昨日までのことを思い出す。


 会っても、何を話せばいいのか分からない。


 本子は角を曲がらず、別の道へ向かった。


 縁之丞の飲み物を選ぶこと。


 面白いものを見つけたら送ること。


 朝、一緒に学校へ行くこと。


 どれも特別なことではないと思っていた。


「……癖になってたんだ」


 そう呟いてみる。


 けれど。


 本当は、ただの癖ではなかった。


 それはずっと、本子の日常そのものだった。


 直そうと思っても。


 何度も縁之丞を探してしまう。


 それが少しだけ悔しくて。


 同じくらい。


 寂しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ